社会/政治

哲学/思想

フロムの『正気の社会』(かんたん版)

精神の健康とは当時、精神の健康(メンタルヘルス)についての定義は、概ね二つの極に分かれていました。ひとつは、社会適応を基準に考えるものであり、社会に上手く適応している社会適合者は精神的に健康で、不適応状態にある人は不健康で精神的病を発症する...
哲学/思想

フロムの『正気の社会』(通常版)

※長文が苦手な方は『正気の社会』(かんたん版)をご覧ください。はじめに本書は名著『自由からの逃走』の続編であり、エーリック・フロム第二の主著です。マルクスの疎外論を基に現代資本主義の病理を暴き出す内容であるため、時代に合わず、日本では長い間...
哲学/思想

フロムの『正気の社会』(4)第六章~第八章

(3)のつづき※第六章では、一九世紀および二十世紀の学者や思想家による現代資本主義社会の診断(批判的分析)が引用中心に紹介され、第七章では、その問題に対する解答としての「偶像崇拝的権威主義(ファシズム、ナチズム、スターリニズム)」「超資本主...
哲学/思想

フロムの『正気の社会』(3)第五章後半

(2)のつづき第五章、資本主義社会における人間(後半)二節、資本主義の構造と人間の性格(続き)C.20世紀の社会(続き)2、性格学的変化(続き)c.その他諸々の様相●匿名の権威-同調18世紀および19世紀の権威は、合理的-不合理的(第五章二...
哲学/思想

フロムの『正気の社会』(2)第五章前半

(1)のつづき第五章、資本主義社会における人間(前半)一節、社会的性格現代人の精神的健康を考察するには、先ず、社会的な条件が人間に及ぼす影響(いかなる社会様式が人の正気を助長し、また失わせるか)を研究しなければなりません。この研究の際、特定...
哲学/思想

フロムの『正気の社会』(1)第一章~第四章

※時間がない方は要約した『正気の社会』(通常版)をご覧ください。序章本書は、『自由からの逃走』の続編です。人は、自由(主体的責任)の不安から逃走するために、強い指導者や民族や国家に服従する全体主義を望む、ということを述べたのが、『自由からの...
社会/政治

メイロウィッツの『場所感の喪失』第二部、印刷から電子へ

第一部のつづき序章、新しいメディアの登場新しいメディアは、古いメディアが構築したコミュニケーションの在り方を"変化させる"ことによって、その新しさの効果を発揮します。印刷機の速さは、写本の遅さによって生じていた情報の独占を解放し、宗教改革と...
哲学/思想

山本七平の『「水=通常性」の研究』

(1)のつづき第一章、水を差す雨「水を差す」と、「空気」は一瞬にして消失し、人々を現実に引き戻します。時折降る雨のように、たった一言、誰かが現実の状況を語り、空気によって作り出されていた異常な幻想を霧散させると、人々は酔いが醒め、通常性へと...
哲学/思想

山本七平の『空気の研究/水の研究』(かんたん版)

第一章、「空気」の研究一節、「空気」とは何か私たち日本人は「空気を読め」などとよく言います。一時期その頭文字を取った「KY(ケーワイ)」が流行語ともなりました。しかし、この「空気」は「文脈を読む」という意味合いが強く、グレゴリー・ベイトソン...
哲学/思想

山本七平の『「空気」の研究』

※難しいのが苦手な方は、かんたん版をご覧ください。第一章、「空気」山本は、教育雑誌の記者に日本の道徳教育についての意見を問われ、概ね以下のようなことを答えます。日本の道徳は「差別の道徳」であり、「知人(内集団)は助け非知人(外集団)は助けな...
社会/政治

クラッパーの『マス・コミュニケーションの効果』第二部

第一部のつづき第六章、暴力的メディア内容がもたらす効果マスコミの効果に関する人々の大きな関心として、メディアにおける犯罪と暴力の描写が視聴者(特に若年層)に影響を与える、という問題があります。客観的な統計により、すべてのメディアでおびただし...
社会/政治

