社会/政治

社会/政治

リースマンの『孤独な群集』三つの社会的性格

性格と社会 社会的性格(キャラクターの意)とは、「イタリア人は陽気、日本人は真面目、アメリカ人は実利的」などと言われるような、その社会の成員が一般的にもつ性格特性を表したものです。 社会的性格は、その社会が必要とする特性を獲得するように...
社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(かんたん版)

<まとめ> 二、 世襲による君主政体の維持は容易である。 伝来の秩序に従い普通に対応する能力があれば問題ない。 三、 新興の君主政体は軍事力によって新しい臣民を獲得するため不安定で、臣民の心を掴めな...
社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(4)その他

(3)のつづき 第二十章、その他、君主が行うべきこと 新しく君主になったものは、臣民の武装を解除してはいけない。 臣民を武装させれば、必然的に臣民は君主の党派となる。 もし、すべての臣民を武装できなか...
社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(3)人格論

(2)のつづき 第十五章、君主への賞賛および非難について 臣民や味方に対する君主の態度や統治のあり方はどうあるべきか。 いかに人が生きているかという現実を考慮せずに、いかに人はあるべきかという理想ばかりを追求する既存の...
社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(2)政体論・下

(1)のつづき 第八章、極悪非道な手段によって獲得された君主政体 極悪非道、残虐な手段によって君主になった者の生き方を考察してみると、そこに運(幸運)や他力依存の要素がほとんどない。 無数の困難と危機を...
社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(1)政体論・上

第一章、君主政体の種類と獲得方法 あらゆる政体は共和政か君主政かどちらかである。 君主政体は、血統による世襲の政体か、新興の政体である。 領土を獲得する方法は、自己の軍備によるか他者の軍備によるか。 また、その獲...
哲学/思想

和辻哲郎の『風土』(かんたん版)

存在は時間から生まれる 私たちの目の前にあるものは、どのようにして存在するのでしょうか。 私の目の前の「美しい花」は、通勤で慌しく通り過ぎていく人にとっては「道路の背景」であり、田舎の子供にとっては「美味しい蜜が出る...
社会/政治

和辻哲郎の『風土』(4)日本の風土

(3)のつづき <第三章、モンスーン的風土の特殊形態、日本> 台風的性格 日本はモンスーン的な受容性と忍従性の中にありながら、日本的な特徴である「台風的性格」を持っています。 他の地域にお...
社会/政治

和辻哲郎の『風土』(3)風土の類型

(2)のつづき <第二章、三つの類型> 風土の類型 和辻は風土の類型として三つのもの「モンスーン」「砂漠」「牧場」を挙げます。 さらにモンスーンの詳細として中国と日本を考察します(字数の都...
哲学/思想

和辻哲郎の『風土』(2)人間の理論

(1)のつづき <第一章、風土の基礎理論~第二節、人間存在の風土的規定> 人間存在の二重性 風土という現象において人間は己を見出すわけですが、今度はその人間に焦点を当て、考察します。 ...
哲学/思想

和辻哲郎の『風土』(1)風土の理論

<第一章、風土の基礎理論~第一節、風土の現象> 風土の概念 ここでいう「風土」というのは、その土地の気候、気象、地質、地形、景観などの総称であり、人間を取り巻く環境や自然全般を指します。 普通に「自然」...
社会/政治

シラーの遊戯論と美的社会

美の定義 シラーにとって美の定義とは、「現象における自由」です。 現れにおいて自由な姿をしているものが、私たちに美と観じられるということです。 対象である自然(ネイチャー)が自然(ナチュラル)にその自在性を現わすとき、それは自由な戯れ...
心理/精神

マルクーゼの『エロス的文明』

<第一部、現実原則の支配の下に> 文化とは性欲望の抑圧 フロイトは、人間の文化というものが、人間の自然(本能的)に持っている欲望(主に性的なもの)を抑圧することによって生ずるものだと言います。 もし、本能のままに人間が生きれば、そ...
社会/政治

アーノルドの『教養と無秩序』

社会の三つの階級 まず、アーノルドは当時のイギリス社会を三つの階級とその俗称とに分けます(本書は1869年刊行)。 1、「野蛮人である貴族階級」、頑固で愚鈍であり、領地で狩猟と野外活動にふける野蛮人のような人々。...
宗教/倫理

ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

プロテスタントと資本主義 本書のタイトル通り、近代資本主義を発展させたエートスが、プロテスタントの倫理を源泉として生じたというその成り立ちを描き出すことです。 「エートス」とは、ウェーバーが定式化した社会学的な概念で、その意味は「ある文...
哲学/思想

フーコーの『知への意志(性の歴史)』

抑圧の仮説 近代西欧における性の問題を語る際に通説となっているものが、「性の抑圧仮説」です。 17世紀以降、性というものの抑圧がはじまり、性的なことを口に出すこともはばかれるような時代が生じたとされます(典型がヴィクトリア朝...
社会/政治

