心理/精神

心理/精神

ラザルスの『ストレスの心理学』(2)対処編

(1)のつづき 第五章、対処の概念 ーー 第六章、対処のプロセス 第一節、対処の定義 プロセスとしての「対処」とは、自分の力を超えるような環境(外部)および自身(内部)の双方(あるいは一方)からの強制的圧力が生じた際、それを適切に...
心理/精神

ラザルスの『ストレスの心理学』(1)認知的評価

第一章、ストレスの概念 ーー 第二章、認知的評価 一節、評価概念の必要性 環境からの刺激に対する人々の解釈は異なり、その反応の仕方には、個人差やグループ差があります。 ある侮辱行為に対し、怒るか、気にしないか、憂鬱になるか等の反応...
心理/精神

アーロン・ベックの『認知療法』

<第一章、常識とその彼岸> 患者のジレンマ 精神科の歴史においては、普遍的に共有されるひとつの学説はなく、様々な学派が相争う形になっています。 それは理論的妥当性による争いというより、創始者のカリスマ性やドクマティックな教説による、排...
人生/一般

デシの『人を伸ばす力』(かんたん版)

概要 人間の動機には、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」という二つのものがあります。 動機づけとは、いわゆるモチベーションのことです。 たとえば、好きでランニングをするランナーは、内的な満足のために「内発的動機づけ」で走り、体育で...
哲学/思想

アウグスティヌスの『告白』(2)時間論

(1)のつづき <第十一巻、時間> 第十四章、時間の本質 「過去」とはもはや存在しないもの、「未来」とは未だ存在しないものです。 しかし、だからといって「現在」が存在するという訳ではありません。 もし現在が常に存在し、過去へと移り...
哲学/思想

アウグスティヌスの『告白』(1)記憶論

はじめに 本書前半部(一巻から九巻)では、アウグスティヌスの自伝が語られ、後半(十巻から十三巻)では、哲学(神学)的な論述に入ります。 特に第十巻での心(記憶)の構造、第十一巻での時間論は後世の思想家達に強い影響を与えた重要な考察です。...
心理/精神

ワイナーの原因帰属理論

はじめに ワイナー(Bernard Weiner)の原因帰属理論は先行の二つの理論を基礎にしています。 一つは「期待価値理論」、もう一つは「帰属理論」です。 簡単に解説しておきます(知っている方は飛ばしてください)。 「期待価値理論...
心理/精神

バンデューラの自己効力感

効力感とは 人間は世界の物や事柄をコントロールし、よりよい未来の環境を作ろうとします。 コントロールは利益(個人的あるいは社会的人間としての)を約束するものであり、それは人間活動(行動)を規定する基礎となります。 人は、この物事を...
心理/精神

バンデューラの『モデリングの心理学』(2)

(1)のつづき 観察学習における強化 オペラント条件付けにおける学習は、模倣された行動の結果に対し生じる好子(褒美)によって強化されると言います。 図式化すると以下のようになります。 モデル刺激→反応→強化刺激→ それに対し、学習...
心理/精神

バンデューラの『モデリングの心理学』(1)

※本頁の前に必ずスキナーの項(前半部分だけで可)をお読みください。 人は観察によって学ぶ アルバート・バンデューラのモデリング心理学(観察学習理論)は、主体と外的結果を重視するスキナーの行動主義心理学の理論を、他者と内的過程を含むものへ...
心理/精神

オルポートの『デマの心理学』(かんたん版)

デマの生じる二つの外的条件 デマが生じる条件として二つの要素があります。 A.その話題が人々にとって重要性をもつこと、B.その話題が隠されていたり曖昧であったり矛盾したりしていて真実性が薄いこと、です。 デマの流布量は、このA(重要さ...
心理/精神

