樽の中のネコデゲス

哲学/思想

ユクスキュルの『生物から見た世界』(完全版)

序章、環境と環世界本書では、生物を単なる客体や反射に基づく機械として扱わず、環境の中にある固有の主体として扱います。「生物から見た世界」の記述による、新しい生物学です。それはコペルニクス的転回であったカントの主体の理論を、自然科学に応用する...
哲学/思想

カミュの『異邦人』(2)不条理の美

(1)のつづき実存主義の美今度は、「異邦人」に通底する美の問題について考えてみます。世人から異邦人に転回したときに見えてくる、世界の美のあり様です。分かりやすくするために、まず、条理を生きる世人と、不条理を生きる異邦人の違いを整理します。条...
哲学/思想

カミュの『異邦人』(1)条理への反抗

あらすじ主人公ムルソーは母の葬儀のために養老院を訪れます。その態度は淡々としており、涙を見せることもありません。葬儀の翌日、知人の女性と喜劇映画を観に行き、関係を持ちます。そうして何事もなかったかのように日常に戻りますが、友人の男性とその敵...
哲学/思想

カミュの『不条理の論証』(4)不条理な自由

(3)のつづき<第四章、不条理な自由>反抗という不断の革命私はこの唯一明証的だと思われる不条理を保持し、生きていかねばなりません。不条理の断絶を維持していくためには、絶えざる緊張感の中で、それを繰り返し更新していかねばなりません。日常(世間...
哲学/思想

カミュの『不条理の論証』(3)哲学上の自殺

(2)のつづき<第三章、哲学上の自殺>不条理の本質ここまでは不条理をその外側から分析してきましたが、今度は直接的な分析によってこの観念の意味内実を探ります。「不条理性」というのは単独の経験や印象からとらえられるものではなく、必ず比較を通して...
哲学/思想

カミュの『不条理の論証』(2)不条理な壁

(1)のつづき<第二章、不条理な壁>不条理の感情深い感情というものは、その人の思考や行為や些細な習慣の中にまで現れ、その人の中にひとつの世界観(小宇宙)というものを作り出します。嫉妬の宇宙や高邁の宇宙などという様に、人それぞれが持つ、ひとつ...
哲学/思想

カミュの『不条理の論証』(1)不条理と自殺

<第一章、不条理と自殺>自殺の考察哲学上の重大問題は自殺のみです。人が生きるべきか死ぬべきかの根本問題に尽きます。また、同時に哲学者は自分の身をもって自身の哲学を体現しなければ嘘になります。問題の重要度を測る基準とは、それが引き起こす結果と...
人生/一般

虚無感とは何か

虚無感ある休日、長い昼寝をしてしまって日暮れ過ぎに起きた時、理由も分からない虚無感や不安に襲われることがあります。そんな日常のほんの些細な出来事や瞬間に訪れるこの虚無感の正体とは一体なんでしょうか。作られていく「私」人間は本来、生まれたとき...
人生/一般

セネカの『人生の短さについて』

一、人生は使い方次第で、長くも短くもなる多くの人は人生が短いと嘆く。何の準備も整わないうちに、人は召される。偉大な人(ヒポクラテス)も「人生は短く、学は長い」と言う。しかし、私たちに与えられた人生の時間は十分に長く、偉大な仕事を成し遂げる時...
心理/精神

デシの『人を伸ばす力』

第一章、権威と不服従自律と統制社会は個人の安全や自由などの保障と引き換えに、人々に統制を求めます。しかし、権威に頼る統制では、様々な問題が起こってきます。強制的な統制の前に、そもそもなぜ人々は非行や犯罪等の逸脱行動、社会的に無責任な行動に走...
哲学/思想

パスカルの『パンセ』

人間は考える葦である本書の趣旨は、あの有名な「人間は考える葦である」という言葉に集約されています。この言葉の後には以下のような意味のことが述べられます。人間は吹けば飛ぶような一本の葦のように弱い存在であり、宇宙に比すれば無に等しい。しかし人...
人生/一般

