樽の中のネコデゲス

哲学/思想

パースのプラグマティズム(1)

プラグマティズムとは プラグマティズムはアメリカを代表する哲学であり、チャールズ・サンダース・パースがその創始者です。 一般的な「プラグマティズム」という言葉は、アメリカ人特有の単なる実利重視の「実用主義」と考えられています。 しかし...
人生/一般

逃げとは何か

逃げちゃダメ? 他人に対して「逃げるな」と言ったり、自分に対して「逃げちゃダメだ」と言ったり、人間は非常に逃げることに対して敏感です。 動物は危険や面倒を察知すれば躊躇なく逃げますが、人間には妙な自尊心や、漫画のヒーローのように危険や面...
哲学/思想

パースのアブダクション

三つの推論形式 チャールズ・サンダース・パースは、伝統的な推論の形式、科学的手続きである「インダクション(帰納法)」「ディダクション(演繹法)」に対し、もう一つの形式「アブダクション」を加えることを提唱します。 帰納法(インダクション)...
哲学/思想

ジェームズの『信じる意志』(かんたん版)

信じるべきか疑うべきか 本書の主題は、信じるべき(信仰)か疑うべき(懐疑)か、という問いです。 純粋に知的な問題であれば、目の前の選択肢のどちらを選ぶべきか(信じるべきか)を、充分な証拠が得られるまで疑い、確証を得た上で、そちらを信じれ...
哲学/思想

ジェームズの『信じる意志』(2)

(1)のつづき 第八章、科学的問題 所信の選択において、感情の影響は不可避であると同時に、合法的な決定因です。 所信の選択の最も基本的な最初の段階で、前章で述べた「真理を獲得する」か「誤謬を避ける」かという感情的な影響があります。 ...
哲学/思想

ジェームズの『信じる意志』(1)

はじめに 『信じる意志』は、イギリスの数学者、哲学者であるクリフォードの原理「十分な証拠なしに何かを信じることは不道徳である」に対する批判として為された講演です。 極端な科学的、実証主義的な懐疑から、道徳的信念や宗教的信仰を護るためのも...
芸術/メディア

アルンハイムの『芸術としての映画』(1)映画の限界

第一章、映画とリアリティ 1.本章の目的 写真や映画は機械的なリアリティの再現にすぎず、芸術になることはできないと、人々は言います(1933年当時)。 この見解に対し反論することによって、映画芸術の本質を明らかにすることが目的です。 ...
人生/一般

自己成就的予言(かんたん版)

自己成就的予言とは 自己成就的予言(自己実現的予言)とは、「予言が結果として事実になってしまう」という社会学的な法則の事を指しています。 なぜ、そういう事が生じるかと言うと、予言が予言に従った行為を生じさせるので、その行為が予言を現実化...
社会/政治

マートンの自己成就的予言

トーマスの公理 社会学者ウィリアム・アイザック・トーマス(1863-1947)が述べた以下の公理は、社会の動きを理解するために重要です。 「もし、人がある状況をリアル(真実、現実)であると定義すれば、それは結果においてもリアルである」 ...
芸術/メディア

バザンの『存在論と言語(映画とは何か)』

はじめに 本頁は、アンドレ・バザンの主著である『映画とは何か-全四巻-』のうち、映画理論を集めた第一巻『存在論と言語』を簡潔にまとめたものです。 最も重要な三つの論文「写真映像の存在論」「映画言語の進化」「禁じられたモンタージュ」を扱い...
芸術/メディア

CGの本質と限界

画材の本質 「あるメディア(メディウム)の本質は、そのメディア(メディウム)の限界に一致する」というのが、絵画の特質を深く考察したグリーンバーグの説です。 よく仏教の坊さんが言うように、「短所と長所は同じものを別の面から見たもの」という...
芸術/メディア

