宗教/倫理ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 プロテスタントと資本主義 本書のタイトル通り、近代資本主義を発展させたエートスが、プロテスタントの倫理を源泉として生じたというその成り立ちを描き出すことです。 「エートス」とは、ウェーバーが定式化した社会学的な概念で、その意味は「ある文... 2019.03.09宗教/倫理社会/政治
哲学/思想ユクスキュルの『生物から見た世界』(完全版) 序章、環境と環世界 本書では、生物を単なる客体や反射に基づく機械として扱わず、環境の中にある固有の主体として扱います。 「生物から見た世界」の記述による、新しい生物学です。 それはコペルニクス的転回であったカントの主体の理論を、自然科... 2019.03.02哲学/思想科学/自然
哲学/思想カミュの『異邦人』(2)不条理の美 (1)のつづき 実存主義の美 今度は、「異邦人」に通底する美の問題について考えてみます。 世人から異邦人に転回したときに見えてくる、世界の美のあり様です。 分かりやすくするために、まず、条理を生きる世人と、不条理を生きる異邦... 2019.02.28哲学/思想芸術/メディア
哲学/思想カミュの『異邦人』(1)条理への反抗 あらすじ 主人公ムルソーは母の葬儀のために養老院を訪れます。 その態度は淡々としており、涙を見せることもありません。 葬儀の翌日、知人の女性と喜劇映画を観に行き、関係を持ちます。 そうして何事もなかったかのように日常に戻りますが、友... 2019.02.26哲学/思想
哲学/思想カミュの『不条理の論証』(4)不条理な自由 (3)のつづき <第四章、不条理な自由> 反抗という不断の革命 私はこの唯一明証的だと思われる不条理を保持し、生きていかねばなりません。 不条理の断絶を維持していくためには、絶えざる緊張感... 2019.02.24哲学/思想
哲学/思想カミュの『不条理の論証』(3)哲学上の自殺 (2)のつづき <第三章、哲学上の自殺> 不条理の本質 ここまでは不条理をその外側から分析してきましたが、今度は直接的な分析によってこの観念の意味内実を探ります。 「不条理性」というのは単独の経験... 2019.02.22哲学/思想
哲学/思想カミュの『不条理の論証』(2)不条理な壁 (1)のつづき <第二章、不条理な壁> 不条理の感情 深い感情というものは、その人の思考や行為や些細な習慣の中にまで現れ、その人の中にひとつの世界観(小宇宙)というものを作り出します。 嫉妬の宇宙... 2019.02.20哲学/思想
哲学/思想カミュの『不条理の論証』(1)不条理と自殺 <第一章、不条理と自殺> 自殺の考察 哲学上の重大問題は自殺のみです。 人が生きるべきか死ぬべきかの根本問題に尽きます。 また、同時に哲学者は自分の身をもって自身の哲学を体現しなければ嘘になります。 ... 2019.02.18哲学/思想
人生/一般虚無感とは何か 虚無感 ある休日、長い昼寝をしてしまって日暮れ過ぎに起きた時、理由も分からない虚無感や不安に襲われることがあります。 そんな日常のほんの些細な出来事や瞬間に訪れるこの虚無感の正体とは一体なんでしょうか。 ... 2019.02.16人生/一般
人生/一般セネカの『人生の短さについて』 一、人生は使い方次第で、長くも短くもなる 多くの人は人生が短いと嘆く。 何の準備も整わないうちに、人は召される。 偉大な人(ヒポクラテス)も「人生は短く、学は長い」と言う。 しかし、私たちに与えられた人生の時間は十分に長く、偉大... 2019.02.12人生/一般
心理/精神デシの『人を伸ばす力』 第一章、権威と不服従 自律と統制 社会は個人の安全や自由などの保障と引き換えに、人々に統制を求めます。 しかし、権威に頼る統制では、様々な問題が起こってきます。 強制的な統制の前に、そもそもなぜ人々は非行や犯罪等の逸脱行動、社会的に... 2019.02.02心理/精神
哲学/思想パスカルの『パンセ』 人間は考える葦である 本書の趣旨は、あの有名な「人間は考える葦である」という言葉に集約されています。 この言葉の後には以下のような意味のことが述べられます。 人間は吹けば飛ぶような一本の葦のように弱い存在であり、宇宙に比すれば無に等し... 2019.01.12哲学/思想
