哲学/思想

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真木悠介の『時間の比較社会学』

<序章、時間意識と社会構造> 第一節、時間のニヒリズム 一般に私たちは死に対する恐怖、永遠の時間に対する短き生に虚無を感じています。 死あるがゆえの生の虚しさは、決して避けることの出来ない真理であると思われてい...
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三木清の『パスカルにおける人間の研究』(3)賭け

(2)のつづき <第二章、賭け> 第一節 人間は関心によって絶えず運動する存在であり、それは常に途上にある求め続ける存在です。 途上である限り、必然的に「何処から来て何処へ行くのか」と反省的に訊ね...
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仏教哲学とは何か(4)今を生きる

(3)のつづき 今とは何か 仏教では「今を生きる」ということをしきりに説きます。 今この瞬間、この時こそが実在であり、未来や過去は想像によって生み出された煩いの種でしかないと。 しかし、「瞬間」とは一体なんで...
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三木清の『パスカルにおける人間の研究』(2)人間の分析・下

(1)のつづき 尉戯による世界への堕落は、同時に生が想像世界へと堕落することを意味します。 尉戯の先には常に想像によって作られた的があり、それに対し情熱を燃やし欲望を向けます。 「われわれは、自分のなか、自分自身の...
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三木清の『パスカルにおける人間の研究』(1)人間の分析・上

※これはパスカルについて書かれた本というより、パスカルを介したハイデガー入門(ハイデガー哲学で解釈したパスカル)です。 <第一章、人間の分析> 第一節 パスカルの思想の主題となるものは人間です。 人間と言...
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仏教哲学とは何か(3)諦観と安心

(2)のつづき 「ありがとう」と「おかげさま」 前項までで、一応、原理的なことは説明し終えましたが、抽象的で少し分かりにくかったと思います。 ここからは日常経験やマンガや流行歌などによって、それらをもっと具体的...
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仏教哲学とは何か(2)存在という幻想

(1)のつづき 存在の恣意性 世界という全体から「あるもの」を切り出してくることが、その存在を生成させると、前項で述べましたが、この切り出し方というものは、かなり恣意的(自分勝手)なものです。 例えば、私た...
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仏教哲学とは何か(1)存在の本質

はじめに 本頁は仏教を理屈でかつ分かりやすく解説することが目的です。 専門用語は可能な限り使わず、具体例に即したものにします。 仏教哲学とは仏教の哲学的な解釈です。 対象となる仏教および解釈する哲学によってその内容は変わ...
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プラトンの『ゴルギアス』(5)終幕

(4)のつづき 終幕(507d~527e) ソクラテス 私の述べたいことは以上になる。 賢者たちの言うところでは、天も地も、神も人も、すべてを結びつけるものは秩序や節度なのだ。 なぜ彼らが宇宙をコスモス(調...
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プラトンの『ゴルギアス』(4)カリクレス編・下

(3)のつづき ソクラテス 君は欲望の無制限の解放が人間の徳であり幸福であると言う。 しかし、過去の賢者たちは、満たされて欲望を持つ必要のない充足した状態を幸福だと言う。 これは間違いかね。 カリクレス ...
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プラトンの『ゴルギアス』(3)カリクレス編・上

(2)のつづき <第三幕、対カリクレス戦(481c~507c)> カリクレス ちょっと待ってくれ、ソクラテス。 あなたはそれを本気で言っているのか?それとも何かの冗談か? われわれ人間の現実の生き方は、あな...
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プラトンの『ゴルギアス』(2)ポロス編

(1)のつづき ポロス どちらにしろ、独裁者のような力を持つ彼らを羨ましいとは思わないのですか? ソクラテス 惨めな人達に対しては、羨みではなく、憐れみが必要なのだ。 ポロス 憐れなのは、不正に死刑に...
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プラトンの『ゴルギアス』(1)ゴルギアス編

哲学者とソフィスト 「哲学者(フィロソファー)」は英語で「philo(愛)+sophy(知)+er(人)」、「ソフィスト」は「sophi(知)+ist(人)」です。 「哲学者」とは知を愛する者、「ソフィスト」は知の専門家(知識人)や...
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ニーチェの積極的ニヒリズム

積極的ニヒリズムと消極的ニヒリズム 若い頃のニーチェが心酔したショーペンハウアーの哲学(消極的ニヒリズム)を乗り越えるために持ち出された概念が「積極的ニヒリズム」です。 対決しようとする「消極的ニヒリズム」の病因はプラトンに始まるヨーロ...
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ライプニッツのモナド(かんたん版)

モナドとは何か 物質的な原子というものは、それ以上分割不可能な存在、世界の究極的な構成要素と考えられていました。 しかし、物質が分割不可能なのは、現時点での技術的な限界か定義によるものです。 いかに小さくとも何らかの空間的広がりを持つ...
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ライプニッツのモナド(4)神と善

(3)のつづき 神の本質 では、これらすべてを含む神は、どういうものであるかというと、それは、現実的にあらゆる可能性を含んだ存在であり、かつそこからあらゆる可能な述語(観念)を導出することの出来る存在です...
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ライプニッツのモナド(3)モナドと予定調和

(2)のつづき 実体の唯一性 ライプニッツは実体を「非物質的な原子」のようなものとして捉えます。 さらに物理的な原子は相互に均一で限られた数しか存在しないのに対し、ライプニッツのそれは世界中に同じものが...
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ライプニッツのモナド(2)理由律と真理

