2019

人生/一般

アランの『幸福論』(7)

(6)のつづき 八十二、八十三、八十四、礼儀の力 礼儀というものは、乱暴な情念を鎮めるための体操です。 せっかく与えられたこの短い人生という時を、くだらない情念のせいで無駄にしないための技術です。 礼儀正...
人生/一般

アランの『幸福論』(6)

(5)のつづき 七十二、ロボットたちの口論 普通、私たちの発する言葉には、意味があるものだと考えています。 その人の心にある考えを言葉によって口にするものだ、と。 しかし、大半の言葉はそうではなく、それは何の...
人生/一般

アランの『幸福論』(5)

(4)のつづき 五十五、言葉は状況を作る 環境が知らず知らずのうちにその人の行動を規定するように、言葉も同じ作用を持ちます。 窓のない、薄暗い電灯の、コンクリートで冷えた空間内に居ると、人の心も閉鎖的で、暗...
人生/一般

アランの『幸福論』(4)

(3)のつづき 四十二、四十四、本当の幸福 人間は苦しみを嫌うものだと思われ、そして、苦しみこそが不幸だと思われています。 しかし、そうではありません。 例えば、重い荷を背負って山を登らされる奴隷の苦しみ...
心理/精神

スキナーの言語行動

※本頁を読まれる前に、必ず『スキナーの心理学』の前半部に目を通しておいて下さい。 言語の分析 行動に伴う(随伴する)環境の変化「行動随伴性」によって、人間行動を説明しようと言うのが、スキナーの心理学(行動分析学)の基本です。 さらに進...
人生/一般

アランの『幸福論』(3)

(2)のつづき 二十七、想像に負かされる人達 どんな仕事も、小さな作業の積み重ねによって達成されます。 私たちは大きな仕事を目の前にした時、それに必要な膨大な工程や物や労力を想像し、それに押しつぶされ、諦めてし...
人生/一般

アランの『幸福論』(かんたん版)

はじめに オプティミスト(楽観主義者)として有名なアランの『幸福論』をはじめとしたプロポ(哲学的断章)は、具体的で非常に分かりやすい言葉で書かれているはずなのですが、内容として何を言っているのかよく分からないことが多々あります...
人生/一般

アランの『幸福論』(2)

(1)のつづき 十二、身体から心を制御する(その一) 動物と違って人間には、思考と情念と言うものが存在します。 その分、人は、調子を崩しやすいのです。 急な坂道があったとします。 馬は文句も言わず、ただ...
人生/一般

恐れとは何か

恐れの原理 「恐れ」の本質的あるいは原理的な意味を定義付けるとしたら、「未来に対するバッドな予測(バッドな未来の想像)」となるでしょう。 そういう意味での対義語は期待「未来に対するグッドな予測(グッドな未来の想像)」です。 「明日、台...
人生/一般

アランの『幸福論』(1)

はじめに 文章が分かりやすすぎてむしろ分かりにくいアランの『幸福論』を、適度に抽象化して分かりやすくしようというのが、本頁の目的です。 プロポの書かれた文脈(天声人語のような時節性)および文学的な要素は完全に無視し、人生哲学...
心理/精神

エリスの論理療法(論理情動行動療法)

※抽象的で分かりにくい場合は、先に一番下の見出しの「具体例」から読んでください。 ABC理論 アルバート・エリスの生み出した心理療法である「論理療法(あるいは論理情動行動療法)」の基礎となるのが、「ABC理論」です。 「A」は「出...
心理/精神

行動主義心理学とは何か(1)古典的条件付け

古典的条件付け これは有名なパブロフの犬の実験を基にして生まれた理論です(この発展が次項で述べるスキナーのオペラント条件付けです)。 イワン・パブロフは高名な生理学者です。 本来は消化線の研究として観察されていた犬の唾液分...
人生/一般

優しさとは何か

優しさの語源 「優しい」という言葉の語源「やさし (優し・恥し)」の意味は、「痩せるほどつらい、肩身が狭い、気恥ずかしい、慎み深い、優美だ、しとやかだ、おとなしい、けなげだ」などという状態を指す形容詞です。 さらに言えば、痩せるの形容詞...
哲学/思想

真木悠介の『時間の比較社会学』

<序章、時間意識と社会構造> 第一節、時間のニヒリズム 一般に私たちは死に対する恐怖、永遠の時間に対する短き生に虚無を感じています。 死あるがゆえの生の虚しさは、決して避けることの出来ない真理であると思われてい...
芸術/メディア

バラージュの『映画の理論』

第一章、理論のススメ 映画は他の芸術よりも大衆の心を動かす強い力を持ちます。 抗することのできない自然力に対するために自然科学が生じたように、映画のその強い力に対するためにそれを理論的に研究せねばなりません。 大学教育において文学や絵...
芸術/メディア

光と影(陰)の原理

その一、明暗 1、 初めに世界があった。しかし、何にも存在しない暗黒の宇宙です。 2、 神様は何かモノを創ろうとして、とりあえず白いボールを創りました。 しかし、真っ暗で何も見えません。 3、 ...
哲学/思想

三木清の『パスカルにおける人間の研究』(3)賭け

(2)のつづき <第二章、賭け> 第一節 人間は関心によって絶えず運動する存在であり、それは常に途上にある求め続ける存在です。 途上である限り、必然的に「何処から来て何処へ行くのか」と反省的に訊ね...
哲学/思想

仏教哲学とは何か(4)今を生きる

(3)のつづき 今とは何か 仏教では「今を生きる」ということをしきりに説きます。 今この瞬間、この時こそが実在であり、未来や過去は想像によって生み出された煩いの種でしかないと。 しかし、「瞬間」とは一体なんで...
哲学/思想

