樽の中のネコデゲス

科学/自然

ユクスキュルの『生物から見た世界』(かんたん版)

生物によって違う感覚機能生物はそれぞれ独自の感覚機能を持っています。人間であればいわゆる五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)と呼ばれるものです。当然、生物によってはその機能の数や種類や質が違い、人間と違って視覚や聴覚の無い生物もいれば、逆に...
社会/政治

リースマンの『孤独な群集』三つの社会的性格

性格と社会社会的性格(キャラクターの意)とは、「イタリア人は陽気、日本人は真面目、アメリカ人は実利的」などと言われるような、その社会の成員が一般的にもつ性格特性を表したものです。社会的性格は、その社会が必要とする特性を獲得するように形成され...
芸術/メディア

柄谷行人の『日本近代文学の起源』構成力について

(2)のつづき構成力について(没理想論争)一、日本の近代以前の文学には、何か深みというものが無いように思えます。しかし、別に江戸時代の人々が深いことを考えていなかったという訳ではありません。これは文学に限らず、絵画にも同様の問題が含まれてお...
芸術/メディア

柄谷行人の『日本近代文学の起源』告白という制度

(1)のつづき告白という制度一、告白という形式と日本の近代文学の成立は並行します。告白は告白されるべき「内面」を生じさせます。告白という形式の文学作品(表現されたもの)と、告白する作家の内面(表現されるべきもの)の分化生成です。表現されるべ...
芸術/メディア

柄谷行人の『日本近代文学の起源』風景の発見

風景の発見一、「文学」という観念は相対的なものであるのですが、その中にいる限りなかなかそれに気付くことができません。漱石の学んだ英文学の普遍性への疑いは、それが決して経験に先立つアプリオリなものではなく、その起源(歴史性)を覆い隠すことによ...
哲学/思想

ニーチェの積極的ニヒリズム

積極的ニヒリズムと消極的ニヒリズム若い頃のニーチェが心酔したショーペンハウアーの哲学(消極的ニヒリズム)を乗り越えるために持ち出された概念が「積極的ニヒリズム」です。対決しようとする「消極的ニヒリズム」の病因はプラトンに始まるヨーロッパ形而...
哲学/思想

ライプニッツのモナド(かんたん版)

モナドとは何か物質的な原子というものは、それ以上分割不可能な存在、世界の究極的な構成要素と考えられていました。しかし、物質が分割不可能なのは、現時点での技術的な限界か定義によるものです。いかに小さくとも何らかの空間的広がりを持つ以上、原理的...
哲学/思想

ライプニッツのモナド(4)神と善

(3)のつづき神の本質では、これらすべてを含む神は、どういうものであるかというと、それは、現実的にあらゆる可能性を含んだ存在であり、かつそこからあらゆる可能な述語(観念)を導出することの出来る存在です。分かりやすく言うと、物理的世界全体であ...
人生/一般

問題意識とは何か

問題意識社会に出て働き出すと、職場の先輩や上司は例外なく「問題意識を持て」などと言います。世界平和や飢えた子供を救うというような大きな問題解決を仕事にする人ならまだしも、私達のような普通の仕事、毎日定食を作ったり、荷物を運んだり、電話に出た...
哲学/思想

ライプニッツのモナド(3)モナドと予定調和

(2)のつづき実体の唯一性ライプニッツは実体を「非物質的な原子」のようなものとして捉えます。さらに物理的な原子は相互に均一で限られた数しか存在しないのに対し、ライプニッツのそれは世界中に同じものがひとつとない完全に多様な世界を構成するもので...
哲学/思想

ライプニッツのモナド(2)理由律と真理

(1)のつづき矛盾律(モナドロジー31節)ライプニッツは人間の思考の二つの原理として、「矛盾律(矛盾の原理)」と「充足理由律(理由の原理)」を挙げます。例えば、命題「この餅は白い」とその否定命題「この餅は白くない」は、(常識的に)同時に成り...
哲学/思想

