樽の中のネコデゲス

社会/政治

ゴッフマンの『行為と演技』(3)

(2)のつづき<第五章、役割外のコミュニケーション>非公式のコミュニケーション役割を演ずるという公然と伝達されるコミュニケーションの背後には、それと異なり矛盾する、暗黙のコミュニケーションの流れがあります。公然(公式、表、役割内)の方が虚構...
社会/政治

ゴッフマンの『行為と演技』(2)

(1)のつづき<第二章、チーム>パフォーマンスチームパフォーマンスは、個人の性格の表出という部分的な機能に注目されやすく、全体が見過ごされています。例えば、パフォーマンスが職業的役割のみを表出し、個人的性質を覆い隠すことはよくありますし(官...
社会/政治

ゴッフマンの『行為と演技』(1)

※本書では「役割 role」「役目 part」「役柄 character」と使い分けられていますが、読みやすくするためにすべて「役割(role,part,character)」として記述しています。<序章、相互行為>意図的、非意図的表出他者...
哲学/思想

パノフスキーの『<象徴形式>としての遠近法』

はじめに小学一年生のメイちゃんが、はじめて学校で写生をすることになりました。その際、先生に、学校の校舎を「見えたまま」描くよう、指示されました。その指示に従い描いたメイちゃんの建物の絵を見て、美大出身の先生が注意しました。「見えたまま描きな...
哲学/思想

アリストテレスの形而上学

目的論的自然観例えば、石を手から離すと、必ず下に落ちます。まるで石が目的を持って、自分のあるべき場所を目指し、運動しているようです。これは自然のすべての事物に当てはまります。それだけでなく、自然の諸事物の形態も、目的を持って作られているよう...
哲学/思想

プラトンのイデア論と弁証法(かんたん版)

現象の世界私の目の前には、さまざまな事物があります。目の前の現実に現れる象(かたち)という意味で、それを「現象」と呼びます。いま目の前に、私の好きな女の子「しずかちゃん」がいたとすれば、「しずかちゃん」が私の目の前に現象として現れていると言...
哲学/思想

ソクラテスの問答法

はじめにソクラテスは、私たちのイメージにあるような本や論文を書くタイプの哲学者ではなく、ただ市中でひたすら様々な人と対話し続けた実践の人です。書き物は死んだ言葉だとして好まず、生きた言葉の対話によってのみ知の活動を行いました。ですので、ソク...
哲学/思想

プラトンの『クリトン』

第一幕、クリトンの提案ソクラテスどうしたのだ、クリトン、こんな時間(夜明け少し前)にやってきて。ずっとそこにいたのかい?よく看守が通してくれたね。クリトンいやあ、看守とは顔馴染みで、少しばかりの心付けを渡してだね。ずいぶん前からいたよ。こん...
人生/一般

愛とは何か

愛の定義「愛」という概念の定義付けは、芸術家や宗教家の永遠の課題です。たぶん、論理理屈だけで説明できる代物ではないので、偉い学者などより、感性や実践を重んじる彼らの方がよく理解できるのでしょう。理屈だけでは理解できない難物だからこそ、多くの...
哲学/思想

プラトンの『ソクラテスの弁明』

はじめに紀元前399年、ソクラテスは告発され処刑されます。ソクラテスの新しい思想に脅威を感じた保守派の有力政治家アニュトス、およびその取り巻き(詩人メレトス、弁論家リュコン)によって起こされたものです。準備された告発の内容は、ソクラテスがポ...
哲学/思想

ニーチェの『道徳の系譜』第二論文~罪と罰、良心と負い目

第一論文「よいと悪い」のつづき<第二論文「罪と罰、良心と負い目」>一、忘却力と記憶力人間において「忘却」は、非常に能動的な意味をもっています。それは意識の扉、門番のようなものであり、意識が落ち着いて仕事(高度な機能)をなすための余地と余裕を...
哲学/思想