三木清の『パスカルにおける人間の研究』(2)人間の分析・下

(1)のつづき 尉戯による世界への堕落は、同時に生が想像世界へと堕落することを意味します。 尉戯の先には常に想像によって作られた的があり、それに対し情熱を燃やし欲望を向けます。 「われわれは、自分のなか、自分自身の...
哲学/思想

三木清の『パスカルにおける人間の研究』(1)人間の分析・上

※これはパスカルについて書かれた本というより、パスカルを介したハイデガー入門(ハイデガー哲学で解釈したパスカル)です。 <第一章、人間の分析> 第一節 パスカルの思想の主題となるものは人間です。 人間と言...
哲学/思想

仏教哲学とは何か(3)諦観と安心

(2)のつづき 「ありがとう」と「おかげさま」 前項までで、一応、原理的なことは説明し終えましたが、抽象的で少し分かりにくかったと思います。 ここからは日常経験やマンガや流行歌などによって、それらをもっと具体的...
哲学/思想

仏教哲学とは何か(2)存在という幻想

(1)のつづき 存在の恣意性 世界という全体から「あるもの」を切り出してくることが、その存在を生成させると、前項で述べましたが、この切り出し方というものは、かなり恣意的(自分勝手)なものです。 例えば、私た...
哲学/思想

仏教哲学とは何か(1)存在の本質

はじめに 本頁は仏教を理屈でかつ分かりやすく解説することが目的です。 専門用語は可能な限り使わず、具体例に即したものにします。 仏教哲学とは仏教の哲学的な解釈です。 対象となる仏教および解釈する哲学によってその内容は変わ...
経済/ビジネス

メイヨー&レスリスバーガーのホーソン実験

ホーソン実験とは 管理者および物理的な環境やシステムを重視するテイラーの科学的管理法を反証するように、能率というものが労働者個人の意志のあり様や個人的な人間関係に強い影響を受けるということを明かした実験です。 それまでの非人間的な経営管...
芸術/メディア

ディフォルメの原理

ディフォルメとは何か 「ディフォルメ(仏:deformer)」とは、「~を変形させる、~の形をゆがめる」などという意味の言葉です。 主に美術の領域では、意図的な変形によって何らかのものを表現する際に使われる言葉です。 ここでは狭義の専...
経済/ビジネス

テイラーの『科学的管理法の原理』

<序章> 本書のねらい 形のある目に見えるモノの無駄は認識されやすいので、人間に強い反省を促します。 しかし、形の残らない人間行動の無駄を認識するには、記憶や想像によって推理しなければなりません。 モノの浪費より、人間の浪費の方がは...
哲学/思想

プラトンの『ゴルギアス』(5)終幕

(4)のつづき 終幕(507d~527e) ソクラテス 私の述べたいことは以上になる。 賢者たちの言うところでは、天も地も、神も人も、すべてを結びつけるものは秩序や節度なのだ。 なぜ彼らが宇宙をコスモス(調...
哲学/思想

プラトンの『ゴルギアス』(4)カリクレス編・下

(3)のつづき ソクラテス 君は欲望の無制限の解放が人間の徳であり幸福であると言う。 しかし、過去の賢者たちは、満たされて欲望を持つ必要のない充足した状態を幸福だと言う。 これは間違いかね。 カリクレス ...
哲学/思想

プラトンの『ゴルギアス』(3)カリクレス編・上

(2)のつづき <第三幕、対カリクレス戦(481c~507c)> カリクレス ちょっと待ってくれ、ソクラテス。 あなたはそれを本気で言っているのか?それとも何かの冗談か? われわれ人間の現実の生き方は、あな...
哲学/思想

プラトンの『ゴルギアス』(2)ポロス編

(1)のつづき ポロス どちらにしろ、独裁者のような力を持つ彼らを羨ましいとは思わないのですか? ソクラテス 惨めな人達に対しては、羨みではなく、憐れみが必要なのだ。 ポロス 憐れなのは、不正に死刑に...
哲学/思想

プラトンの『ゴルギアス』(1)ゴルギアス編

哲学者とソフィスト 「哲学者(フィロソファー)」は英語で「philo(愛)+sophy(知)+er(人)」、「ソフィスト」は「sophi(知)+ist(人)」です。 「哲学者」とは知を愛する者、「ソフィスト」は知の専門家(知識人)や...
芸術/メディア

アリストテレスの『詩学』(かんたん版)

創作の起源 本書の主題は「詩作」ですが、語義的にそれは芸術的な「創作」に近いものです。 アリストテレスはその創作の基本を物事の「再現(模倣、描写)」と考えます。 人間には生来的に再現を好む傾向があり、それは人々が実際の風景より精巧...
社会/政治

メイロウィッツの『場所感の喪失』第一部、メディアによる変化

第一章、メディアと行動 既存のメディア論の大半は、メッセージ内容を主題としたものであり、各メディア相互の差異やメディア自体が持つ可能性は見落とされています。 メッセージ内容ではなく、それを取り巻く状況や受け手の主体性からアプローチする新...
科学/自然

ユクスキュルの『生物から見た世界』(かんたん版)

生物によって違う感覚機能 生物はそれぞれ独自の感覚機能を持っています。 人間であればいわゆる五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)と呼ばれるものです。 当然、生物によってはその機能の数や種類や質が違い、人間と違って視覚や聴覚の無い生物も...
社会/政治

リースマンの『孤独な群集』三つの社会的性格

性格と社会 社会的性格(キャラクターの意)とは、「イタリア人は陽気、日本人は真面目、アメリカ人は実利的」などと言われるような、その社会の成員が一般的にもつ性格特性を表したものです。 社会的性格は、その社会が必要とする特性を獲得するように...