樽の中のネコデゲス

人生/一般

差別とは何か

差別の二つの類型誰もが簡単に自分の意見を述べられる時代、誰もが自分を被差別者だと訴えます。それによって本当の差別が覆い隠され、見えにくくなっているのが現状です。そこで少し差別というものの本質や定義を、もう一度見返す必要がありそうです。差別を...
哲学/思想

フーコーの『知への意志(性の歴史)』

抑圧の仮説近代西欧における性の問題を語る際に通説となっているものが、「性の抑圧仮説」です。17世紀以降、性というものの抑圧がはじまり、性的なことを口に出すこともはばかれるような時代が生じたとされます(典型がヴィクトリア朝)。それは性的な欲望...
人生/一般

ジェームズ・アレンの『原因と結果の法則』

<第一章、思考と人格>「人は自分が思っているとおりのものになる」自分の人格は自分の思考の完全な帰結です。思考は種であり、行動はその花です。無意識的(計画的でない)行動から、意識的(計画的)な行動まですべてです。そしてその行動の結果として、喜...
哲学/思想

フーコーの『言葉と物』(3)近代のエピステーメー

(2)のつづき近代のエピステーメー言葉と物が混在していた中世「類似」のエピステーメー、言葉と物が分離した古典主義時代「表象」のエピステーメーにつづき、分離した言葉と物の間に入り込んできた近代「人間」のエピステーメーです。この時代において、表...
哲学/思想

フーコーの『言葉と物』(2)古典主義時代のエピステーメー

(1)のつづき古典主義時代のエピステーメー古典主義時代のエピステーメーは、同一性と相違性をベースとした比較によって、事物の秩序を形成することです。類似のエピステーメーは事物が他の事物と連結する入れ子状の立体網空間でしたが、同一性と相違性によ...
哲学/思想

フーコーの『言葉と物』(1)中世のエピステーメー

エピステーメー(思考の枠組み)世界の思想史を概観すると、ある場所、ある時代内において共通する思考の枠組みというものがあります。私は自由に思考し行動する主体的人間だと思い込んでいますが、実際は私の考えは事前にその場所その時代に特有の思考の枠組...
社会/政治

フーコーの『監獄の誕生』(2)パノプティコン

(1)のつづき規律(ディシプリン)この監獄システムの本質である規格化を支える管理の方法が「ディシプリン(規律)」です。ディシプリンとは、身体を詳細に管理することにより、従順な人間(=機械)を作り出す技術です。人間の身体を調教することによって...
社会/政治

フーコーの『監獄の誕生』(1)処罰の歴史

近代化される処罰の形式本書においてまず、近代的な監獄制度が誕生するまでの三つの処罰の形式が描かれます。第一に君主権力における身体刑、第二に社会的に一般化される処罰、第三に管理装置としての監獄制です。以下、それらを順に紹介した後、管理社会のモ...
人生/一般

自由とは何か

自由意志哲学においてもっとも雄弁に語られる自由は、サルトルに代表される実存主義的自由です。古くはローマ皇帝マルクス・アウレリウスの指導理性から、スティーブン・コヴィーのような現代のハウツー本まで、その自由は変わることなく語り継がれる普遍的と...
哲学/思想

バークリーの『人知原理論』序論

※訳語は主に『人知原理論』宮武昭訳 ちくま学芸文庫 によります。序論(1~25節)1、人は哲学的に深く思惟すればするほど、困難と矛盾に引きこまれ、懐疑主義におちいる。2、有限な人間精神で無限な世界を理解しようとすれば、不合理や矛盾におちいる...
心理/精神

フーコーの『狂気の歴史』心理学の誕生

知の考古学者私たちにとって当たり前すぎて省みられることすらないものの隠れた前提や、その生成の歴史を明らかにすることが、フーコーの目的です。考古学者のような手際で、隠れたものを推理し、今は見えない過去を発掘していきます。ニーチェが道徳成立の過...
人生/一般

