樽の中のネコデゲス

人生/一般

エピクテトスの『要録』(2)

(1)のつづき二十四、自分が高い名誉や権力や財産を持たず、目立って社会や国家のために役立つ偉人ではない普通の人間であるということを嘆いてはなりません。自分の権内において立派な者であることこそが、最も価値のあることだからです。先ず、そういう自...
人生/一般

偽善とは何か(2)実践

(1)のつづき実利的に考える前頁では本人の意志や態度を中心として、いわば観念的な問題として偽善について考察しましたが、実際的な問題として考えれば、端的に「善いことをする人は善い人、悪いことをする人は悪い人」です。実利的に言えば、心の内容は外...
人生/一般

エピクテトスの『要録』(1)

本書についてエピクテトスは、セネカ、マルクス・アウレリウスと並ぶ後期ストア派の哲人です。高官であるセネカや皇帝であるマルクスとは真逆で、奴隷として哲学を学び、解放後に哲学の学校を開くことになります。エピクテトス自身の著作は残っておらず、教え...
人生/一般

自己責任とは何か

はじめに最近、「自己責任」という言葉が流行っています。しかし、この言葉が使われる時、たいてい何か矛盾した文脈で使われており、強い違和感を覚えます。そこで、この言葉の意味とその違和感の原因について考えてみたいと思います。自由と責任「自己責任」...
人生/一般

キューブラー=ロスの『死ぬ瞬間』

概要人間は死ぬ瞬間に意識を失うので「死」を経験することができず、他人の死を通しての想像や、睡眠とのアナロジーなどによって間接的にとらえるしかありません。これは古代ギリシャの時代から言われていることです。ですから、現実的な「死」というものは、...
哲学/思想

デカルトの『情念論』(3)第二部・下

(2)のつづき91~95、六つの基本情念「喜び」と「悲しみ」「喜び」は快い情動で、精神における善の基本となるものです。精神が善から受けるもの(結果)は喜びであり、喜びのないものは善とは言えません。「悲しみ」は不快な情動、ネガティブな無活動状...
哲学/思想

デカルトの『情念論』(2)第二部・上

(1)のつづき第二部、諸情念の枚挙と順序立て、および六つの基本情念51、情念は、精神(意志)の活動、身体の状態(により生じる脳内の諸印象)、そして基本的にそれらが関わる感覚の対象(感覚される事物)によって、引き起こされます。情念を網羅するに...
哲学/思想

デカルトの『情念論』(1)第一部

概略第一部は分かりにくいので、先に簡単にまとめておきます。先ず、精神には能動的なもの(A)と受動的なもの(P)があり、それぞれの対象が非物質的か(1)と物質的か(2)により、大きく四つに分かれます。(A1、A2、P1、P2)本書の主題となる...
哲学/思想

デカルトの『方法序説』『省察』(かんたん版)

妥協なき探究者非常に優秀な学徒であったデカルトは、真理の探究のために様々な書物を読みあさります。しかし、当時の学問の知識を極めつくした先にあったのは、学者によってただそれぞれ言うことが違うだけの、混沌とした知の迷宮でした。そこでデカルトは書...
哲学/思想

デカルトの『省察』

はじめに本書の正確なタイトルは、『第一哲学についての省察、神の存在および人間の精神と身体との区別が証明される』です。神の存在証明、および人間の精神と身体は区別されるべき実体であることの論証を行います。六つの省察に分かれており、それぞれの見出...
哲学/思想

デカルトの『方法序説』

はじめに本書の正式なタイトルは、『著者の理性を正しく導き、もろもろの学問において真理を求めるための方法の序説、なおこの方法の試みなる屈折光学、気象学および幾何学』(落合太郎訳)です。要は科学論文(屈折光学、気象学、幾何学)の序文にあたるもの...
人生/一般

アランの『幸福論』(7)

(6)のつづき八十二、八十三、八十四、礼儀の力礼儀というものは、乱暴な情念を鎮めるための体操です。せっかく与えられたこの短い人生という時を、くだらない情念のせいで無駄にしないための技術です。礼儀正しさの中にある柔軟さや自然さやゆとり、調和的...
人生/一般

