樽の中のネコデゲス

哲学/思想

ベルクソンの『時間と自由』第一章

第一章、心理的諸状態の強度について はじめに(まとめ) 非常に分かりにくい章なので、長いですが最初にまとめておきます。 心の諸々の状態の「強さ」には、直接体感している「質的強さ」と、間接的に計量された「量的強さ」があり、私たちは多...
日記

雑記「何で樽の中の猫か」

管理人のネーム「樽の中のネコデゲス」は、樽の中に住んだ浮浪哲学者の「樽のディオゲネス」と「野良猫」をかけた名前です。 アカデミズムとは正反対の浮浪者と野良猫のようなゆる~いポジションから、アカデミズムの代名詞ともいえる古典名著について情報...
人生/一般

コミュ力・コミュ障とは何か

偽物のコミュ力(偽装されたコミュ障) 日本における特殊なコミュ二ケーションを語る前に、一般的なコミュニケーション能力にまつわる一つの問題を考えておく必要があります。 多くの場合、ジャイアン的な人(いわゆるDQN)はコミュニケーション...
人生/一般

コスパ・タイパとはなにか

社会の変化と共に変わりゆく人格 人間は社会的存在です。 良く言えば、個々の成員は、社会という巨大な船のいち乗組員として活躍します。 悪く言えば、社会という巨大な機械のいち歯車です。 ですから、その社会がいかなる政治・経済・宗教的体制...
哲学/思想

フロムの『正気の社会』(かんたん版)

精神の健康とは 当時、精神の健康(メンタルヘルス)についての定義は、概ね二つの極に分かれていました。 ひとつは、社会適応を基準に考えるものであり、社会に上手く適応している社会適合者は精神的に健康で、不適応状態にある人は不健康で精神的病を...
人生/一般

定義とは何か

定義とは 定義とは、明確に定められた(限定された)ある言葉(概念)の意味・内容のことです。 例えば、三角形の定義(明確な意味)は、「三本の直線で囲まれた形」で、正三角形の定義は、「三本の同じ長さの直線で囲まれた形」です。 ですから、国...
哲学/思想

フロムの『正気の社会』(通常版)

※長文が苦手な方は『正気の社会』(かんたん版)をご覧ください。 はじめに 本書は名著『自由からの逃走』の続編であり、エーリック・フロム第二の主著です。 マルクスの疎外論を基に現代資本主義の病理を暴き出す内容であるため、時代に合わず、日...
人生/一般

信念とは何か

信念≒真実の世界 本頁で述べる「信念」とは、その人が「信じている事柄」を指しています。 例えば、私は「地球は丸い」という信念をもっています。 世界の物事を徹底的に疑う立場を懐疑論といいますが、懐疑論的に言えば「信念」と「真実」はニアリ...
哲学/思想

フロムの『正気の社会』(4)第六章~第八章

(3)のつづき ※第六章では、一九世紀および二十世紀の学者や思想家による現代資本主義社会の診断(批判的分析)が引用中心に紹介され、第七章では、その問題に対する解答としての「偶像崇拝的権威主義(ファシズム、ナチズム、スターリニズム)」「...
人生/一般

感想とは何か

はじめに 「それってあなたの感想ですよね」という言葉が、2022年末発表の小学生の流行語ランキング1位となりました。 ちなみに、この言葉の後には「なんかそういうデータあるんですか?」が、続きます。 これは2015年の討論番組における西...
人生/一般

スランプとは何か

成功と失敗 スランプとは、今まで当たり前に成功していたことが、急に失敗しか"できなくなる"状態です。 まずはスランプのベースとなる、成功と失敗の問題について考えます。 「失敗は成功の母」と言われるように、失敗と成功は表裏一体の関係...
人生/一般

お金とは何か

はじめに 社会というものは、人と人との間に物やサービスなどの「交換」が始まる時に成立します。 そして、よりこの「交換」を便利にするものが貨幣であり、貨幣の成立は社会にとってほぼ必然といえます。 現代において世間一般に流布している基本的...
人生/一般