ニーチェの『道徳の系譜』第一論文~よいと悪い

<第一論文、よいと悪い>二、イギリス心理学者による考察先行する道徳の歴史家たちには、歴史的精神が欠けており、本質的に非歴史的に考えます。彼等(イギリスの心理学者)は言います。「非利己的行為の恩恵に与った人々の側から“よい”と賞賛されたその事...
人生/一般

運命とは何か

運命は変えられるのかここで言う「運命」とは、「自由意志」の対概念としてのものです。「自由意志(以下、意志)」が、自分の意志的な決断による選択の自由を指すなら、「運命」は、あらかじめ自分のなす選択が自分の意志以外のものに強制的に決められている...
哲学/思想

ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』(完全版)

※大著なので暇な時にちょびちょび書きすすめています。1.「世界は私の表象である」経験の形式において最も根本的なものは、主観である私が客観である事物を表象(感覚された対象、心象、想像など私の心に映っている事物像のこと)するという、「主観-客観...
哲学/思想

ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』

カントの「物自体」と「現象」としての世界あらゆる生物は、自己の持って生まれた認識機能や知覚機能の枠内でしか、世界をとらえられません。世界に色があるのは眼(色覚)のある動物にっとてだけであり、世界に音があるのは耳のある動物にとってだけです。リ...
心理/精神

アーロン・ベックの『認知療法』

<第一章、常識とその彼岸>患者のジレンマ精神科の歴史においては、普遍的に共有されるひとつの学説はなく、様々な学派が相争う形になっています。それは理論的妥当性による争いというより、創始者のカリスマ性やドクマティックな教説による、排他的な権力争...
経済/ビジネス

パーキンソンの『パーキンソンの法則』

仕事と時間の関係仕事の時間に対する需要(ある仕事を為すために必要な時間量)と、時間の供給量に論理的な関係はありません。需要は、供給された時間いっぱいにまで膨れ上がる風船のようなものとなります。仕事の実行のために必要な時間量は計算するまでもな...
人生/一般

デシの『人を伸ばす力』(かんたん版)

概要人間の動機には、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」という二つのものがあります。動機づけとは、いわゆるモチベーションのことです。たとえば、好きでランニングをするランナーは、内的な満足のために「内発的動機づけ」で走り、体育で嫌々走らされ...
人生/一般

スマイルズの『自助論』(かんたん版)

第一章、自助の精神天は自ら助くる者を助く。援助は人を弱くし、自立の精神を挫き、自立の欲求すらなくします。自分で自分を助ける自助の精神こそ、人間を真に助けるものです。多くの人は自分の力を信じず、国家(国民国家)に頼ろうとします。しかし、国家は...
人生/一般

九鬼周造の『「いき」の構造』(かんたん版)

言葉は歴史と文化の反映言葉というものには、その国の文化と歴史が刻み込まれています。ひとつの言葉の中には、どうしても他の国の言葉に翻訳できない特殊な意味やつながりが存在しています。例えば、仏教国であり自然災害国である日本において「諦め」という...
芸術/メディア

九鬼周造の『「いき」の構造』(通常版)

<第一章、序説>言語とはその民族の存在の軌跡言語と民族というものは、密接に関連しています。ある言語およびその意味内容には、その民族の過去の在り様から現在の在り様までの変遷が記録されています。使用される言語の中に、その民族の歴史と文化(生存の...
人生/一般

共感とは何か

共感の条件管理者(親や教師や上司や先輩など)は、とかく同情や共感というものを語りたがります。他人の気持ちを理解し行動することが社会性の基礎であり、社会の成員として生きる以上は他人に共感できるように成れ、という訳です。しかし、共感というものは...
社会/政治

アンダーソンの『想像の共同体』(2)歴史

(1)のつづき<第四章、クレオールの先駆者たち>アメリカ大陸という特殊な場所本章では、言語を要因としないナショナリズムとして、アメリカ諸国家について語られます。言語においては結びついているはずの人々が、何を因子としてその国の差異と同一性を形...
社会/政治