クラッパーの『マス・コミュニケーションの効果』第一部

第一章、イントロダクション本書で扱われる内容は以下のようなものであり、各章で詳細な考察が展開されます。1.マス・コミュニケーションは通常、受け手の効果の必要かつ十分な原因として作用するものではない。そうではなくて、マス・コミュニケーションは...
人生/一般

自己成就的予言(かんたん版)

自己成就的予言とは自己成就的予言(自己実現的予言)とは、「予言が結果として事実になってしまう」という社会学的な法則の事を指しています。なぜ、そういう事が生じるかと言うと、予言が予言に従った行為を生じさせるので、その行為が予言を現実化するため...
社会/政治

マートンの自己成就的予言

トーマスの公理社会学者ウィリアム・アイザック・トーマス(1863-1947)が述べた以下の公理は、社会の動きを理解するために重要です。「もし、人がある状況をリアル(真実、現実)であると定義すれば、それは結果においてもリアルである」"If m...
哲学/思想

ロックの『市民政府論』(かんたん版)

自然状態人間は、自然本来の状態においては、完全に自由で、他人の意志ではなく自分の意志で行動を決定し、自分の生命と身体と財産を扱います。同一クラスの被造物(人類)である人間は、万人が平等な権力、権限を持ち、主従の関係のない状態にあります。これ...
哲学/思想

ロックの『市民政府論(統治論第二論)』(6)

(5)のつづき第十七章、簒奪について197-198ーー第十八章、暴政について199簒奪は、他人が持つ正当な権利を横取りし、その権力を行使することです。暴政は、権利を超えて権力を行使することです。暴政はこの権力を公益でなく私益(貪欲、野心、復...
哲学/思想

ロックの『市民政府論(統治論第二論)』(5)

(4)のつづき第十四章、大権について159立法権力と執行権力が別の者に委ねられている統治形態では、法の不備を補うために、公益という基本原理に基づき、様々な事柄が執行権力の思慮分別に任されることになります。法が予見できない事例、法に記載のない...
哲学/思想

ロックの『市民政府論(統治論第二論)』(4)

(3)のつづき第十一章、立法権力の範囲について134立法権力は政治共同体の最高権力であり、それ以外のいかなる者の命令も、公的に選ばれ任命された立法部の承認なしには、法としての効力も拘束力ももちません。法律を制定するための絶対条件である“社会...
哲学/思想

ロックの『市民政府論(統治論第二論)』(3)

(2)のつづき第八章、政治社会の起源について95生来的に自由で平等である人間が自然状態を脱し政治共同体に属するのは、己の合意によってのみであり、同意なしに他者の政治権力に服することはありません。そして、合意によって結合した一つの政治体(国家...
哲学/思想

ロックの『市民政府論(統治論第二論)』(2)

(1)のつづき第六章、父権について52ーー53ここでいう「父権」は便宜的な名称で、実質的には母親を含む「親権」のことです。54「全ての人間は生まれながらに平等である(二章四節参照)」と述べましたが、言い換えればそれは「人間は他人の意志や権威...
哲学/思想

ロックの『市民政府論(統治論第二論)』(1)

はじめに本書『統治論(統治二論)』は前後編の二論に分かれており、第一論では国王権力の絶対性を聖書解釈によって裏打ちしようとしたフェルマーの王権神授説への反論がなされ、第二論ではそれに代わる人民を中心とした政治的統治について語られます。一般的...
社会/政治

ゴッフマンの『行為と演技』(かんたん版)

自己とは社会役割という仮面(ペルソナ=パーソン)私たちは、他者の情報を基にして、自分の行動を決定しています。例えば、相手が王様か乞食かによって、対応は相当変化します。その反対に、私は自分の意図した通りに、他人に動いて欲しいので、自分の都合に...
社会/政治

ゴッフマンの『行為と演技』(3)

(2)のつづき<第五章、役割外のコミュニケーション>非公式のコミュニケーション役割を演ずるという公然と伝達されるコミュニケーションの背後には、それと異なり矛盾する、暗黙のコミュニケーションの流れがあります。公然(公式、表、役割内)の方が虚構...
社会/政治

ゴッフマンの『行為と演技』(2)