本物とは何か

人間の本質である「嘘」 人間の定義を裏側から述べれば、"嘘を吐くことのできる動物"と言えます。 嘘を吐くためには、主観と客観を往復したり、過去の記憶から未来を予測したり、言葉や表情など様々な次元のメッセージを駆使したり、動物とは異なるか...
人生/一般

自責とは何か

自責と自己責任 「自責」と「自己責任(自己責任とは何かを参照)」はよく似た言葉ですが、その意味するところは異なります。 「自己責任(self-responsibility)」は、自己が責任(responsibility)の主体であるとい...
哲学/思想

フロムの『正気の社会』(3)第五章後半

(2)のつづき 第五章、資本主義社会における人間(後半) 二節、資本主義の構造と人間の性格(続き) C.20世紀の社会(続き) 2、性格学的変化(続き) c.その他諸々の様相 ●匿名の権威-同調 18世紀および19世紀の権...
哲学/思想

フロムの『正気の社会』(2)第五章前半

(1)のつづき 第五章、資本主義社会における人間(前半) 一節、社会的性格 現代人の精神的健康を考察するには、先ず、社会的な条件が人間に及ぼす影響(いかなる社会様式が人の正気を助長し、また失わせるか)を研究しなければなりません。 こ...
哲学/思想

フロムの『正気の社会』(1)第一章~第四章

※時間がない方は要約した『正気の社会』(通常版)をご覧ください。 序章 本書は、『自由からの逃走』の続編です。 人は、自由(主体的責任)の不安から逃走するために、強い指導者や民族や国家に服従する全体主義を望む、ということを述べたのが、...
人生/一般

逆張りとは何か

流行する逆張り 一般に受け入れられている意見に対し、反対の意見(否定、批判、逆説など)を述べることを、通俗的に「逆張り」などと言います。 最近、日本では「逆張り」が流行しており、テレビの毒舌芸人、逆張系のユーチューバー、ディベートで逆説...
社会/政治

メイロウィッツの『場所感の喪失』第二部、印刷から電子へ

第一部のつづき 序章、新しいメディアの登場 新しいメディアは、古いメディアが構築したコミュニケーションの在り方を"変化させる"ことによって、その新しさの効果を発揮します。 印刷機の速さは、写本の遅さによって生じていた情報の独占を解放し...
哲学/思想

山本七平の『「水=通常性」の研究』

(1)のつづき 第一章、水を差す雨 「水を差す」と、「空気」は一瞬にして消失し、人々を現実に引き戻します。 時折降る雨のように、たった一言、誰かが現実の状況を語り、空気によって作り出されていた異常な幻想を霧散させると、人々は酔いが醒め...
哲学/思想

山本七平の『空気の研究/水の研究』(かんたん版)

第一章、「空気」の研究 一節、「空気」とは何か 私たち日本人は「空気を読め」などとよく言います。 一時期その頭文字を取った「KY(ケーワイ)」が流行語ともなりました。 しかし、この「空気」は「文脈を読む」という意味合いが強く、グレゴ...
哲学/思想

山本七平の『「空気」の研究』

※難しいのが苦手な方は、かんたん版をご覧ください。 第一章、「空気」 山本は、教育雑誌の記者に日本の道徳教育についての意見を問われ、概ね以下のようなことを答えます。 日本の道徳は「差別の道徳」であり、「知人(内集団)は助け非知人(外集...
人生/一般

理由とは何か

理由の探求 学問の基本的な目的のひとつが「理由(原因)」を探すことです。 理由が分かれば、何らかの悪い問題を解決したり、物事を良い方向へ操作的に動かしたりすることができます。 例えば、風邪をひきやすい人がいれば、その原因を探すことによ...
人生/一般