ライプニッツのモナド(1)統覚と微小表象

モナドモナドの定義とは、“部分を持たない単純な実体”です。ギリシャ語のモナス(一なるもの)を語源とし、モナドロジーは『単子論』とも訳出されています。単子というと、物理学の原子と似たようなイメージで捉えられてしまいそうですが、まったく反対のも...
芸術/メディア

創造(想像)とは何か

注、本頁は以前書いた「オリジナルとは何か」を発展させたもので、やや内容が重複しています。現実の本質SF映画によくあるように、私の全ての記憶を消去されたとします。そして、私は部屋で目覚めます。その時、最初に私の眼に映ったものは、「こたつの上で...
芸術/メディア

芸術家(職業)とは何か

食えない芸術家「芸術家は食えない」とよく言われます。プロ(その道一本で食っていける)の芸術家と呼ばれる人も、大半が教えること(教育者)としての収入であり、純粋に自分の作品によるものではありません。そういう意味では芸術大学の偉い教授より、繁華...
芸術/メディア

何のためのデッサンか

はじめにここで言うデッサンとは、パースの正確なホンモノのような絵のことです。石膏像で訓練するようないわゆる受験絵のデッサンであり、それを通して絵画における表現と技術の基本的な問題を考察します。表現と技術絵を描くということは、頭の中にあるイメ...
心理/精神

アドラーの個人心理学

伝統的な目的論「人間は行動の選択において、常にその人にとって最良の選択をしている。もし、それがその人にとって悪い結果を導くなら、それは無知によるものである」これはプラトンにはじまるひとつの人間観であり、形を変えながら、様々な思想家の基礎とな...
芸術/メディア

小野洋子の『グレープフルーツ』

概要本書は1964年東京で最初に出版され、後に1970年ロンドン、1971年ニューヨーク、そして逆輸入的に日本語完訳版(田川律訳)が1982年東京新書館より出版されました。作品自体は1955年から描き集められたものであり、日本で作られた作品...
科学/自然

クーンの『科学革命の構造』(4)革命の完成

(3)のつづき第十一章、革命の不可視化科学において非常に重要になるのが、教科書という権威ですが、この教科書というものは、革命や危機の混迷を可能な限り目立たないように編集します。まるで科学が合理的で直線的な歴史の中で、現在まで進歩し続け、いま...
科学/自然

クーンの『科学革命の構造』(3)科学革命

(2)のつづき第八章、危機への反応科学者は変則性に出会いながらも、既成のパラダイムを放棄しようとはせず、危機を導く反証例を反証と認めたがりません。一度パラダイムとなった科学理論は、それに変わるパラダイムによって取って代わられるまでは無傷であ...
経済/ビジネス

マルクスの『資本論』(かんたん版)

例、あるタコ焼き屋にて私は高校卒業後、たこ焼き屋さんの従業員として働き始めました。一人で切り盛りできる程度の店で、けっこう自由に楽しく働いています。平均一日10万円程度の売上げで、材料費や設備、広告費など全て差し引いて5万円ほど残ります。そ...
科学/自然

クーンの『科学革命の構造』(2)危機の科学

(1)のつづき第五章、パラダイムの優位ある時期における概念や装置や方法などを理論的にとらえる際、そこに何らかの標準的な説明の仕方が共通して見られます。それがその専門家集団のパラダイムであり、それは教科書や講義や指導などを通して現れ、学生はそ...
社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(かんたん版)

<まとめ>二、世襲による君主政体の維持は容易である。伝来の秩序に従い普通に対応する能力があれば問題ない。三、新興の君主政体は軍事力によって新しい臣民を獲得するため不安定で、臣民の心を掴めなければ反乱によって失う。しかし、反乱の鎮圧に成功し、...
科学/自然

クーンの『科学革命の構造』(1)通常科学

第二章、通常科学への道通常科学とは、ある過去の科学的業績を基礎にして進めていく研究を指し、それは次の科学革命が起こるまで一定期間続きます。その基礎的な業績となる条件としては、第一に、その業績が他の対立する研究の支持者を転向させるほどの斬新さ...
社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(4)その他