(1)のつづき<第二章、チーム>パフォーマンスチームパフォーマンスは、個人の性格の表出という部分的な機能に注目されやすく、全体が見過ごされています。例えば、パフォーマンスが職業的役割のみを表出し、個人的性質を覆い隠すことはよくありますし(官...
社会/政治

ゴッフマンの『行為と演技』(1)

※本書では「役割 role」「役目 part」「役柄 character」と使い分けられていますが、読みやすくするためにすべて「役割(role,part,character)」として記述しています。<序章、相互行為>意図的、非意図的表出他者...
社会/政治

アンダーソンの『想像の共同体』(2)歴史

(1)のつづき<第四章、クレオールの先駆者たち>アメリカ大陸という特殊な場所本章では、言語を要因としないナショナリズムとして、アメリカ諸国家について語られます。言語においては結びついているはずの人々が、何を因子としてその国の差異と同一性を形...
社会/政治

アンダーソンの『想像の共同体』(1)理論

<はじめに>本書のもつ意味メディアによる人間への影響というものを考え抜いた人にマクルーハンという思想家がいます。メディアと言っても広義のもので、車や住居なども含め、人と人をつなぐもの(中間物、メディウム、メディア)全般についての考察です。私...
人生/一般

ラッペの『小さな惑星の緑の食卓』

はじめにヴィーガニズムやベジタリアニズムの主な動機となるものは、1.健康・栄養面、2.倫理・宗教面、3.政治・経済面の三つです。特に日本は神道および仏教の国なので、自然の命を重んずるという倫理的な側面が強く押し出される傾向にあります。「大豆...
心理/精神

オルポートの『デマの心理学』(かんたん版)

デマの生じる二つの外的条件デマが生じる条件として二つの要素があります。A.その話題が人々にとって重要性をもつこと、B.その話題が隠されていたり曖昧であったり矛盾したりしていて真実性が薄いこと、です。デマの流布量は、このA(重要さ)とB(曖昧...
心理/精神

オルポートの『デマの心理学』

※本書において理論的に重要な章のみ取り上げます。第二章、デマはなぜ流れるのか二つの基本条件デマが生じる際には、二つの基本となる条件があります。A、そのデマの主題(話題)が話し手及び聞き手にとって何らかの重要さを持っていること。例えば、第二次...
哲学/思想

真木悠介の『時間の比較社会学』

<序章、時間意識と社会構造>第一節、時間のニヒリズム一般に私たちは死に対する恐怖、永遠の時間に対する短き生に虚無を感じています。死あるがゆえの生の虚しさは、決して避けることの出来ない真理であると思われています。しかし、世界中の様々な文化を比...
哲学/思想

プラトンの『ゴルギアス』(5)終幕

(4)のつづき終幕(507d~527e)ソクラテス私の述べたいことは以上になる。賢者たちの言うところでは、天も地も、神も人も、すべてを結びつけるものは秩序や節度なのだ。なぜ彼らが宇宙をコスモス(調和、秩序)と名付けたか分かるね。カリクレスあ...
哲学/思想

プラトンの『ゴルギアス』(4)カリクレス編・下

(3)のつづきソクラテス君は欲望の無制限の解放が人間の徳であり幸福であると言う。しかし、過去の賢者たちは、満たされて欲望を持つ必要のない充足した状態を幸福だと言う。これは間違いかね。カリクレスもしそうだとしたら、石コロや死人が最も幸福な者と...
哲学/思想

プラトンの『ゴルギアス』(3)カリクレス編・上

(2)のつづき<第三幕、対カリクレス戦(481c~507c)>カリクレスちょっと待ってくれ、ソクラテス。あなたはそれを本気で言っているのか?それとも何かの冗談か?われわれ人間の現実の生き方は、あなたの言う生き方とは正反対のものではないか。ソ...
哲学/思想

プラトンの『ゴルギアス』(2)ポロス編

(1)のつづきポロスどちらにしろ、独裁者のような力を持つ彼らを羨ましいとは思わないのですか?ソクラテス惨めな人達に対しては、羨みではなく、憐れみが必要なのだ。ポロス憐れなのは、不正に死刑に追い込まれ死んでいく者の方でしょう!ソクラテス不正に...