人間不信とは何か

人間不信は善くも悪くもない 人間は本質的には善でも悪でもなく、ニュートラルな存在です。 条件次第で悪にもなれば善にもなります。 人間が信じられる存在かどうかも同様、条件次第で変わるものです。 例えば、人を疑うこともなく、また人を騙す...
哲学/思想

論理学とは何か(3)述語論理

(2)命題論理のつづき 第五章、述語論理 一節、述語論理の語彙「個体と述語の記号」 述語論理は命題論理の拡張で、命題を主語と述語に分解し、より詳細に探究するものです。 命題論理の概念やシステムの土台の上に構築されます。 命題論...
哲学/思想

論理学とは何か(2)命題論理

(1)のつづき 第四章、命題論理 一節、命題と真理値(真偽) 先述のように、「命題」とは、真偽を問うことのできる主張をなす文のことです。 命題内容と、それに対応する現実を照合した時に、合っている(事実通りである)ものを「真」、合って...
哲学/思想

論理学とは何か(1)基礎

序章、論理学と推論 「論理学」とは、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが、真なる認識を得るために考案した体系的方法です。 後に数学的により形式化され、「記号論理学」となります。 その内、特にアリストテレス論理学に沿う古典的なものが「命...
社会/政治

クラッパーの『マス・コミュニケーションの効果』第二部

第一部のつづき 第六章、暴力的メディア内容がもたらす効果 マスコミの効果に関する人々の大きな関心として、メディアにおける犯罪と暴力の描写が視聴者(特に若年層)に影響を与える、という問題があります。 客観的な統計により、すべてのメディア...
社会/政治

クラッパーの『マス・コミュニケーションの効果』第一部

第一章、イントロダクション 本書で扱われる内容は以下のようなものであり、各章で詳細な考察が展開されます。 1.マス・コミュニケーションは通常、受け手の効果の必要かつ十分な原因として作用するものではない。そうではなくて、マス・コミュニケー...
その他

おススメの映画100選

※個人的に良いと思う名作外国映画を紹介します(順番はテキトーです)。五年前の記事の画像付き版です。暇な時にアップします。ある程度誰でも観ることのできる(いわゆる普通の)映画に絞っています。 <人間っぽいやつ> 『エンジェ...
哲学/思想

バークリの『ハイラスとフィロナスの三つの対話』(3)

(2)のつづき 第三対話 フィロナス おはよう、ハイラス。 よい考えは見付かったかい? ハイラス いえ、ただ虚しさだけがつのっただけです。 人間の意見など不確かで、今日賛成していたことを明日には非難します。 そうやって、...
人生/一般

勝ち組、負け組とは何か

勝ち組と負け組 現代の俗語としての「勝ち組」「負け組」とは、競争社会における社会的地位および経済的地位の優劣を指す言葉です。 勝ち負けは評価基準によって相対的に変化するものですが、この「勝ち組」「負け組」の評価基準は非常に単純で、結果と...
哲学/思想

バークリの『ハイラスとフィロナスの三つの対話』(2)

(1)のつづき 第二対話 ハイラス 遅くなってしまって、申し訳ありません。 昨日のことをずっと考えていて、余裕がなくなってしまいました。 フィロナス いや、それだけ熱心になってくれれば嬉しいよ。 では、早速、考えたことを教...
哲学/思想

バークリの『ハイラスとフィロナスの三つの対話』(1)

はじめに 本書は、バークリの主著である『人知原理論』を、一般の人向けに対話編の形で解説したものです。 大学の構内で、研究員のフィロナスと学生のハイラスが出会うところからはじまります。 第一対話 フィロナス おやよう、ハイラス。 ...
哲学/思想

詭弁とは何か(2)実践

(1)のつづき はじめに 意図的な論理からの逸脱が「詭弁」、非意図的な論理からの逸脱が「誤謬」です。 論理的に非常に見破り難い詭弁とは、裏を返せば、論理的に非常に誤りやすい誤謬であるということです。 本頁では、難しい詭弁(誤謬)から...