アランの『幸福論』(6)

(5)のつづき七十二、ロボットたちの口論普通、私たちの発する言葉には、意味があるものだと考えています。その人の心にある考えを言葉によって口にするものだ、と。しかし、大半の言葉はそうではなく、それは何の考えも持たない叫びのようなものです。私が...
人生/一般

アランの『幸福論』(5)

(4)のつづき五十五、言葉は状況を作る環境が知らず知らずのうちにその人の行動を規定するように、言葉も同じ作用を持ちます。窓のない、薄暗い電灯の、コンクリートで冷えた空間内に居ると、人の心も閉鎖的で、暗く、冷たいものになります。それと同様、弱...
人生/一般

アランの『幸福論』(4)

(3)のつづき四十二、四十四、本当の幸福人間は苦しみを嫌うものだと思われ、そして、苦しみこそが不幸だと思われています。しかし、そうではありません。例えば、重い荷を背負って山を登らされる奴隷の苦しみは嫌われますが、登山家が重いザックを背負って...
心理/精神

スキナーの言語行動

※本頁を読まれる前に、必ず『スキナーの心理学』の前半部に目を通しておいて下さい。言語の分析行動に伴う(随伴する)環境の変化「行動随伴性」によって、人間行動を説明しようと言うのが、スキナーの心理学(行動分析学)の基本です。さらに進んで、スキナ...
人生/一般

アランの『幸福論』(3)

(2)のつづき二十七、想像に負かされる人達どんな仕事も、小さな作業の積み重ねによって達成されます。私たちは大きな仕事を目の前にした時、それに必要な膨大な工程や物や労力を想像し、それに押しつぶされ、諦めてしまいます。戦う前から負けてしまうので...
人生/一般

アランの『幸福論』(かんたん版)

はじめにオプティミスト(楽観主義者)として有名なアランの『幸福論』をはじめとしたプロポ(哲学的断章)は、具体的で非常に分かりやすい言葉で書かれているはずなのですが、内容として何を言っているのかよく分からないことが多々あります。なぜかというに...
人生/一般

アランの『幸福論』(2)

(1)のつづき十二、身体から心を制御する(その一)動物と違って人間には、思考と情念と言うものが存在します。その分、人は、調子を崩しやすいのです。急な坂道があったとします。馬は文句も言わず、ただ上っていきます。しかし、人間は、想像力がはたらき...
人生/一般

恐れとは何か

恐れの原理「恐れ」の本質的あるいは原理的な意味を定義付けるとしたら、「未来に対するバッドな予測(バッドな未来の想像)」となるでしょう。そういう意味での対義語は期待「未来に対するグッドな予測(グッドな未来の想像)」です。「明日、台風上陸の恐れ...
人生/一般

アランの『幸福論』(1)

はじめに文章が分かりやすすぎてむしろ分かりにくいアランの『幸福論』を、適度に抽象化して分かりやすくしようというのが、本頁の目的です。プロポの書かれた文脈(天声人語のような時節性)および文学的な要素は完全に無視し、人生哲学として役に立つ部分の...
心理/精神

エリスの論理療法(論理情動行動療法)

※抽象的で分かりにくい場合は、先に一番下の見出しの「具体例」から読んでください。ABC理論アルバート・エリスの生み出した心理療法である「論理療法(あるいは論理情動行動療法)」の基礎となるのが、「ABC理論」です。「A」は「出来事(Activ...
心理/精神

行動主義心理学とは何か(1)古典的条件付け

古典的条件付けこれは有名なパブロフの犬の実験を基にして生まれた理論です(この発展が次項で述べるスキナーのオペラント条件付けです)。イワン・パブロフは高名な生理学者です。本来は消化線の研究として観察されていた犬の唾液分泌が、肉の提示ではなく、...
人生/一般

優しさとは何か

優しさの語源「優しい」という言葉の語源「やさし (優し・恥し)」の意味は、「痩せるほどつらい、肩身が狭い、気恥ずかしい、慎み深い、優美だ、しとやかだ、おとなしい、けなげだ」などという状態を指す形容詞です。さらに言えば、痩せるの形容詞化(「痩...
哲学/思想