オルポートの『デマの心理学』

※本書において理論的に重要な章のみ取り上げます。 第二章、デマはなぜ流れるのか 二つの基本条件 デマが生じる際には、二つの基本となる条件があります。 A、そのデマの主題(話題)が話し手及び聞き手にとって何らかの重要さを持...
心理/精神

フロイトの『夢判断』

毎晩夢を見る人間 私たちは毎日、睡眠時にたくさんの夢を見ていると言われています。 ただ、目覚めると、ほとんどのものが忘れられてしまいます。 個人の性質や状態によって、よく憶えている場合(いわゆるよく夢を見る人)と、憶えていない場合(い...
人生/一般

キューブラー=ロスの『死ぬ瞬間』

概要 人間は死ぬ瞬間に意識を失うので「死」を経験することができず、他人の死を通しての想像や、睡眠とのアナロジーなどによって間接的にとらえるしかありません。 これは古代ギリシャの時代から言われていることです。 ですから、現実的な「死」と...
哲学/思想

デカルトの『情念論』(3)第二部・下

(2)のつづき 91~95、六つの基本情念「喜び」と「悲しみ」 「喜び」は快い情動で、精神における善の基本となるものです。 精神が善から受けるもの(結果)は喜びであり、喜びのないものは善とは言えません。 「悲しみ」は不快...
哲学/思想

デカルトの『情念論』(2)第二部・上

(1)のつづき 第二部、諸情念の枚挙と順序立て、および六つの基本情念 51、 情念は、精神(意志)の活動、身体の状態(により生じる脳内の諸印象)、そして基本的にそれらが関わる感覚の対象(感覚される事物)によって、引き起...
哲学/思想

デカルトの『情念論』(1)第一部

概略 第一部は分かりにくいので、先に簡単にまとめておきます。 先ず、精神には能動的なもの(A)と受動的なもの(P)があり、それぞれの対象が非物質的か(1)と物質的か(2)により、大きく四つに分かれます。(A1、A2、P1、P2) ...
心理/精神

スキナーの言語行動

※本頁を読まれる前に、必ず『スキナーの心理学』の前半部に目を通しておいて下さい。 言語の分析 行動に伴う(随伴する)環境の変化「行動随伴性」によって、人間行動を説明しようと言うのが、スキナーの心理学(行動分析学)の基本です。 さらに進...
心理/精神

エリスの論理療法(論理情動行動療法)

※抽象的で分かりにくい場合は、先に一番下の見出しの「具体例」から読んでください。 ABC理論 アルバート・エリスの生み出した心理療法である「論理療法(あるいは論理情動行動療法)」の基礎となるのが、「ABC理論」です。 「A」は「出...
心理/精神

行動主義心理学とは何か(1)古典的条件付け

古典的条件付け これは有名なパブロフの犬の実験を基にして生まれた理論です(この発展が次項で述べるスキナーのオペラント条件付けです)。 イワン・パブロフは高名な生理学者です。 本来は消化線の研究として観察されていた犬の唾液分...
心理/精神

アドラーの個人心理学

伝統的な目的論 「人間は行動の選択において、常にその人にとって最良の選択をしている。もし、それがその人にとって悪い結果を導くなら、それは無知によるものである」 これはプラトンにはじまるひとつの人間観であり、形を変えながら、様々な思想家の...
心理/精神

アリストテレスのカタルシス

カタルシスの一般的な意味 「カタルシス」は主に「浄化」などと訳される言葉であり、元々は医学的な意味での不純物の排出、宗教的な意味での穢れの浄化、そしてプラトンにおける哲学的な意味での魂の浄化として使われていました。 しかし、アリストテレ...
心理/精神

マルクーゼの『エロス的文明』

<第一部、現実原則の支配の下に> 文化とは性欲望の抑圧 フロイトは、人間の文化というものが、人間の自然(本能的)に持っている欲望(主に性的なもの)を抑圧することによって生ずるものだと言います。 もし、本能のままに人間が生きれば、そ...
心理/精神