絵の上手さの種類

絵の上手さの分類 絵が上手いと言っても、色々な上手さがあります(注1)。 同じ運動能力と言っても、筋力と瞬発力の最大化を目指すウエイトリフティングと、心肺機能と持久力の最大化を目指すマラソンでは、まったく異なるのと同様です。 目的とな...
芸術/メディア

フォーマリズムとは何か(映画)

はじめに フォーマリズムとは日本語で「形式主義」です。 これは、形式(容れ物)と内容(中身)の対概念のうち、形式の方を重視する考え方です。 例えば、以前取り上げたグリーンバーグは絵画におけるフォーマリズムであり、マクルーハンの「メディ...
人生/一般

完璧主義とは何か

完璧主義者と真の完璧主義者 社会心理学者のエーリッヒ・フロムは、完璧主義に陥った人に対し、真の完璧主義者とは完璧を放棄できる人の事だ、と教え諭します。 真の完璧とは完璧の放棄、という矛盾した言葉ですが、この場合、前者は本質的な目的に対す...
心理/精神

ラザルスの『ストレスの心理学』(2)対処編

(1)のつづき 第五章、対処の概念 ーー 第六章、対処のプロセス 第一節、対処の定義 プロセスとしての「対処」とは、自分の力を超えるような環境(外部)および自身(内部)の双方(あるいは一方)からの強制的圧力が生じた際、それを適切に...
人生/一般

失敗とは何か

失敗とは 成功とは、ある目的に向けた行為が達成されることです。 失敗とは、その成功の反対で、達成できないという事態を指しています。 人間の行為はほぼすべて、ある目的に向けた行為によって構成されています。 散歩や遊びのような無目的に見...
人生/一般

災厄とは何か

人生停止スイッチ 長い人生、様々な災厄が降りかかってきます。 もし、アンドロイドのように脇腹のハッチを開ければ生命活動を停止するスイッチがあり、指先ひとつで簡単に人生を停止できたとしたなら、心の繊細な日本人の人口は半分くらいになってしま...
人生/一般

後悔とは何か

なぜ後悔するのか 「後悔」とは後になって悔いることですが、基本的にネガティブな意味で使われます。 ポジティブな場合は「反省」として、前進や学びのための糧としての悔いとなります。 例えば、過去に為した窃盗を後悔し、謝罪に行き被害弁償すれ...
人生/一般

教養とは何か

善し悪しの基準 基本的の物事に優劣をつけるためには、その評価のためのある特定の基準が必要です。 物事に固定した優劣はなく、基準によって善いものであったり、悪いものであったりします。 そのもの自体はただの素材であり、善いも悪いもありませ...
芸術/メディア

美とは何か

はじめに ここで述べるのは、一番ふつうの「美」についてです。 基本の基としての美で、難しい芸術論ではなく、普通の人向けのものです。 たとえ話 昔、あるお茶の先生が弟子に対し、路地を掃除するよう言い付けました。 そして、綺麗に掃除を...
人生/一般

感情とは何か

感情のメロディー 経験が少ない人の感情は比較的単純なものが多く、例えば、小さな子供の喜怒哀楽には、幼稚園児が叩くカスタネットの単独音のような、聴きとりやすい明快さがあります。 しかし、人は経験を積めば積むほど感情も複雑になり、まるでひと...
人生/一般

真実とは何か

真実なき時代 誰でも簡単に嘘を吐くこと(作ること及び流布すること)が技術的に可能になり、平気で嘘を吐くことが平均的なモラルとなり、反対に誰でも簡単に嘘を暴くことが技術的に可能になり、嘘を暴く暴露趣味で心を満たすことが流行りになっています。...
心理/精神

ラザルスの『ストレスの心理学』(1)認知的評価

第一章、ストレスの概念 ーー 第二章、認知的評価 一節、評価概念の必要性 環境からの刺激に対する人々の解釈は異なり、その反応の仕方には、個人差やグループ差があります。 ある侮辱行為に対し、怒るか、気にしないか、憂鬱になるか等の反応...
人生/一般