真木悠介の『時間の比較社会学』

<序章、時間意識と社会構造>第一節、時間のニヒリズム一般に私たちは死に対する恐怖、永遠の時間に対する短き生に虚無を感じています。死あるがゆえの生の虚しさは、決して避けることの出来ない真理であると思われています。しかし、世界中の様々な文化を比...
芸術/メディア

バラージュの『映画の理論』

第一章、理論のススメ映画は他の芸術よりも大衆の心を動かす強い力を持ちます。抗することのできない自然力に対するために自然科学が生じたように、映画のその強い力に対するためにそれを理論的に研究せねばなりません。大学教育において文学や絵画などの芸術...
芸術/メディア

光と影(陰)の原理

その一、明暗1、初めに世界があった。しかし、何にも存在しない暗黒の宇宙です。2、神様は何かモノを創ろうとして、とりあえず白いボールを創りました。しかし、真っ暗で何も見えません。3、仕方ないので神様は「光あれ!」と言って、太陽みたいなものを創...
哲学/思想

三木清の『パスカルにおける人間の研究』(3)賭け

(2)のつづき<第二章、賭け>第一節人間は関心によって絶えず運動する存在であり、それは常に途上にある求め続ける存在です。途上である限り、必然的に「何処から来て何処へ行くのか」と反省的に訊ねる存在でもあります。関心は時間という契機「未来」と関...
哲学/思想

仏教哲学とは何か(4)今を生きる

(3)のつづき今とは何か仏教では「今を生きる」ということをしきりに説きます。今この瞬間、この時こそが実在であり、未来や過去は想像によって生み出された煩いの種でしかないと。しかし、「瞬間」とは一体なんでしょうか。曖昧なままでは仏教“哲学”では...
哲学/思想

三木清の『パスカルにおける人間の研究』(2)人間の分析・下

(1)のつづき尉戯による世界への堕落は、同時に生が想像世界へと堕落することを意味します。尉戯の先には常に想像によって作られた的があり、それに対し情熱を燃やし欲望を向けます。「われわれは、自分のなか、自分自身の存在のうちでわれわれが持っている...
哲学/思想

三木清の『パスカルにおける人間の研究』(1)人間の分析・上

※これはパスカルについて書かれた本というより、パスカルを介したハイデガー入門(ハイデガー哲学で解釈したパスカル)です。<第一章、人間の分析>第一節パスカルの思想の主題となるものは人間です。人間と言っても、自然科学や社会科学、心理学のような客...
哲学/思想

仏教哲学とは何か(3)諦観と安心

(2)のつづき「ありがとう」と「おかげさま」前頁までで、一応、原理的なことは説明し終えましたが、抽象的で少し分かりにくかったと思います。ここからは日常経験やマンガや流行歌などによって、それらをもっと具体的に記述していきます。「あるもの」の存...
哲学/思想

仏教哲学とは何か(2)存在という幻想

(1)のつづき存在の恣意性世界という全体から「あるもの」を切り出してくることが、その存在を生成させると、前項で述べましたが、この切り出し方というものは、かなり恣意的(自分勝手)なものです。例えば、私たちがぼんやり無数の星が瞬く夜空を見上げる...
哲学/思想

仏教哲学とは何か(1)存在の本質

はじめに本頁は仏教を理屈でかつ分かりやすく解説することが目的です。専門用語は可能な限り使わず、具体例に即したものにします。仏教哲学とは仏教の哲学的な解釈です。対象となる仏教および解釈する哲学によってその内容は変わってきます。一般的な大乗仏教...
経済/ビジネス

メイヨー&レスリスバーガーのホーソン実験

ホーソン実験とは管理者および物理的な環境やシステムを重視するテイラーの科学的管理法を反証するように、能率というものが労働者個人の意志のあり様や個人的な人間関係に強い影響を受けるということを明かした実験です。それまでの非人間的な経営管理の手法...