2019

社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(2)政体論・下

(1)のつづき 第八章、極悪非道な手段によって獲得された君主政体 極悪非道、残虐な手段によって君主になった者の生き方を考察してみると、そこに運(幸運)や他力依存の要素がほとんどない。 無数の困難と危機を...
社会/政治

マキアヴェリの『君主論』(1)政体論・上

第一章、君主政体の種類と獲得方法 あらゆる政体は共和政か君主政かどちらかである。 君主政体は、血統による世襲の政体か、新興の政体である。 領土を獲得する方法は、自己の軍備によるか他者の軍備によるか。 また、その獲...
人生/一般

偽善とは何か

偽善という言葉の難しさ 最近、「偽善」という言葉がやたらと使われます。 しかし、多くの場合、意味がない、あるいは適切でない文脈で使われているため、それはまったく生産的でない空虚な言葉になってしまっています。 そこで「偽善」という言葉の...
芸術/メディア

カタルシスとは何か

カタルシスの一般的な意味 「カタルシス」は主に「浄化」などと訳される言葉であり、元々は医学的な意味での不純物の排出、宗教的な意味での穢れの浄化、そしてプラトンにおける哲学的な意味での魂の浄化として使われていました。 ...
宗教/倫理

藤原基央の『カルマ』

運命の車輪 まずこの絵をよく見ていただきたいのですが、回転する車輪に人間がしがみつき、一番下には骸骨、その上に浮浪者、その上に一般人、その上に貴族が描かれています。 回転軸に紐が結ばれ、回転するようになっており、誰かが上がれ...
芸術/メディア

藤原基央の『天体観測』

BUMP OF CHICKEN 『天体観測』作詞・藤原基央 解説(仮説) 1.「午前二時 フミキリに 望遠鏡を担いでった」 踏み切りで向かい合う男女、それを遮る列車の流れ、みたいなシーンはよくあ...
哲学/思想

和辻哲郎の『風土』(かんたん版)

存在は時間から生まれる 私たちの目の前にあるものは、どのようにして存在するのでしょうか。 私の目の前の「美しい花」は、通勤で慌しく通り過ぎていく人にとっては「道路の背景」であり、田舎の子供にとっては「美味しい蜜が出る...
芸術/メディア

詩とは何か

はじめに ここで言う「詩」とは、「詩的なもの」という広い意味で使っています。 詩(詩的なもの)の良さがイマイチ分からない人に対して、ざっくりそれがどういうものなのかを簡単に説明することが目的です。 詩的...
芸術/メディア

アリストテレスの『詩学』(3)~最終章迄

(2)のつづき 第十六章、認知の種類 1.印による認知。生まれつきのあざや傷や刻印、首飾り等の外的標識。技法としては稚拙だが、逆転を伴うような場合(例、変装したオデュッセウスの足を洗う侍女がかつての乳母で...
芸術/メディア

アリストテレスの『詩学』(2)~第十五章迄

(1)のつづき 第九章、詩(創作)と歴史の違い、その普遍性、驚きの要素 詩人(創作家)は、歴史家のように既に起こった出来事を語るのではなく、起こるであろうような出来事、もっともらしく必然的な仕方で起こる可...
芸術/メディア

アリストテレスの『詩学』(1)~第八章迄

※本書は『詩学』というタイトルですが、内容は悲劇論、特にソポクレスの『オイディプス王』論であるため、事前にあらすじ(wikipedia)だけでも読んでおいて下さい。 第一章、詩作と再現、再現の媒体 詩作(創作)は...
芸術/メディア

プロップの『昔話の形態学』

形態学と構造主義 ここでいう「形態学」とは、概ね各個体が持つ形態の多様性の中から、それらに共通する基本的な原型のようなものを抽出し、すべての個体をその原型のメタモルフォーゼ(変形)として考えるものです。 プロップ自身...
人生/一般

相田みつをの『人間だもの』

はじめに まず本書のエッセイ部分の内容を中心に相田の思想を見ていき、最後に詩を少し紹介します。 にんげんだもの 相田みつをの人間の定義とは「弱さ」です。 偽り、欲深く、躓き、迷い、苦しみ、誤る、弱...
社会/政治

和辻哲郎の『風土』(4)日本の風土

(3)のつづき <第三章、モンスーン的風土の特殊形態、日本> 台風的性格 日本はモンスーン的な受容性と忍従性の中にありながら、日本的な特徴である「台風的性格」を持っています。 他の地域にお...
社会/政治

和辻哲郎の『風土』(3)風土の類型

(2)のつづき <第二章、三つの類型> 風土の類型 和辻は風土の類型として三つのもの「モンスーン」「砂漠」「牧場」を挙げます。 さらにモンスーンの詳細として中国と日本を考察します(字数の都...
哲学/思想

和辻哲郎の『風土』(2)人間の理論

(1)のつづき <第一章、風土の基礎理論~第二節、人間存在の風土的規定> 人間存在の二重性 風土という現象において人間は己を見出すわけですが、今度はその人間に焦点を当て、考察します。 ...
哲学/思想

和辻哲郎の『風土』(1)風土の理論

<第一章、風土の基礎理論~第一節、風土の現象> 風土の概念 ここでいう「風土」というのは、その土地の気候、気象、地質、地形、景観などの総称であり、人間を取り巻く環境や自然全般を指します。 普通に「自然」...
芸術/メディア

グリーンバーグのメディウム・スペシフィシティ(2)

(1)のつづき 『さらに新たなるラオコオンに向かって』 序、 いま(年)声高に芸術の純粋性を主張する者たちの態度、すなわち絵画における抽象性やモチーフを離れた非対象への志向性は、決して独断的でカルト...
芸術/メディア

