樽の中のネコデゲス

社会/政治

ルソーの『社会契約論』

社会契約 まだ社会共同体のない自然状態にいる人間を想像してみましょう。 ひとりで自然と闘い日々の糧を得、生活環境を作り、天災などのアクシデントに対する安全の保障もない不安定な状態で生きることになります。 また、他者からの暴力や略奪に対...
科学/自然

ベーコンの『ノヴム・オルガヌム(新機関)』

帰納と演繹 無人島に無知な少年がひとり置き去りにされてしまったとします。 自分より大きなものは水に沈み小さなものは浮くと考えるほど未熟な知性です。 その少年が、海にスギの巨木が倒れ浮かぶのを見、さらに後日サクラの木が川を流れているのを...
心理/精神

スキナーの心理学

オペラント条件付け 行動主義心理学の基礎となる理論です。 これは条件反射や刺激-反応関係という古典的な機械論的行動理論ではなく(古典的条件付けの項を参照)、あくまでも生物の自発的行動についての理論です。 オペラントはオペレートをもじっ...
哲学/思想

現象学とは何か

普通に言えば、私の目の前に現れる象(かたち)である「現象」の成り立ちを解明する学です。 しかし、実際的には「現象」優位の学と言ってもよいかもしれません。 普通は先ず世界に対象物「存在者」があって、それが光や音などを媒介して私の感覚器...
芸術/メディア

現代美術とは何か

わけの分からない現代美術 ここでいう現代美術とは美術史的な狭義のカテゴリーではなく、八百屋のおじさんが「現代美術はわけ分からん」と言う時の現代美術です。 リアルな描写や、美しい美人画や、光の印象が綺麗な風景画のように感性にうったえるもの...
哲学/思想

アリストテレスの形而上学(かんたん版)

※本頁の前に必ずプラトンのイデア論をお読みください。 形相(けいそう)と質料 理想(イデア)主義者プラトンに反し、その弟子であるアリストテレスは現実主義者です。 イデアが現実の個々のものを離れて存在するという師の考えを批判的に...
哲学/思想

プラトンのイデア論

注、本頁を読まれる前に必ずプラトンの弁証法の項をお読みになってください。 イデアと現象 「イデア(idea)」とは観念、理念、本質、理想などの意味をもつ語で、現在の「アイデア」の語源にもなっています。 それの対となるものが、目...
人生/一般

生きることの意味

第一章、行為の意味 生きることに意味はあるのか 生きるというのは死ぬまで続く日々の行為の連続です。 生きることの意味を問う前に、先ず行為の意味を考える必要があります。 行為の意味 そもそも、ある行為に意味があるとはどういうことでし...
心理/精神

マズローの人間性心理学

欲求段階説 人間の欲求は五段階のヒエラルキー状に構成され、低次階層の欲求が満たされると高次の階層の欲求に昇っていくというものです。 第一階層「生理的欲求」 生物学的な生命維持のために必要なものへの欲求の段階です。 呼吸や飲食や体...
人生/一般

マルクス・アウレリウスの『自省録』

自省録の概要 ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの哲学をいくつかの要素にまとめるとすれば、「世界をありのままに見、自然の摂理を受け入れ、自己の理性に従い、今この時を生きる」ということになるでしょうか。 徹底していることは、「現」に今ここに...
哲学/思想

ニーチェのアポロ的とディオニソス的

アポロ的とディオニソス的 ニーチェ哲学の基礎を形作った出来事として、若い頃のショーペンハウアー哲学への耽溺とその反動というものがあります。 先ずはショーペンハウアーの頁を読んでいただきたいのですが、それは世界の根源には混沌とした欲望...
哲学/思想

ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』(かんたん版)

意志と表象 様々な無数の事物が入り乱れる私たちの経験世界の根源に在るひとつのものを、ショーペンハウアーは「意志(生の意志)」と名付けます。 宇宙全体の生成をつかさどる根源的な生の力のようなものを指しています。 その根源的な一者が、...
芸術/メディア

ミニマリズムとは何か

ミニマリズムの公式 ミニマリズムの本質をうまく表現したものとして“Less is more.(より少ないことは、より豊かなことだ)”という建築家の言葉があります。 この言葉で重要なことは、「より少ないことは、より多くあることだ」と直訳さ...
心理/精神

ロジャーズの自己実現

あるがままの私 カール・ロジャーズは、様々な心の問題をひき起こす根本的な原因として、自己と他者(他人という意味ではなく自己でないもの全般)の間のバランスが崩れ、本来の主体である「あるがままの自己」がそれらに呑みこまれ見失われてしまうことに...
宗教/倫理

鈴木大拙の禅

二に分かれる前の一を見る 鈴木大拙のよき生徒であった現代音楽の巨匠ジョン・ケージは、巧みなイメージによってこの世界観を説明します。 私たちがぼんやり無数の星が瞬く夜空を見上げるとき、それはひとつの全体としての星々を見ています...
哲学/思想

パースのプラグマティズム(かんたん版)

プラグマティズム プラグマティズムはアメリカを代表する哲学であり、最も有名なのがウイリアム・ジェームズですが、そのジェイムズの哲学の元ネタになっているのが、チャールズ・サンダース・パースです。 プラグマティズムを直訳すれば、実用主義です...
芸術/メディア

エイゼンシュテインのモンタージュ論(かんたん版)

組み合わせとしてのモンタージュ モンタージュというと、一般的には顔写真をパーツごとに切り貼りした犯人の顔というイメージでしょうか。 基本的にはそれと同じで、様々な映像や画像を切って貼って合成したものです。 この合成によって生まれる力を...
哲学/思想