スティーブン・コヴィーの『七つの習慣』個人編

<七つの習慣とは>物の観方を変える基本的にその人のあり方や世界のあり方は、その人自身の物の見方(観点や思考の枠組)に事前に既定されています。コップに半分入ったお酒を、「まだ半分もある」とポジティブにとらえ酒宴を楽しめる人と、「もう半分しかな...
哲学/思想

ニーチェの系譜学

真理と歴史の正統性普通、事物には正しい起源(はじまり・出自)や本質(何であるか・本性)が存在し、それを理性により探究するのが学問の使命であり、そこで発見されるものが真理であると考えられています。あらゆる事物が私たちの前に現れる姿は、起源や本...
哲学/思想

メルロ=ポンティの『幼児の対人関係』(3)人格特性

(2)のつづきねたみと共感幼児に特有の人格特性も、この自他の癒合性から自他の分別を伴う客観空間の確立までの成長途上において見られる現象です。「ねたみ」は、本質的に自分と他人の混同です。他人が到達したものに到達することのみが、自己の目的達成だ...
哲学/思想

メルロ=ポンティの『幼児の対人関係』(2)鏡の中の世界

(1)のつづき鏡像の実在性鏡像という象徴を通して客観空間というものを確立しても、自他の癒着した全体性の空間(身体図式)は破棄されるわけではありません。それは客観空間という図を浮かび上がらせる地として、私たちの認識や行動を規定する隠れた条件と...
哲学/思想

メルロ=ポンティの『幼児の対人関係』(1)身体図式

幼児における他人知覚古典的な心理学においては、心的作用や感覚が、当人のみに与えられた個人的なものだと考えられていました。私の本心はあなたには分からないし、私が感覚している赤とあなたが感覚している赤が同じものであると測る方法はない、というよう...
哲学/思想

実存主義とは何か

実存の定義「実存」とは現実存在や事実存在の省略です。哲学史的に「事実存在」というのは「本質存在」の対概念として使われます。「事実存在」とは、現実の事実としてリアルに存在するもの「~が・ある」。「本質存在」とは、それがどういうものであるかとい...
哲学/思想

キルケゴールの『死にいたる病』

本書のねらい日常を無反省に生きる人々にその絶望の状態を気付かせ、キリスト者への目覚め(希望)をうながすために書かれたものです。本書の下巻として構想された『キリスト教の修練』につなげるための準備として、徹底的な現状把握をおこないます。死にいた...
哲学/思想

スピノザの『エチカ(倫理学)』(4)倫理

(3)のつづき他者とつながるその倫理一般的な倫理では、受動感情や欲望を理性によって無きものにし解決しようとするわけですが、そもそもそんなことは元から無理なのです。人間は常に環境の中で生きその影響を受ける受動的立場にあり、かつ、生きようとする...
哲学/思想

スピノザの『エチカ(倫理学)』(3)感情

(2)のつづき感情の三要素ものが動くことや、存在が自己の存在を維持しようと努めることなど、世界を動かしている根源的な活動力を、スピノザは「コナトゥス」と名付けます。「存在そのもの」という概念が、それ以上遡行できない根本概念であるように(ハイ...
哲学/思想

スピノザの『エチカ(倫理学)』(2)精神と認識

(1)のつづき真理観現実のすべてが必然の連鎖であるのなら、平行論的に、それに伴う観念もすべて真なる観念となります。では、偽なる観念とは、一体何なのでしょうか。それは人間精神が、不可能なもの(ありえないもの、必然でないもの)を、想像知(臆見の...
芸術/メディア

創作におけるオリジナルとは何か

問題設定本頁では、創作活動に必ずついてまわる、オリジナルとコピーの問題を扱います。創作においては独創的であることやオリジナルであることに大きな価値が置かれるわけですが、果たしてそれは本当に大切なことなのでしょうか。また、オリジナルとコピーを...
経済/ビジネス

ドラッカーの『イノベーションと起業家精神』四つの戦略

第一部、七つの機会編のつづき四つの起業家戦略本頁ではドラッカーの提示した「四つの起業家戦略(戦術)」を紹介します。一、総力による攻撃、二、弱みへの攻撃(創造的模倣・起業家柔道)、三、ニッチの占拠、四、価値の創造、です。あくまでもこれらは便宜...
経済/ビジネス