アンダーソンの『想像の共同体』(1)理論

<はじめに>本書のもつ意味メディアによる人間への影響というものを考え抜いた人にマクルーハンという思想家がいます。メディアと言っても広義のもので、車や住居なども含め、人と人をつなぐもの(中間物、メディウム、メディア)全般についての考察です。私...
人生/一般

ラッペの『小さな惑星の緑の食卓』

はじめにヴィーガニズムやベジタリアニズムの主な動機となるものは、1.健康・栄養面、2.倫理・宗教面、3.政治・経済面の三つです。特に日本は神道および仏教の国なので、自然の命を重んずるという倫理的な側面が強く押し出される傾向にあります。「大豆...
哲学/思想

アウグスティヌスの『告白』(2)時間論

(1)のつづき<第十一巻、時間>第十四章、時間の本質「過去」とはもはや存在しないもの、「未来」とは未だ存在しないものです。しかし、だからといって「現在」が存在するという訳ではありません。もし現在が常に存在し、過去へと移りゆかないなら、それは...
哲学/思想

アウグスティヌスの『告白』(1)記憶論

はじめに本書前半部(一巻から九巻)では、アウグスティヌスの自伝が語られ、後半(十巻から十三巻)では、哲学(神学)的な論述に入ります。特に第十巻での心(記憶)の構造、第十一巻での時間論は後世の思想家達に強い影響を与えた重要な考察です。本頁で扱...
人生/一般

自助とは何か

自助の精神自助の精神を述べる有名なことわざとして、「天(神)は自ら助くる者を助く」というものがあります。古代ギリシャから伝わるものですが、特に日本においてこの言葉が広く使われるようになったのは、明治日本の近代化において欧米的な主体性の精神が...
人生/一般

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』(かんたん版)

幸福とは人間行動の究極目的となるもの行動というものには、基本的にある目的があります。そして、その目的というものは、もっと大きな目的のための手段になっています。さらに、その大きな目的は、もっと大きな目的のための手段になっており、この階段を昇っ...
哲学/思想

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』(5)幸福論補足

(4)のつづき<第十巻>第六章、幸福論まとめ幸福とは、「ヘクシス(状態、性向)」ではなく、「エネルゲイア(活動)」です。眠ったままの人は、いかに幸福な状態にあっても幸福ではありえないように。活動と言っても、他のもののために為す手段的な活動で...
人生/一般

未来とは何か

時間の定義事物の何であるかは、「定義」次第です。定義とは、それが何であるか(本質)を述べるものです。ある事物の定義は、時代や場所によって(さらに言えば個人によって)異なるため、たとえ同じ一つのものであっても、複数の定義を持ち、様々なものとし...
人生/一般

アリストテレスの『友愛論』(2)

(1)のつづき<第九巻、愛について(続)>第一章、――第二章、――第三章、愛の解消愛した時とは、異なる人間になった相手に対して、そのまま愛すべきかどうかという問題があります。先にも述べたように、有用性や快楽によって結びついた者たちは、不安定...
人生/一般

アリストテレスの『友愛論』(1)

※本頁は『ニコマコス倫理学』第八巻、第九巻の「友愛論」を単独で扱ったものです。そのままでも読めますが、一巻から読んでおくと、より理解が深まります。<第八巻、愛について>第一章、愛の必要性「愛」はアレテー(徳、卓越性、器量)の一種で、人生にお...
哲学/思想

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』(4)正義論

(3)のつづき<第五巻>正義第一章、正義一般正義とは、どのような中庸(中間)であるかを考察します。アレテー(器量、卓越性、徳)としての「正義」とは、正しい行為をし、正しいことを望むヘクシス(状態、性向)のことであり、「不正」とは、不正を望み...
哲学/思想

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』(3)責任論

(2)のつづき<第三巻>責任第一章、自発と非自発行為には自発的(本意)なものと非自発的(不本意)なものがあり、これは行為者を評価する際や裁く際に重要な問題になります。一般的には、「強制」や「無知」によってなされる行為は非自発的なものとされて...