ジェームズの『プラグマティズム』

変化と運動としての真理 一般的に真理というものは、絶対普遍の確固とした安定的なものと理解されています。 しかし、実際は現実的にそうなっているでしょうか。 例えば、私たちは学校で教科書を正しいこと(真理)として教えられます。 学校...
哲学/思想

相対主義とは何か(1)

世界観 私たちは一般に、世界はひとつであり、人間はみなその中に生きていると思っています。 ひとつの頂点があって、下に向かって系統樹のように枝分かれしていく秩序のピラミッドの中に住むイメージでしょうか。 物理的に言えば、世界...
芸術/メディア

メディアリテラシーとは何か

わたしたちの経験の大半は、メディア(音声、文字、映像など)を通して得たものです。 人との会話からテレビのドキュメント番組まで。 リアルタイムで実体験できることには、今、ここ、一日24時間、等の限界があるため、それ以上の経験を望む...
哲学/思想

プラグマティズムとは何か

基本理念 かなり単純化して言うと、理念的なものより実利的、実際的なものを重視する考え方です。 今風の言葉でいうなら、結果が全て、結果の中にあらわれないものや実際の結果と関係した推論以外は無意味だとする立場です。 具体例一、為す...
心理/精神

エリクソンのアイデンティティとライフサイクル

アイデンティティ アイデンティティとは自己同一性のことです。 それは時間や場所の変化によってコロコロ変わるものではなく、安定して自己が常に同一であるということの意味です。 今、私は私であり、過去においても私は私であったし、未来において...
哲学/思想

ニーチェのルサンチマン

生の逆流とルサンチマン 何らかの流れの前に障害物が現れせき止められた時、二つの現象が起こります。 A.その鬱血した流れが反転し逆流する現象。 B.血栓ができた時に生成する異常血管のように、歪んた方向に強引に支流を作り出し流れだす現象。...
心理/精神

フロイトの『精神分析入門』(かんたん版)

錯誤行為 私たちは日常、多くの錯誤行為をおかします。 言い間違いや忘れ物や失策などです。 意識ではきちんとしているつもりでも、知らず知らずのうちにしてしまう行為。 これを合理的に説明しようとする際にどうしても必要となってくるものが「...
言語/論理

ウィトゲンシュタインの言語ゲーム

語の意味とはその使用である 例えば、ある青年が星空を見上げて「綺麗だね」と恋人に語りかけたとします。 恋人はうなずいて、そばに寄り添います。 一般的にはこの「綺麗」という言葉の意味は、星空のきらめきの美しさを指していると思...
哲学/思想

ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』

世界と事実 SF映画によくあるように、私の全ての記憶を消去されたとしましょう。 そして私は部屋で目覚めます。 その時、最初に私の眼に映ったものは、「こたつの上でネコが寝ている」という『事実』です。 いま、私の世界は「こたつの上でネコ...
哲学/思想

ハイデガーの『存在と時間』(2)

1のつづき 存在と時間 私たちは基本的に近代科学的な時間の概念でものを見ています。 それは直線的で、未だ来ない「未来」は「現在」になり、やがて「現在」は過ぎ去り「過去」になるというものです。 未来・現在・過去...
哲学/思想

ハイデガーの『存在と時間』(1)

存在と存在者 「存在とは何か」という問いは、人が思考する上で最終的にたどりつく有史以来の難問で、この探求を「存在論」といいます。 例えば宇宙の始まりや果てを物理学的に解明したとしても、人間のDNA構造を究極的に解析して人間の...
心理/精神

アドラーの個人心理学(かんたん版)

力への意志 人間の行為の原動力となるものをアドラーは「力への意志」と名づけます。 力と言っても暴力のことではなく、生きるためのパワーのようなものです。 前期フロイトが性欲の力(リビド-)に限定したものを拡張して、生命そのものが持つ全体...
哲学/思想

ベンヤミンの『暴力批判論』

本書のねらい 暴力批判論の目的は、暴力と法と正義の関係を描くことです。 いわば暴力の歴史哲学的記述です。 自然法的暴力と実定法的暴力 自然法的な暴力とは、目的が正しければ手段である暴力も正当化されるという考え方です。 例え...
心理/精神

フランクルのロゴセラピー

精神因性 精神的な病の原因として、基本的には心理的なものと身体的なものの大きな二つのカテゴリーが挙げられます。 例えば心理的なトラウマが原因でうつ症状がでている人に、いくらうつの薬を処方しても根本的には改善されませんし、逆に原因が身体的...
人生/一般

フロムの『愛するということ』

愛されるのではなく愛すること タイトルにもなっているように、フロムにとって愛において重要なのは、「愛される」のではなく「愛する」ということです。 それは互いに自立した男女が結ばれる愛のことであり、互いに自立できない男女が依存しあう愛では...
言語/論理

ソシュールの実体概念から関係概念へ

言語の成立 まず、簡単な思考実験をしてみましょう。 特殊な記憶喪失になって言葉の記憶のみが無くなってしまった人がいるとしましょう。 その人が風景を前にして目にするものは、なんだかよく分からない抽象絵画のような混沌とした...
言語/論理

バルトの記号学

表示義と共示義 例えば、「さくら」という記号表現には、みなさんがお花見のときに見る実際の桜という記号内容が対応しています。 この当たり前の事実を記号学的にはむずかしく、「表示義(ディノテーション)」といいます。 表に示される義(意...
人生/一般

アリストテレスのエネルゲイア

概念 キーネーシス(運動)・・・目的をもち、そこを終点とした限界の中にある不完全(未完成)な行為。活動の主体が外部にあり動かされるもの。時間の内にある、物理的運動に類する行為。 エネルゲイア(活動)・・・目的がうちに内在し、限界(終...