ドラッカーの『イノベーションと起業家精神』七つの機会

イノベーションとは何かドラッカーの言うイノベーションとは、単なる「素材」に有用性や富を創造する能力を与え、それを「資源」にする創造的な行為(革新)を指します。ボーキサイトという厄介な素材に対し、人間が利用の方法を見つけ経済的な価値を与えた時...
哲学/思想

スピノザの『エチカ(倫理学)』(1)神即自然

神即自然「神即自然」というスピノザ哲学の有名なフレーズは、彼の汎神論を言い表わしたものです。汎神論とは事物の汎(すべて)が神であるという考え方です。現実を超越した場所に人格神がいて、その神が自由意志によってこの地上(現実)を作ったということ...
人生/一般

自信とは何か

自信の定義「自信」というものが語られる際、多くの場合それは自分を信じる信じない以前の問題を意味しています。「信じる」ということは、そもそもその選択の前に「疑い」がなければ生じないものです。例えば、私の子供が私の子供である事はたんなる「当然」...
人生/一般

夢とは何か

夢の裏側を見る私たちは一般に夢をもつことがよい人生を送るための方法だと考えています。しかし、どんなことでも一長一短があるはずなのですが、あまり夢をもつということの短所や、反対の夢をもたないということの長所を挙げる人はいません。本頁ではそんな...
人生/一般

努力とは何か

はじめに努力は報われないとよく言われますが、たぶん努力は報われます。努力が報われないと感じるのは、努力の意味を間違えて捉えてしまっているからです。生産性のない無意味な根性論や努力の美化も、そういう捉え違いから生じます。手段と目的の誤認 例え...
哲学/思想

ホルクハイマーの啓蒙の弁証法(2)

(1)のつづき神話化する啓蒙啓蒙、伝統的理論、道具的理性と巡りましたが、ここでこれらに共通する構造のイメージが何かに似ていることに気付きます。それは神話です。天という頂点の視座から階層化されたヒエラルキーの中(パースペクティブ)において秩序...
哲学/思想

ホルクハイマーの啓蒙の弁証法(1)

※『啓蒙の弁証法』という本の要約ではなく、啓蒙の弁証法という概念の解説です。論点「なにゆえに人間は、真に人間らしい状態へ進む代わりに、一種の新しい野蛮状態へ陥っていくのか」(引用)啓蒙という蒙(くら)きを啓(あき)らむ光によって、世界を野蛮...
哲学/思想

西田幾多郎の『善の研究』

主客未分の純粋経験デカルトが既存の一切のものを徹底的に疑って疑いようのない直接的な知識「コギト」を根本原理・前提として哲学を構築したように、西田はそこに「純粋経験」を置きます。「純粋経験」とは、あるがままの直接経験の事実、すべての始発点にな...
科学/自然

演繹、帰納とは何か

演繹演繹とは、基本的な推論の形式です。いくつかの前提から結果(結論)を導き出す、いわば「下り」の推論です。形式的には、前提「AならばB」「Aである」→結果「よってBである」前提「AならばB」「Bでない」→結果「よってAでない」などというよう...
哲学/思想

カントのアンチノミー

(1)のつづきアンチノミーアンチノミー(二律背反)とは、相反する二つの命題が矛盾しあいながらも互いに成立している状態です。一見どちらも正しいが、片方の命題を取るともう片方の命題が成立しないということです。例えば、すべての盾を貫く矛vsすべて...
芸術/メディア

抽象絵画とは何か

抽象の絵画一般的な定義としては、具体的で何が描いてあるかよく分かる具象絵画に対する、抽象的で何が描いてあるかよく分からないものが抽象絵画です。けれどそんな外側だけの表面的な定義では、抽象絵画の何であるかという中身(本質)が見えてきません。ま...
科学/自然

ヒュームの因果論

因果例えば私が買ったばかりのお気に入りの服を着たくて、寒い日にもかかわらず薄着で出かけて風邪をひいたとします。私は案の定「寒い日に薄着で出たから(原因)、風邪を引いた(結果)」という因果関係としてそれをとらえます。しかし、健康オタクの友人は...