グリーンバーグのメディウム・スペシフィシティ(1)

語の意味 「メディウムスペシフィシティ(媒体特殊性)」とは、その媒体の本質的な特性を示す概念です。 メディウム(ミディアム、medium)は、なんらかのものの間にある中間項として、それらを媒介する媒体物を指します...
宗教/倫理

ルターの『キリスト者の自由』(かんたん版)

背景 16世紀にローマ・カトリック教会で起きたキリスト教改革運動の代表となる者がマルティン・ルターです。 ローマ・カトリック教会は、教皇を頂点とした中央集権的な教会組織のヒエラルキーによって、キリスト教界を合理的に統率します。 しかし...
宗教/倫理

ルターの『キリスト者の自由』

一、 キリスト者とは何であり、彼らにキリストが与えた自由とは何か。 「キリスト者は全てもののも上に立つ自由な主人であり、何人にも従属しない」 「キリスト者は全てものに奉仕する従僕であり、何人にも従属する」 この二原則はパウロの論述か...
人生/一般

スマイルズの『西国立志編(自助論)』 (4)模範と人格

(3)のつづき 第十二章、模範(モデル) 人間の模範は言葉を使わない実践の教師であり、行動による教示は言葉のそれより遥かに説得力があります。 人間は耳で聴くる情報より、目で見る情報の方が比較にならないほ...
人生/一般

スマイルズの『西国立志編(自助論)』 (3)自己修練と倹約

(2)のつづき 第十章、お金の力 お金というものは、それ自体は尊くも卑しくもない、単なる道具です。 使い方次第で、その人や人生を良くも悪くもします。 お金の使い方はその人の人格の現れであり、お金の問題は人間の問題です...
人生/一般

スマイルズの『西国立志編(自助論)』 (2)勇気と実践

(1)のつづき 第六章、仕事と創造 何らかの目的を達成しようと意を決したなら、起床から就床まで、全身全霊をそこに傾けねばなりません。 たとえ天賦の才や幸運を持っていても、努力によってそれを保持し磨かなけ...
人生/一般

スマイルズの『西国立志編(自助論)』 (1)自助の精神

はじめに 本書は成功者の偉人伝と、それを事例として導き出した成功のための一般則(理論)の、二つの文章から構成されています。 本項では後者の理論にスポットをあてているため、全十三章のうち、本質的な理解にあまり影響が無い...
社会/政治

シラーの遊戯論と美的社会

美の定義 シラーにとって美の定義とは、「現象における自由」です。 現れにおいて自由な姿をしているものが、私たちに美と観じられるということです。 対象である自然(ネイチャー)が自然(ナチュラル)にその自在性を現わすとき、それは自由な戯れ...
心理/精神

マルクーゼの『エロス的文明』

<第一部、現実原則の支配の下に> 文化とは性欲望の抑圧 フロイトは、人間の文化というものが、人間の自然(本能的)に持っている欲望(主に性的なもの)を抑圧することによって生ずるものだと言います。 もし、本能のままに人間が生きれば、そ...
社会/政治

アーノルドの『教養と無秩序』

社会の三つの階級 まず、アーノルドは当時のイギリス社会を三つの階級とその俗称とに分けます(本書は1869年刊行)。 1、「野蛮人である貴族階級」、頑固で愚鈍であり、領地で狩猟と野外活動にふける野蛮人のような人々。...
宗教/倫理

ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

プロテスタントと資本主義 本書のタイトル通り、近代資本主義を発展させたエートスが、プロテスタントの倫理を源泉として生じたというその成り立ちを描き出すことです。 「エートス」とは、ウェーバーが定式化した社会学的な概念で、その意味は「ある文...
科学/自然

ユクスキュルの『生物から見た世界』(完全版)

序章、環境と環世界 本書では、生物を単なる客体や反射に基づく機械として扱わず、環境の中にある固有の主体として扱います。 「生物から見た世界」の記述による、新しい生物学です。 それはコペルニクス的転回であったカントの主体の理論を、自然科...
芸術/メディア

カミュの『異邦人』(2)不条理の美

(1)のつづき 実存主義の美 今度は、「異邦人」に通底する美の問題について考えてみます。 世人から異邦人に転回したときに見えてくる、世界の美のあり様です。 分かりやすくするために、まず、条理を生きる世...
哲学/思想

カミュの『異邦人』(1)条理への反抗

あらすじ 主人公ムルソーは母の葬儀のために養老院を訪れます。 その態度は淡々としており、涙を見せることもありません。 葬儀の翌日、知人の女性と喜劇映画を観に行き、関係を持ちます。 そうして何事もなかったかのように...
哲学/思想

カミュの『不条理の論証』(4)不条理な自由

(3)のつづき <第四章、不条理な自由> 反抗という不断の革命 私はこの唯一明証的だと思われる不条理を保持し、生きていかねばなりません。 不条理の断絶を維持していくためには、絶えざる緊張感...
哲学/思想

カミュの『不条理の論証』(3)哲学上の自殺

(2)のつづき <第三章、哲学上の自殺> 不条理の本質 ここまでは不条理をその外側から分析してきましたが、今度は直接的な分析によってこの観念の意味内実を探ります。 「不条理性」というのは単独の経験...
哲学/思想

カミュの『不条理の論証』(2)不条理な壁

(1)のつづき <第二章、不条理な壁> 不条理の感情 深い感情というものは、その人の思考や行為や些細な習慣の中にまで現れ、その人の中にひとつの世界観(小宇宙)というものを作り出します。 嫉妬の宇宙...