(1)のつづき 矛盾律(モナドロジー31節) ライプニッツは人間の思考の二つの原理として、「矛盾律(矛盾の原理)」と「充足理由律(理由の原理)」を挙げます。 例えば、命題「この餅は白い」とその否定命...
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ライプニッツのモナド(1)統覚と微小表象

モナド モナドの定義とは、“部分を持たない単純な実体”です。 ギリシャ語のモナス(一なるもの)を語源とし、モナドロジーは『単子論』とも訳出されています。 単子というと、物理学の原子と似たようなイメージで捉えられてし...
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和辻哲郎の『風土』(かんたん版)

存在は時間から生まれる 私たちの目の前にあるものは、どのようにして存在するのでしょうか。 私の目の前の「美しい花」は、通勤で慌しく通り過ぎていく人にとっては「道路の背景」であり、田舎の子供にとっては「美味しい蜜が出る...
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和辻哲郎の『風土』(2)人間の理論

(1)のつづき <第一章、風土の基礎理論~第二節、人間存在の風土的規定> 人間存在の二重性 風土という現象において人間は己を見出すわけですが、今度はその人間に焦点を当て、考察します。 ...
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和辻哲郎の『風土』(1)風土の理論

<第一章、風土の基礎理論~第一節、風土の現象> 風土の概念 ここでいう「風土」というのは、その土地の気候、気象、地質、地形、景観などの総称であり、人間を取り巻く環境や自然全般を指します。 普通に「自然」...
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ユクスキュルの『生物から見た世界』(完全版)

序章、環境と環世界 本書では、生物を単なる客体や反射に基づく機械として扱わず、環境の中にある固有の主体として扱います。 「生物から見た世界」の記述による、新しい生物学です。 それはコペルニクス的転回であったカントの主体の理論を、自然科...
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カミュの『異邦人』(2)不条理の美

(1)のつづき 実存主義の美 今度は、「異邦人」に通底する美の問題について考えてみます。 世人から異邦人に転回したときに見えてくる、世界の美のあり様です。 分かりやすくするために、まず、条理を生きる世人と、不条理を生きる異邦...
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カミュの『異邦人』(1)条理への反抗

あらすじ 主人公ムルソーは母の葬儀のために養老院を訪れます。 その態度は淡々としており、涙を見せることもありません。 葬儀の翌日、知人の女性と喜劇映画を観に行き、関係を持ちます。 そうして何事もなかったかのように日常に戻りますが、友...
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カミュの『不条理の論証』(4)不条理な自由

(3)のつづき <第四章、不条理な自由> 反抗という不断の革命 私はこの唯一明証的だと思われる不条理を保持し、生きていかねばなりません。 不条理の断絶を維持していくためには、絶えざる緊張感...
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カミュの『不条理の論証』(3)哲学上の自殺

(2)のつづき <第三章、哲学上の自殺> 不条理の本質 ここまでは不条理をその外側から分析してきましたが、今度は直接的な分析によってこの観念の意味内実を探ります。 「不条理性」というのは単独の経験...
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カミュの『不条理の論証』(2)不条理な壁

(1)のつづき <第二章、不条理な壁> 不条理の感情 深い感情というものは、その人の思考や行為や些細な習慣の中にまで現れ、その人の中にひとつの世界観(小宇宙)というものを作り出します。 嫉妬の宇宙...
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カミュの『不条理の論証』(1)不条理と自殺

<第一章、不条理と自殺> 自殺の考察 哲学上の重大問題は自殺のみです。 人が生きるべきか死ぬべきかの根本問題に尽きます。 また、同時に哲学者は自分の身をもって自身の哲学を体現しなければ嘘になります。 ...
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パスカルの『パンセ』

人間は考える葦である 本書の趣旨は、あの有名な「人間は考える葦である」という言葉に集約されています。 この言葉の後には以下のような意味のことが述べられます。 人間は吹けば飛ぶような一本の葦のように弱い存在であり、宇宙に比すれば無に等し...
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フーコーの『知への意志(性の歴史)』

抑圧の仮説 近代西欧における性の問題を語る際に通説となっているものが、「性の抑圧仮説」です。 17世紀以降、性というものの抑圧がはじまり、性的なことを口に出すこともはばかれるような時代が生じたとされます(典型がヴィクトリア朝...
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フーコーの『言葉と物』(3)近代のエピステーメー

(2)のつづき 近代のエピステーメー 言葉と物が混在していた中世「類似」のエピステーメー、言葉と物が分離した古典主義時代「表象」のエピステーメーにつづき、分離した言葉と物の間に入り込んできた近代「人間」のエピステ...
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フーコーの『言葉と物』(2)古典主義時代のエピステーメー

(1)のつづき 古典主義時代のエピステーメー 古典主義時代のエピステーメーは、同一性と相違性をベースとした比較によって、事物の秩序を形成することです。 類似のエピステーメーは事物が他の事物と連結する入れ子状の立...
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フーコーの『言葉と物』(1)中世のエピステーメー

エピステーメー(思考の枠組み) 世界の思想史を概観すると、ある場所、ある時代内において共通する思考の枠組みというものがあります。 私は自由に思考し行動する主体的人間だと思い込んでいますが、実際は私の考えは事前にその場所その時...
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バークリーの『人知原理論』序論

※訳語は主に『人知原理論』宮武昭訳 ちくま学芸文庫 によります。 序論(1~25節) 1、人は哲学的に深く思惟すればするほど、困難と矛盾に引きこまれ、懐疑主義におちいる。 2、有限な人間精神で無限な世界を理解しよう...