フーコーの『監獄の誕生』(2)パノプティコン

(1)のつづき 規律(ディシプリン) この監獄システムの本質である規格化を支える管理の方法が「ディシプリン(規律)」です。 ディシプリンとは、身体を詳細に管理することにより、従順な人間(=機械)を作り出す技術で...
社会/政治

フーコーの『監獄の誕生』(1)処罰の歴史

近代化される処罰の形式 本書においてまず、近代的な監獄制度が誕生するまでの三つの処罰の形式が描かれます。 第一に君主権力における身体刑、第二に社会的に一般化される処罰、第三に管理装置としての監獄制です。 以下、それ...
心理/精神

フーコーの『狂気の歴史』心理学の誕生

知の考古学者 私たちにとって当たり前すぎて省みられることすらないものの隠れた前提や、その生成の歴史を明らかにすることが、フーコーの目的です。 考古学者のような手際で、隠れたものを推理し、今は見えない過去を発掘していきます。 ...
哲学/思想

ホルクハイマーの啓蒙の弁証法(2)

(1)のつづき 神話化する啓蒙 啓蒙、伝統的理論、道具的理性と巡りましたが、ここでこれらに共通する構造のイメージが何かに似ていることに気付きます。 それは神話です。 天という頂点の視座から階層化されたヒエラル...
哲学/思想

ホルクハイマーの啓蒙の弁証法(1)

※『啓蒙の弁証法』という本の要約ではなく、啓蒙の弁証法という概念の解説です。 論点 「なにゆえに人間は、真に人間らしい状態へ進む代わりに、一種の新しい野蛮状態へ陥っていくのか」(引用) 啓蒙という蒙(くら)きを啓(あき...
社会/政治

ホッブズの『リヴァイアサン』

万人の万人に対する闘争 もし、国家や法というものの存在しない世界であったとしたら、人間は一体どういう状態にあるかという問いからはじまります。 そういう「自然状態」においては、個々バラバラの人間の諸能力に大差はなく、各個人の自己保存と快楽...
社会/政治

マルクスの『資本論』

第一章、商品の成立 使用価値と交換価値 使用価値とはその名の通り、何らかの物を使用する際の具体的な有用性の価値です。 パンは食べて栄養にするものであり、レコードは音楽を聴いて慰安をえるための物です。 交換価値とは、それが社会的な...
社会/政治

ミルの『自由論』

自由と個性と多様性 イギリス経験論の系譜にあるミルは、ベーコン同様帰納法への信頼と自然の摂理への畏敬の念が色濃く見えます。 人間観においてもそれが強く反映されており、自然の生物が自らの自性を発揮する面目躍如とする様が、自由と...
社会/政治

ベンサムの最大多数の最大幸福

道徳科学とその基準 ニュートン物理学の歴史的な成功の時代にあり、その普遍的で客観的な科学観の影響を受けて、主観的で感覚的なものに拠ることの多かった道徳や法などの倫理的基準にも客観性をもたせることを目指します(ニュートンもベンサムも同じイギ...
社会/政治

フロムの『自由からの逃走』(2)権威の社会学

(1)のつづき 個性化の過程 人間は生れ落ちてしばらくの間は、自分の身体と環境の間に境界を設けない、未分化の状態にあります。 そこから徐々に私と母の区別や父や他者の登場、私の鏡像などとの出会いを通じて、「自我」...
心理/精神

フロムの『自由からの逃走』(1)権威の心理学

内在化される権威システム 強力な権威というものは、被支配者を外的な力によって隷属させるだけでなく、権威を無意識にまで内在化させることによって、内と外から強力な二重の鎖で支配します。 外的な力のみで他者を支配しようとすれば...
社会/政治

オルテガの『大衆の反逆』

オルテガによる大衆の定義 これはいわゆる政治・経済的な意味での大衆(経済力や社会的地位の階層的なピラミッドの中・下層を占める多数者)を指すものではなく、「生き方」としての大衆を指す哲学的概念です。 主体性をもたず、ただ人間集団の数の力や...
社会/政治

ルソーの『社会契約論』

社会契約 まだ社会共同体のない自然状態にいる人間を想像してみましょう。 ひとりで自然と闘い日々の糧を得、生活環境を作り、天災などのアクシデントに対する安全の保障もない不安定な状態で生きることになります。 また、他者からの暴力や略奪に対...
心理/精神

エリクソンのアイデンティティとライフサイクル

アイデンティティ アイデンティティとは自己同一性のことです。 それは時間や場所の変化によってコロコロ変わるものではなく、安定して自己が常に同一であるということの意味です。 今、私は私であり、過去においても私は私であったし、未来において...
哲学/思想

ベンヤミンの『暴力批判論』

本書のねらい 暴力批判論の目的は、暴力と法と正義の関係を描くことです。 いわば暴力の歴史哲学的記述です。 自然法的暴力と実定法的暴力 自然法的な暴力とは、目的が正しければ手段である暴力も正当化されるという考え方です。 例え...