人生/一般ディオゲネスのシニシズム キュニコス学派 ソクラテスの弟子のうち、有名なプラトンとクセノフォンを除いた一派を小ソクラテス派といい、その中のひとつがキュニコス派です。 キュニコスとは「犬のような人」という意味で、その野良犬のような生き方に由来し、キュニコスの英語c... 2019.01.09人生/一般
人生/一般差別とは何か 差別の二つの類型 誰もが簡単に自分の意見を述べられる時代、誰もが自分を被差別者だと訴えます。 それによって本当の差別が覆い隠され、見えにくくなっているのが現状です。 そこで少し差別というものの本質や定義を、もう一度見返す必要がありそう... 2019.01.07人生/一般
哲学/思想フーコーの『知への意志(性の歴史)』 抑圧の仮説 近代西欧における性の問題を語る際に通説となっているものが、「性の抑圧仮説」です。 17世紀以降、性というものの抑圧がはじまり、性的なことを口に出すこともはばかれるような時代が生じたとされます(典型がヴィクトリア朝... 2019.01.03哲学/思想社会/政治
人生/一般ジェームズ・アレンの『原因と結果の法則』 <第一章、思考と人格> 「人は自分が思っているとおりのものになる」 自分の人格は自分の思考の完全な帰結です。 思考は種であり、行動はその花です。 無意識的(計画的でない)行動から、意識的(計画的)な行動まですべてです。 そしてその... 2018.12.26人生/一般心理/精神
哲学/思想フーコーの『言葉と物』(3)近代のエピステーメー (2)のつづき 近代のエピステーメー 言葉と物が混在していた中世「類似」のエピステーメー、言葉と物が分離した古典主義時代「表象」のエピステーメーにつづき、分離した言葉と物の間に入り込んできた近代「人間」のエピステ... 2018.12.23哲学/思想
哲学/思想フーコーの『言葉と物』(2)古典主義時代のエピステーメー (1)のつづき 古典主義時代のエピステーメー 古典主義時代のエピステーメーは、同一性と相違性をベースとした比較によって、事物の秩序を形成することです。 類似のエピステーメーは事物が他の事物と連結する入れ子状の立... 2018.12.22哲学/思想
哲学/思想フーコーの『言葉と物』(1)中世のエピステーメー エピステーメー(思考の枠組み) 世界の思想史を概観すると、ある場所、ある時代内において共通する思考の枠組みというものがあります。 私は自由に思考し行動する主体的人間だと思い込んでいますが、実際は私の考えは事前にその場所その時... 2018.12.20哲学/思想
社会/政治フーコーの『監獄の誕生』(2)パノプティコン (1)のつづき 規律(ディシプリン) この監獄システムの本質である規格化を支える管理の方法が「ディシプリン(規律)」です。 ディシプリンとは、身体を詳細に管理することにより、従順な人間(=機械)を作り出す技術で... 2018.12.13社会/政治
社会/政治フーコーの『監獄の誕生』(1)処罰の歴史 近代化される処罰の形式 本書においてまず、近代的な監獄制度が誕生するまでの三つの処罰の形式が描かれます。 第一に君主権力における身体刑、第二に社会的に一般化される処罰、第三に管理装置としての監獄制です。 以下、それ... 2018.12.10社会/政治
人生/一般自由とは何か 自由意志 哲学においてもっとも雄弁に語られる自由は、サルトルに代表される実存主義的自由です。 古くはローマ皇帝マルクス・アウレリウスの指導理性から、スティーブン・コヴィーのような現代のハウツー本まで、その自由は変わることなく... 2018.12.04人生/一般
哲学/思想バークリーの『人知原理論』序論 ※訳語は主に『人知原理論』宮武昭訳 ちくま学芸文庫 によります。 序論(1~25節) 1、人は哲学的に深く思惟すればするほど、困難と矛盾に引きこまれ、懐疑主義におちいる。 2、有限な人間精神で無限な世界を理解しよう... 2018.12.01哲学/思想
