樽の中のネコデゲス

哲学/思想

レヴィ=ストロースの構造主義(2)親族の構造

(1)のつづき 野生の合理性-インセストタブー 芸術的直感のような不合理なものも、隠れた構造によって規定されているように、私たちが理性的に劣った者として見るいわゆる「未開人」の文化にも、合理的な構造が隠れています。 例えばインセス...
哲学/思想

レヴィ=ストロースの構造主義(1)物語の構造

不合理の合理性 私たち現代人は発達した技術社会と文化の中におり、理性的で合理的なものを基礎とする創造的な営みをとおして社会を維持していると考えています。 だから未開社会の非合理で非理性的な文化を発達遅滞の劣ったものと見下し、呪術や魔術な...
人生/一般

自己満足とは何か

はじめに 最近、「自己満足」という言葉がやたらと使われます。 しかし、多くの場合、適切でない文脈で使われているため、何を言っているのかよく分からないことがあります。 そこで、少し「自己満足」ということばの意味を考えたいと思います。 ...
哲学/思想

フッサールの現象学(2)

(1)のつづき 基本の構造 前項でみた志向性や現出-現出者の関係は、私たちの世界のとらえ方のすべてを基礎付けています(注:「現出」は「射影」ともいいます)。 現出A「ドイツ皇帝」も現出B「フリードリヒ三世の息子」も現出C「ヴィクト...
哲学/思想

フッサールの現象学(1)

現象学の目的 現象学の目的は、私たちの目の前にあらわれる現象が一体どういう構造のもとで成立しているのかを解明することです。 それに先立って、捨てていただきたいひとつの先入観があります。 それは、まずはじめに世界(事物)...
哲学/思想

フッサールの『危機』

ヨーロッパの諸学の危機 19世紀後半にもなると、実証科学的世界観が西洋を覆い、独占的ともいえる繁栄をもたらします。 客観性や事実に依拠する実証的な学問には、確かな実りを与えてくれる大きな魅力があります。 しかしその反面、そ...
哲学/思想

相対主義とは何か(2)

(1)のつづき 相対主義と絶対主義 私たちが好きな色を訊かれて答えるとき、基本的にすべての色(赤、青、黄、緑…)を知った上で答えます。 だから仮に私は「赤」が好きだとしても、「青」の好きな人や「黄色」を好きな人...
社会/政治

マルクスの『資本論』

第一章、商品の成立 使用価値と交換価値 使用価値とはその名の通り、何らかの物を使用する際の具体的な有用性の価値です。 パンは食べて栄養にするものであり、レコードは音楽を聴いて慰安をえるための物です。 交換価値とは、それが社会的な...
芸術/メディア

ブリコラージュとは何か

ブリコラージュとは ブリコラージュとは器用仕事、寄集め細工などという意味の言葉です。 文化人類学者のレヴィ=ストロースが、近代の合理主義的思考に対抗するものとして提示した「野生の思考」です。 一見、不合理に見えるが合理主義よりも合理的...
社会/政治

ミルの『自由論』

自由と個性と多様性 イギリス経験論の系譜にあるミルは、ベーコン同様帰納法への信頼と自然の摂理への畏敬の念が色濃く見えます。 人間観においてもそれが強く反映されており、自然の生物が自らの自性を発揮する面目躍如とする様が、自由と...
社会/政治

ベンサムの最大多数の最大幸福

道徳科学とその基準 ニュートン物理学の歴史的な成功の時代にあり、その普遍的で客観的な科学観の影響を受けて、主観的で感覚的なものに拠ることの多かった道徳や法などの倫理的基準にも客観性をもたせることを目指します(ニュートンもベンサムも同じイギ...
人生/一般

オバケとは何か

オバケの棲み処 オバケの小説で有名な泉鏡花の作品に出てくる悪左衛門という魔物が、人間に対して面白いことを言います。 オバケは人間の瞬く間を棲処とするので、人間には気付かれないという主旨です。 人間が目を閉じている間だけ存在するとも...
社会/政治

フロムの『自由からの逃走』(2)権威の社会学

(1)のつづき 個性化の過程 人間は生れ落ちてしばらくの間は、自分の身体と環境の間に境界を設けない、未分化の状態にあります。 そこから徐々に私と母の区別や父や他者の登場、私の鏡像などとの出会いを通じて、「自我」...
心理/精神

フロムの『自由からの逃走』(1)権威の心理学

内在化される権威システム 強力な権威というものは、被支配者を外的な力によって隷属させるだけでなく、権威を無意識にまで内在化させることによって、内と外から強力な二重の鎖で支配します。 外的な力のみで他者を支配しようとすれば...
哲学/思想

カントの定言命法

定言命法と仮言命法 カント倫理学の中心となる概念です。 倫理的問題をあつかう際に、行為の結果を基準にする「結果説」(功利主義やプラグマティズムなど)と、行為に先立つ原因としての動機を基準にする「動機説」がありますが、カントの倫理観は典型...
社会/政治

オルテガの『大衆の反逆』

オルテガによる大衆の定義 これはいわゆる政治・経済的な意味での大衆(経済力や社会的地位の階層的なピラミッドの中・下層を占める多数者)を指すものではなく、「生き方」としての大衆を指す哲学的概念です。 主体性をもたず、ただ人間集団の数の力や...
哲学/思想

フォイエルバッハの『キリスト教の本質』

人間の本質 あらゆる動物の中で宗教を持つのは人間だけです。 そうであるならそれは人間の根本的な特別な性質、いわゆる本質に基づき生じたものであるはずです。 通俗的に人間の本質として「意識」がよく挙げられますが、他の動物の行動...
社会/政治

