成功と失敗
スランプとは、今まで当たり前に成功していたことが、急に失敗しか”できなくなる”状態です。
まずはスランプのベースとなる、成功と失敗の問題について考えます。
「失敗は成功の母」と言われるように、失敗と成功は表裏一体の関係にあります。
人は失敗によって、自身の問題点を把握し、それを修正することによって成功へと近づきます。
詰将棋のように、一手一手、失敗とその修正を繰り返し、最後に詰みの状態へ持っていきます。
「成功」を言い換えるなら、「最後の失敗」です。
成功へのプロセスをよく理解している人は、失敗に対し、感情的に絶望することはなく、一歩前進と捉えます。
成功の鍵
成功の状態を達成するために必要な各条件(パラメーター)が揃った時、成功という事態が生じます。
失敗と修正の試行錯誤によって、ダイアルロックの各数字を合わせるように、このパラメータをすべて揃えた時、「成功」が開かれます。
多くの場合、このパラメーターは、すべて自分で合わせる必要はなく、既に自然と合っているものも多いのが普通です。
ですから、試行錯誤の努力はある程度で済みます。
天才と呼ばれる人は、この事前に揃っているパラメーターの数が多く、試行錯誤して自分でダイアルを合わせる必要の少ない人を指します。
秀才と呼ばれる人は、試行錯誤して自分で多くのダイアルを合わせて開錠(成功)する必要のあるタイプです。
左はほとんどのパラメーター(ダイアル)が自然に揃っている「天才」、右は事前にほとんど揃っておらず多くの努力を必要とする「秀才」
スランプの本質
スランプに陥るのは、この自然と既に揃っているパラメーターに気付いていない人です。
偶然揃っていたパラメーターは、当然、外的条件によって偶然変化します。
このパラメーターの変化に気付けない人は、当然、急に失敗から抜け出せなくなります。
これが「スランプ」という状態です。
気付いていないパラメーター(黒い部分)がある状態で、偶然それが〇から×に変わった時、理由も分からないまま急に鍵が開かなくなる(スランプ)
これを抜け出すには、再度、偶然、そのパラメーターのダイアルが合うのを待つか、あるいは自分自身で気付いていないパラメーターを探し出し、失敗と修正の努力によって、そのダイアルを必然によって合わせに行くしかありません。
全パラメーターを地道な自分自身の努力で合わせ、必然によって開錠(成功)した人は、決してスランプに陥ることはありません。
スランプは完全な自分に成るチャンス
スランプを生じさせるのは、本人の過剰な自信です。
本人の努力以外の運(偶然)の要素で自分は成功しているのだという事実を認識できていない人が、スランプに陥るのです。
たまたま自分の知っている範囲の出題が続き、十回連続テストで満点を取っていい気になっていた人が、たまたま自分の知らない範囲の出題が連続し、悪い点数が連続してしまっているような状態です。
ここで為すべきは、このスランプという失敗の連続によって、今まで気付けていなかったパラメーターの存在に気付き、それを特定し、自分の力でダイアルを揃えにいくことです。
スランプは、決して悪いものではありません。
むしろ、偶然(他力)と必然(自力)の混合で成り立っていた自分の中途半端な成功を、完全な必然の成功にする、つまり完全な自分の力による成功へと導く最高のチャンスなのです。
ストアの賢人(古代ギリシャ哲学)は、本当のお金持ちとは、いつ破産してもすぐに自分の力でお金持ちに成れる人のことを指す、と言います。
偶然パラメーターが揃い成功した新興成金は、一度破産すればほぼ再生不可能で、本当のお金持ちではないということです(つまり”運が良かった人”であり、”経済的に優秀な人”ではない ※1)。
おわり
※1、「天才」と「幸運な人」の違いは、前者は幸運が先天的に身体に埋め込まれており、後にその幸運が偶然失われる可能性が少ないのに対し、後者は幸運が後天的に後付けされたものである為、後に偶然失われる可能性が大きいということです。天才のスランプは突然変異的に先天的な幸運(自然に合っていたダイアル)が壊れることで生じ、凡人のスランプは偶然に後天的な幸運(自然に合っていたダイアル)が壊れることによって生じます。努力(必然)によって得たものは本人に強く自覚されますが、偶然得たものは自覚されにくく、隠れたダイアル(気付いていないパラメーター)になりやすいという特性があります。