幸福とは何か

幸福とは何か 幸福の何であるかは人それぞれなので、「幸福とは何か」などという一般(普遍)的な問いを発しても、答えは出ません。 けれど、幸福を抽出する一般(普遍)的な「方法」はあります。 自分の幸福(人それぞれの幸福)を自分で明確に把握...
哲学/思想

ロックの『市民政府論』(かんたん版)

自然状態 人間は、自然本来の状態においては、完全に自由で、他人の意志ではなく自分の意志で行動を決定し、自分の生命と身体と財産を扱います。 同一クラスの被造物(人類)である人間は、万人が平等な権力、権限を持ち、主従の関係のない状態にありま...
哲学/思想

ロックの『市民政府論(統治論第二論)』(6)

(5)のつづき 第十七章、簒奪について 197-198 ーー 第十八章、暴政について 199 簒奪は、他人が持つ正当な権利を横取りし、その権力を行使することです。 暴政は、権利を超えて権力を行使することです。 暴政はこの権力...
人生/一般

不安とは何か

不安の意味 ある言葉の意味を考える際、反対の言葉や類似の言葉との比較によって明確にすることが有効です。 「不安」という言葉の対義語は、「安心」です。 第一に不安とは、安心でない不安定な状態を指しています。 「不安」に一番似た...
哲学/思想

ロックの『市民政府論(統治論第二論)』(5)

(4)のつづき 第十四章、大権について 159 立法権力と執行権力が別の者に委ねられている統治形態では、法の不備を補うために、公益という基本原理に基づき、様々な事柄が執行権力の思慮分別に任されることになります。 法が予見できない事例...
人生/一般

天才とは何か

天才の反対は凡人ではない 多くの場合、「天才」の反対は「凡人(凡才)」だと考えられています。 また、「天才」が、先天的な天賦の才能によって、優れた能力を発揮する者であるのに対し、「秀才」は、凡才が後天的な努力によって優れた能力を獲得した...
人生/一般

怒りとは何か

防衛反応としての怒り 動物を観察すると、基本的に「怒り」とは、生命の危険に対する防衛反応だと理解できます。 ただ、人間は理性(心)を持ったより複雑な動物であり、その情動も心身両面で考察する必要があります。 そして、私的報復を禁じ、代わ...
哲学/思想

ロックの『市民政府論(統治論第二論)』(4)

(3)のつづき 第十一章、立法権力の範囲について 134 立法権力は政治共同体の最高権力であり、それ以外のいかなる者の命令も、公的に選ばれ任命された立法部の承認なしには、法としての効力も拘束力ももちません。 法律を制定するための絶対...
人生/一般

正直とは何か

正直と嘘 子供の頃は皆、大人に「正直であれ」と言い聞かされます。 しかし、大人になると、「正直者は馬鹿を見る(損をする)」ことが分かり、多くの人が正直であることを止めていきます。 むしろ社会の中で生きていく際に、正直を止めることを推奨...
人生/一般

騙される原因と対処法

はじめに 日常では、「騙された」と主張する人と「騙していない」と主張する人の間の諍いが絶えません。 対立が生じる場所には、何らかの矛盾があると考え、それを明らかにすることが、理性による仲裁方法です。 この「騙される」とは、どういうこと...
人生/一般

名前とは何か

名前=存在 事物の存在というものは、基本的にそれに名前を付けることによってはじめて成立します。 なにかある事物が発見された瞬間、個人の頭の中や公けの文書の中などに、必ずそれは言葉として、何らかの形で記されます。 私が認識する「世界」と...
哲学/思想

ロックの『市民政府論(統治論第二論)』(3)

(2)のつづき 第八章、政治社会の起源について 95 生来的に自由で平等である人間が自然状態を脱し政治共同体に属するのは、己の合意によってのみであり、同意なしに他者の政治権力に服することはありません。 そして、合意によって結合した一...