ルソーの『社会契約論』

社会契約 まだ社会共同体のない自然状態にいる人間を想像してみましょう。 ひとりで自然と闘い日々の糧を得、生活環境を作り、天災などのアクシデントに対する安全の保障もない不安定な状態で生きることになります。 また、他者からの暴力や略奪に対...
科学/自然

ベーコンの『ノヴム・オルガヌム(新機関)』

帰納と演繹 無人島に無知な少年がひとり置き去りにされてしまったとします。 自分より大きなものは水に沈み小さなものは浮くと考えるほど未熟な知性です。 その少年が、海にスギの巨木が倒れ浮かぶのを見、さらに後日サクラの木が川を流れているのを...
心理/精神

スキナーの心理学

オペラント条件付け 行動主義心理学の基礎となる理論です。 これは条件反射や刺激-反応関係という古典的な機械論的行動理論ではなく(古典的条件付けの項を参照)、あくまでも生物の自発的行動についての理論です。 オペラントはオペレートをもじっ...
哲学/思想

現象学とは何か

普通に言えば、私の目の前に現れる象(かたち)である「現象」の成り立ちを解明する学です。 しかし、実際的には「現象」優位の学と言ってもよいかもしれません。 普通は先ず世界に対象物「存在者」があって、それが光や音などを媒介して私の感覚器...
芸術/メディア

現代美術とは何か

わけの分からない現代美術 ここでいう現代美術とは美術史的な狭義のカテゴリーではなく、八百屋のおじさんが「現代美術はわけ分からん」と言う時の現代美術です。 リアルな描写や、美しい美人画や、光の印象が綺麗な風景画のように感性にうったえるもの...
哲学/思想

アリストテレスの形而上学(かんたん版)

※本頁の前に必ずプラトンのイデア論をお読みください。 形相(けいそう)と質料 理想(イデア)主義者プラトンに反し、その弟子であるアリストテレスは現実主義者です。 イデアが現実の個々のものを離れて存在するという師の考えを批判的に...
哲学/思想

プラトンのイデア論

注、本頁を読まれる前に必ずプラトンの弁証法の項をお読みになってください。 イデアと現象 「イデア(idea)」とは観念、理念、本質、理想などの意味をもつ語で、現在の「アイデア」の語源にもなっています。 それの対となるものが、目...
人生/一般

生きることの意味

第一章、行為の意味 生きることに意味はあるのか 生きるというのは死ぬまで続く日々の行為の連続です。 生きることの意味を問う前に、先ず行為の意味を考える必要があります。 行為の意味 そもそも、ある行為に意味があるとはどういうことでし...
心理/精神

マズローの人間性心理学

欲求段階説 人間の欲求は五段階のヒエラルキー状に構成され、低次階層の欲求が満たされると高次の階層の欲求に昇っていくというものです。 第一階層「生理的欲求」 生物学的な生命維持のために必要なものへの欲求の段階です。 呼吸や飲食や体...
人生/一般

マルクス・アウレリウスの『自省録』

自省録の概要 ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの哲学をいくつかの要素にまとめるとすれば、「世界をありのままに見、自然の摂理を受け入れ、自己の理性に従い、今この時を生きる」ということになるでしょうか。 徹底していることは、「現」に今ここに...
哲学/思想

ニーチェのアポロ的とディオニソス的

アポロ的とディオニソス的 ニーチェ哲学の基礎を形作った出来事として、若い頃のショーペンハウアー哲学への耽溺とその反動というものがあります。 先ずはショーペンハウアーの頁を読んでいただきたいのですが、それは世界の根源には混沌とした欲望...
哲学/思想

ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』(かんたん版)

意志と表象 様々な無数の事物が入り乱れる私たちの経験世界の根源に在るひとつのものを、ショーペンハウアーは「意志(生の意志)」と名付けます。 宇宙全体の生成をつかさどる根源的な生の力のようなものを指しています。 その根源的な一者が、...
芸術/メディア

ミニマリズムとは何か

ミニマリズムの公式 ミニマリズムの本質をうまく表現したものとして“Less is more.(より少ないことは、より豊かなことだ)”という建築家の言葉があります。 この言葉で重要なことは、「より少ないことは、より多くあることだ」と直訳さ...
心理/精神

ロジャーズの自己実現

あるがままの私 カール・ロジャーズは、様々な心の問題をひき起こす根本的な原因として、自己と他者(他人という意味ではなく自己でないもの全般)の間のバランスが崩れ、本来の主体である「あるがままの自己」がそれらに呑みこまれ見失われてしまうことに...
宗教/倫理

鈴木大拙の禅

二に分かれる前の一を見る 鈴木大拙のよき生徒であった現代音楽の巨匠ジョン・ケージは、巧みなイメージによってこの世界観を説明します。 私たちがぼんやり無数の星が瞬く夜空を見上げるとき、それはひとつの全体としての星々を見ています...
哲学/思想

パースのプラグマティズム(かんたん版)

プラグマティズム プラグマティズムはアメリカを代表する哲学であり、最も有名なのがウイリアム・ジェームズですが、そのジェイムズの哲学の元ネタになっているのが、チャールズ・サンダース・パースです。 プラグマティズムを直訳すれば、実用主義です...
芸術/メディア

エイゼンシュテインのモンタージュ論(かんたん版)

組み合わせとしてのモンタージュ モンタージュというと、一般的には顔写真をパーツごとに切り貼りした犯人の顔というイメージでしょうか。 基本的にはそれと同じで、様々な映像や画像を切って貼って合成したものです。 この合成によって生まれる力を...
哲学/思想

ジェームズの『プラグマティズム』

変化と運動としての真理 一般的に真理というものは、絶対普遍の確固とした安定的なものと理解されています。 しかし、実際は現実的にそうなっているでしょうか。 例えば、私たちは学校で教科書を正しいこと(真理)として教えられます。 学校...