ディオゲネスのシニシズム

キュニコス学派ソクラテスの弟子のうち、有名なプラトンとクセノフォンを除いた一派を小ソクラテス派といい、その中のひとつがキュニコス派です。キュニコスとは「犬のような人」という意味で、その野良犬のような生き方に由来し、キュニコスの英語cynic...
人生/一般

差別とは何か

差別の二つの類型誰もが簡単に自分の意見を述べられる時代、誰もが自分を被差別者だと訴えます。それによって本当の差別が覆い隠され、見えにくくなっているのが現状です。そこで少し差別というものの本質や定義を、もう一度見返す必要がありそうです。差別を...
哲学/思想

フーコーの『知への意志(性の歴史)』

抑圧の仮説近代西欧における性の問題を語る際に通説となっているものが、「性の抑圧仮説」です。17世紀以降、性というものの抑圧がはじまり、性的なことを口に出すこともはばかれるような時代が生じたとされます(典型がヴィクトリア朝)。それは性的な欲望...
人生/一般

ジェームズ・アレンの『原因と結果の法則』

<第一章、思考と人格>「人は自分が思っているとおりのものになる」自分の人格は自分の思考の完全な帰結です。思考は種であり、行動はその花です。無意識的(計画的でない)行動から、意識的(計画的)な行動まですべてです。そしてその行動の結果として、喜...
哲学/思想

フーコーの『言葉と物』(3)近代のエピステーメー

(2)のつづき近代のエピステーメー言葉と物が混在していた中世「類似」のエピステーメー、言葉と物が分離した古典主義時代「表象」のエピステーメーにつづき、分離した言葉と物の間に入り込んできた近代「人間」のエピステーメーです。この時代において、表...
哲学/思想

フーコーの『言葉と物』(2)古典主義時代のエピステーメー

(1)のつづき古典主義時代のエピステーメー古典主義時代のエピステーメーは、同一性と相違性をベースとした比較によって、事物の秩序を形成することです。類似のエピステーメーは事物が他の事物と連結する入れ子状の立体網空間でしたが、同一性と相違性によ...
哲学/思想

フーコーの『言葉と物』(1)中世のエピステーメー

エピステーメー(思考の枠組み)世界の思想史を概観すると、ある場所、ある時代内において共通する思考の枠組みというものがあります。私は自由に思考し行動する主体的人間だと思い込んでいますが、実際は私の考えは事前にその場所その時代に特有の思考の枠組...
社会/政治

フーコーの『監獄の誕生』(2)パノプティコン

(1)のつづき規律(ディシプリン)この監獄システムの本質である規格化を支える管理の方法が「ディシプリン(規律)」です。ディシプリンとは、身体を詳細に管理することにより、従順な人間(=機械)を作り出す技術です。人間の身体を調教することによって...
社会/政治

フーコーの『監獄の誕生』(1)処罰の歴史

近代化される処罰の形式本書においてまず、近代的な監獄制度が誕生するまでの三つの処罰の形式が描かれます。第一に君主権力における身体刑、第二に社会的に一般化される処罰、第三に管理装置としての監獄制です。以下、それらを順に紹介した後、管理社会のモ...
人生/一般

自由とは何か

自由vs運命哲学においてもっとも雄弁に語られる自由は、実存的な自由です。代表的なサルトルをはじめ、古くはローマ皇帝マルクス・アウレリウスの指導理性の概念から、スティーブン・コヴィーのような現代のビジネス書まで、自由意志に対する信頼を置く実存...
哲学/思想

バークリーの『人知原理論』序論

※訳語は主に『人知原理論』宮武昭訳 ちくま学芸文庫 によります。序論(1~25節)1、人は哲学的に深く思惟すればするほど、困難と矛盾に引きこまれ、懐疑主義におちいる。2、有限な人間精神で無限な世界を理解しようとすれば、不合理や矛盾におちいる...
心理/精神

フーコーの『狂気の歴史』心理学の誕生

知の考古学者私たちにとって当たり前すぎて省みられることすらないものの隠れた前提や、その生成の歴史を明らかにすることが、フーコーの目的です。考古学者のような手際で、隠れたものを推理し、今は見えない過去を発掘していきます。ニーチェが道徳成立の過...
人生/一般