(3)のつづき第二十章、その他、君主が行うべきこと新しく君主になったものは、臣民の武装を解除してはいけない。臣民を武装させれば、必然的に臣民は君主の党派となる。もし、すべての臣民を武装できなかったとしても、武装した者に厚い恩恵を与えることに...
社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(3)人格論

(2)のつづき第十五章、君主への賞賛および非難について臣民や味方に対する君主の態度や統治のあり方はどうあるべきか。いかに人が生きているかという現実を考慮せずに、いかに人はあるべきかという理想ばかりを追求する既存の君主観(君主=有徳説)は、む...
社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(2)政体論・下

(1)のつづき第八章、極悪非道な手段によって獲得された君主政体極悪非道、残虐な手段によって君主になった者の生き方を考察してみると、そこに運(幸運)や他力依存の要素がほとんどない。無数の困難と危機を自力で乗り越え、ひとつひとつを獲得していき、...
社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(1)政体論・上

第一章、君主政体の種類と獲得方法あらゆる政体は共和政か君主政かどちらかである。君主政体は、血統による世襲の政体か、新興の政体である。領土を獲得する方法は、自己の軍備によるか他者の軍備によるか。また、その獲得は、幸運のためか実力のためか(第六...
人生/一般

偽善とは何か

偽善という言葉の難しさ最近、「偽善」という言葉がやたらと使われます。しかし、多くの場合、意味がない、あるいは適切でない文脈で使われているため、それはまったく生産的でない空虚な言葉になってしまっています。そこで「偽善」という言葉の意味を少し考...
心理/精神

アリストテレスのカタルシス

カタルシスの一般的な意味「カタルシス」は主に「浄化」などと訳される言葉であり、元々は医学的な意味での不純物の排出、宗教的な意味での穢れの浄化、そしてプラトンにおける哲学的な意味での魂の浄化として使われていました。しかし、アリストテレスがその...
宗教/倫理

藤原基央の『カルマ』

運命の車輪まずこの絵をよく見ていただきたいのですが、回転する車輪に人間がしがみつき、一番下には骸骨、その上に浮浪者、その上に一般人、その上に貴族が描かれています。回転軸に紐が結ばれ、回転するようになっており、誰かが上がれば誰かが落ちる仕組み...
芸術/メディア

藤原基央の『天体観測』

BUMP OF CHICKEN 『天体観測』作詞・藤原基央解説(仮説)1.「午前二時 フミキリに 望遠鏡を担いでった」踏み切りで向かい合う男女、それを遮る列車の流れ、みたいなシーンはよくありますが、午前二時に踏み切りで待ち合わせする彼等は、...
哲学/思想

和辻哲郎の『風土』(かんたん版)

存在は時間から生まれる私たちの目の前にあるものは、どのようにして存在するのでしょうか。私の目の前の「美しい花」は、通勤で慌しく通り過ぎていく人にとっては「道路の背景」であり、田舎の子供にとっては「美味しい蜜が出る駄菓子」であり、行商人にとっ...
芸術/メディア

詩とは何か

はじめにここで言う「詩」とは、「詩的なもの」という広い意味で使っています。詩(詩的なもの)の良さがイマイチ分からない人に対して、ざっくりそれがどういうものなのかを簡単に説明することが目的です。詩的なものとは詩的なものをゆるく定義づけるとした...
芸術/メディア

アリストテレスの『詩学』(3)~最終章迄

(2)のつづき第十六章、認知の種類1.印による認知。生まれつきのあざや傷や刻印、首飾り等の外的標識。技法としては稚拙だが、逆転を伴うような場合(例、変装したオデュッセウスの足を洗う侍女がかつての乳母であり、傷痕により正体がばれる)などはすぐ...
芸術/メディア

アリストテレスの『詩学』(2)~第十五章迄

(1)のつづき第九章、詩(創作)と歴史の違い、その普遍性、驚きの要素詩人(創作家)は、歴史家のように既に起こった出来事を語るのではなく、起こるであろうような出来事、もっともらしく必然的な仕方で起こる可能性のある出来事を語る。詩(創作)は普遍...