心理/精神フーコーの『狂気の歴史』心理学の誕生 知の考古学者 私たちにとって当たり前すぎて省みられることすらないものの隠れた前提や、その生成の歴史を明らかにすることが、フーコーの目的です。 考古学者のような手際で、隠れたものを推理し、今は見えない過去を発掘していきます。 ... 2018.11.27心理/精神社会/政治
人生/一般スティーブン・コヴィーの『七つの習慣』個人編 <七つの習慣とは> 物の観方を変える 基本的にその人のあり方や世界のあり方は、その人自身の物の見方(観点や思考の枠組)に事前に既定されています。 コップに半分入ったお酒を、「まだ半分もある」とポジティブにとらえ酒宴を楽しめる人と、「も... 2018.10.26人生/一般経済/ビジネス
哲学/思想ニーチェの系譜学 真理と歴史の正統性 普通、事物には正しい起源(はじまり・出自)や本質(何であるか・本性)が存在し、それを理性により探究するのが学問の使命であり、そこで発見されるものが真理であると考えられています。 あらゆる事物が私たちの前に... 2018.10.23哲学/思想
哲学/思想メルロ=ポンティの『幼児の対人関係』(3)人格特性 (2)のつづき ねたみと共感 幼児に特有の人格特性も、この自他の癒合性から自他の分別を伴う客観空間の確立までの成長途上において見られる現象です。 「ねたみ」は、本質的に自分と他人の混同です。 他人が到達し... 2018.10.12哲学/思想
哲学/思想メルロ=ポンティの『幼児の対人関係』(2)鏡の中の世界 (1)のつづき 鏡像の実在性 鏡像という象徴を通して客観空間というものを確立しても、自他の癒着した全体性の空間(身体図式)は破棄されるわけではありません。 それは客観空間という図を浮かび上がらせる地として、私た... 2018.09.29哲学/思想
哲学/思想メルロ=ポンティの『幼児の対人関係』(1)身体図式 幼児における他人知覚 古典的な心理学においては、心的作用や感覚が、当人のみに与えられた個人的なものだと考えられていました。 私の本心はあなたには分からないし、私が感覚している赤とあなたが感覚している赤が同じものであると測る方... 2018.09.25哲学/思想
哲学/思想実存主義とは何か 実存の定義 「実存」とは現実存在や事実存在の省略です。 哲学史的に「事実存在」というのは「本質存在」の対概念として使われます。 「事実存在」とは、現実の事実としてリアルに存在するもの「~が・ある」。 「本質存在」とは、それがどうい... 2018.09.22哲学/思想
哲学/思想キルケゴールの『死にいたる病』 本書のねらい 日常を無反省に生きる人々にその絶望の状態を気付かせ、キリスト者への目覚め(希望)をうながすために書かれたものです。 本書の下巻として構想された『キリスト教の修練』につなげるための準備として、徹底的な現状把握をおこないます。... 2018.09.17哲学/思想宗教/倫理
哲学/思想スピノザの『エチカ(倫理学)』(4)倫理 (3)のつづき 他者とつながるその倫理 一般的な倫理では、受動感情や欲望を理性によって無きものにし解決しようとするわけですが、そもそもそんなことは元から無理なのです。 人間は常に環境の中で生きその影響を受ける受... 2018.09.13哲学/思想
哲学/思想スピノザの『エチカ(倫理学)』(3)感情 (2)のつづき 感情の三要素 ものが動くことや、存在が自己の存在を維持しようと努めることなど、世界を動かしている根源的な活動力を、スピノザは「コナトゥス」と名付けます。 「存在そのもの」という概念が、それ以上遡... 2018.09.06哲学/思想
哲学/思想スピノザの『エチカ(倫理学)』(2)精神と認識 (1)のつづき 真理観 現実のすべてが必然の連鎖であるのなら、平行論的に、それに伴う観念もすべて真なる観念となります。 では、偽なる観念とは、一体何なのでしょうか。 それは人間精神が、不可能なもの(ありえない... 2018.09.03哲学/思想
芸術/メディア創作におけるオリジナルとは何か 問題設定 本頁では、創作活動に必ずついてまわる、オリジナルとコピーの問題を扱います。 創作においては独創的であることやオリジナルであることに大きな価値が置かれるわけですが、果たしてそれは本当に大切なことなのでしょうか。 また、オリジナ... 2018.08.13芸術/メディア