スティーブン・コヴィーの『七つの習慣』個人編

<七つの習慣とは>物の観方を変える基本的にその人のあり方や世界のあり方は、その人自身の物の見方(観点や思考の枠組)に事前に既定されています。コップに半分入ったお酒を、「まだ半分もある」とポジティブにとらえ酒宴を楽しめる人と、「もう半分しかな...
哲学/思想

ニーチェの系譜学

真理と歴史の正統性普通、事物には正しい起源(はじまり・出自)や本質(何であるか・本性)が存在し、それを理性により探究するのが学問の使命であり、そこで発見されるものが真理であると考えられています。あらゆる事物が私たちの前に現れる姿は、起源や本...
哲学/思想

メルロ=ポンティの『幼児の対人関係』(3)人格特性

(2)のつづきねたみと共感幼児に特有の人格特性も、この自他の癒合性から自他の分別を伴う客観空間の確立までの成長途上において見られる現象です。「ねたみ」は、本質的に自分と他人の混同です。他人が到達したものに到達することのみが、自己の目的達成だ...
哲学/思想

メルロ=ポンティの『幼児の対人関係』(2)鏡の中の世界

(1)のつづき鏡像の実在性鏡像という象徴を通して客観空間というものを確立しても、自他の癒着した全体性の空間(身体図式)は破棄されるわけではありません。それは客観空間という図を浮かび上がらせる地として、私たちの認識や行動を規定する隠れた条件と...
哲学/思想

メルロ=ポンティの『幼児の対人関係』(1)身体図式

幼児における他人知覚古典的な心理学においては、心的作用や感覚が、当人のみに与えられた個人的なものだと考えられていました。私の本心はあなたには分からないし、私が感覚している赤とあなたが感覚している赤が同じものであると測る方法はない、というよう...
哲学/思想

実存主義とは何か

実存の定義「実存」とは現実存在や事実存在の省略です。哲学史的に「事実存在」というのは「本質存在」の対概念として使われます。「事実存在」とは、現実の事実としてリアルに存在するもの「~が・ある」。「本質存在」とは、それがどういうものであるかとい...
哲学/思想

キルケゴールの『死にいたる病』

本書のねらい日常を無反省に生きる人々にその絶望の状態を気付かせ、キリスト者への目覚め(希望)をうながすために書かれたものです。本書の下巻として構想された『キリスト教の修練』につなげるための準備として、徹底的な現状把握をおこないます。死にいた...
哲学/思想

スピノザの『エチカ(倫理学)』(4)倫理

(3)のつづき他者とつながるその倫理一般的な倫理では、受動感情や欲望を理性によって無きものにし解決しようとするわけですが、そもそもそんなことは元から無理なのです。人間は常に環境の中で生きその影響を受ける受動的立場にあり、かつ、生きようとする...
哲学/思想

スピノザの『エチカ(倫理学)』(3)感情

(2)のつづき感情の三要素ものが動くことや、存在が自己の存在を維持しようと努めることなど、世界を動かしている根源的な活動力を、スピノザは「コナトゥス」と名付けます。「存在そのもの」という概念が、それ以上遡行できない根本概念であるように(ハイ...
哲学/思想

スピノザの『エチカ(倫理学)』(2)精神と認識

(1)のつづき真理観現実のすべてが必然の連鎖であるのなら、平行論的に、それに伴う観念もすべて真なる観念となります。では、偽なる観念とは、一体何なのでしょうか。それは人間精神が、不可能なもの(ありえないもの、必然でないもの)を、想像知(臆見の...
芸術/メディア

創作におけるオリジナルとは何か

問題設定本頁では、創作活動に必ずついてまわる、オリジナルとコピーの問題を扱います。創作においては独創的であることやオリジナルであることに大きな価値が置かれるわけですが、果たしてそれは本当に大切なことなのでしょうか。また、オリジナルとコピーを...
経済/ビジネス

ドラッカーの『イノベーションと起業家精神』四つの戦略

第一部、七つの機会編のつづき四つの起業家戦略本頁ではドラッカーの提示した「四つの起業家戦略(戦術)」を紹介します。一、総力による攻撃、二、弱みへの攻撃(創造的模倣・起業家柔道)、三、ニッチの占拠、四、価値の創造、です。あくまでもこれらは便宜...