デシの『人を伸ばす力』

第一章、権威と不服従 自律と統制 社会は個人の安全や自由などの保障と引き換えに、人々に統制を求めます。 しかし、権威に頼る統制では、様々な問題が起こってきます。 強制的な統制の前に、そもそもなぜ人々は非行や犯罪等の逸脱行動、社会的に...
人生/一般

ジェームズ・アレンの『原因と結果の法則』

<第一章、思考と人格> 「人は自分が思っているとおりのものになる」 自分の人格は自分の思考の完全な帰結です。 思考は種であり、行動はその花です。 無意識的(計画的でない)行動から、意識的(計画的)な行動まですべてです。 そしてその...
心理/精神

フーコーの『狂気の歴史』心理学の誕生

知の考古学者 私たちにとって当たり前すぎて省みられることすらないものの隠れた前提や、その生成の歴史を明らかにすることが、フーコーの目的です。 考古学者のような手際で、隠れたものを推理し、今は見えない過去を発掘していきます。 ...
心理/精神

フロムの『自由からの逃走』(1)権威の心理学

内在化される権威システム 強力な権威というものは、被支配者を外的な力によって隷属させるだけでなく、権威を無意識にまで内在化させることによって、内と外から強力な二重の鎖で支配します。 外的な力のみで他者を支配しようとすれば...
心理/精神

スキナーの心理学

オペラント条件付け 行動主義心理学の基礎となる理論です。 これは条件反射や刺激-反応関係という古典的な機械論的行動理論ではなく(古典的条件付けの項を参照)、あくまでも生物の自発的行動についての理論です。 オペラントはオペレートをもじっ...
心理/精神

マズローの人間性心理学

欲求段階説 人間の欲求は五段階のヒエラルキー状に構成され、低次階層の欲求が満たされると高次の階層の欲求に昇っていくというものです。 第一階層「生理的欲求」 生物学的な生命維持のために必要なものへの欲求の段階です。 呼吸や飲食や体...
心理/精神

ロジャーズの自己実現

あるがままの私 カール・ロジャーズは、様々な心の問題をひき起こす根本的な原因として、自己と他者(他人という意味ではなく自己でないもの全般)の間のバランスが崩れ、本来の主体である「あるがままの自己」がそれらに呑みこまれ見失われてしまうことに...
心理/精神

エリクソンのアイデンティティとライフサイクル

アイデンティティ アイデンティティとは自己同一性のことです。 それは時間や場所の変化によってコロコロ変わるものではなく、安定して自己が常に同一であるということの意味です。 今、私は私であり、過去においても私は私であったし、未来において...
哲学/思想

ニーチェのルサンチマン

生の逆流とルサンチマン 何らかの流れの前に障害物が現れせき止められた時、二つの現象が起こります。 A.その鬱血した流れが反転し逆流する現象。 B.血栓ができた時に生成する異常血管のように、歪んた方向に強引に支流を作り出し流れだす現象。...
心理/精神

フロイトの『精神分析入門』(かんたん版)

錯誤行為 私たちは日常、多くの錯誤行為をおかします。 言い間違いや忘れ物や失策などです。 意識ではきちんとしているつもりでも、知らず知らずのうちにしてしまう行為。 これを合理的に説明しようとする際にどうしても必要となってくるものが「...
心理/精神

アドラーの個人心理学(かんたん版)

力への意志 人間の行為の原動力となるものをアドラーは「力への意志」と名づけます。 力と言っても暴力のことではなく、生きるためのパワーのようなものです。 前期フロイトが性欲の力(リビド-)に限定したものを拡張して、生命そのものが持つ全体...
心理/精神

フランクルのロゴセラピー

精神因性 精神的な病の原因として、基本的には心理的なものと身体的なものの大きな二つのカテゴリーが挙げられます。 例えば心理的なトラウマが原因でうつ症状がでている人に、いくらうつの薬を処方しても根本的には改善されませんし、逆に原因が身体的...