樽の中のネコデゲス

哲学/思想

スピノザの『エチカ(倫理学)』(3)感情

(2)のつづき 感情の三要素 ものが動くことや、存在が自己の存在を維持しようと努めることなど、世界を動かしている根源的な活動力を、スピノザは「コナトゥス」と名付けます。 「存在そのもの」という概念が、それ以上遡...
哲学/思想

スピノザの『エチカ(倫理学)』(2)精神と認識

(1)のつづき 真理観 現実のすべてが必然の連鎖であるのなら、平行論的に、それに伴う観念もすべて真なる観念となります。 では、偽なる観念とは、一体何なのでしょうか。 それは人間精神が、不可能なもの(ありえない...
芸術/メディア

創作におけるオリジナルとは何か

問題設定 本頁では、創作活動に必ずついてまわる、オリジナルとコピーの問題を扱います。 創作においては独創的であることやオリジナルであることに大きな価値が置かれるわけですが、果たしてそれは本当に大切なことなのでしょうか。 また、オリジナ...
経済/ビジネス

ドラッカーの『イノベーションと起業家精神』四つの戦略

第一部、七つの機会編のつづき 四つの起業家戦略 本頁ではドラッカーの提示した「四つの起業家戦略(戦術)」を紹介します。 一、総力による攻撃、二、弱みへの攻撃(創造的模倣・起業家柔道)、三、ニッチの占拠、四、価値の創造、です。 あくま...
経済/ビジネス

ドラッカーの『イノベーションと起業家精神』七つの機会

イノベーションとは何か ドラッカーの言うイノベーションとは、単なる「素材」に有用性や富を創造する能力を与え、それを「資源」にする創造的な行為(革新)を指します。 ボーキサイトという厄介な素材に対し、人間が利用の方法を見つけ経済的な価値を...
哲学/思想

スピノザの『エチカ(倫理学)』(1)神即自然

神即自然 「神即自然」というスピノザ哲学の有名なフレーズは、彼の汎神論を言い表わしたものです。 汎神論とは事物の汎(すべて)が神であるという考え方です。 現実を超越した場所に人格神がいて、その神が自由意志によってこ...
人生/一般

自信とは何か

自信の定義 「自信」というものが語られる際、多くの場合それは自分を信じる信じない以前の問題を意味しています。 「信じる」ということは、そもそもその選択の前に「疑い」がなければ生じないものです。 例えば、私の子供が私の子供である事はたん...
人生/一般

夢とは何か

夢の裏側を見る 私たちは一般に夢をもつことがよい人生を送るための方法だと考えています。 しかし、どんなことでも一長一短があるはずなのですが、あまり夢をもつということの短所や、反対の夢をもたないということの長所を挙げる人はいません。 本...
人生/一般

努力とは何か

はじめに 努力は報われないとよく言われますが、たぶん努力は報われます。 努力が報われないと感じるのは、努力の意味を間違えて捉えてしまっているからです。 生産性のない無意味な根性論や努力の美化も、そういう捉え違いから...
哲学/思想

ホルクハイマーの啓蒙の弁証法(2)

(1)のつづき 神話化する啓蒙 啓蒙、伝統的理論、道具的理性と巡りましたが、ここでこれらに共通する構造のイメージが何かに似ていることに気付きます。 それは神話です。 天という頂点の視座から階層化されたヒエラル...
哲学/思想

ホルクハイマーの啓蒙の弁証法(1)

※『啓蒙の弁証法』という本の要約ではなく、啓蒙の弁証法という概念の解説です。 論点 「なにゆえに人間は、真に人間らしい状態へ進む代わりに、一種の新しい野蛮状態へ陥っていくのか」(引用) 啓蒙という蒙(くら)きを啓(あき...
哲学/思想

西田幾多郎の『善の研究』

主客未分の純粋経験 デカルトが既存の一切のものを徹底的に疑って疑いようのない直接的な知識「コギト」を根本原理・前提として哲学を構築したように、西田はそこに「純粋経験」を置きます。 「純粋経験」とは、あるがままの直接経験の事実...
科学/自然

演繹、帰納とは何か

演繹 演繹とは、基本的な推論の形式です。 いくつかの前提から結果(結論)を導き出す、いわば「下り」の推論です。 形式的には、 前提「AならばB」「Aである」→結果「よってBである」 前提「AならばB」「Bでない」→...
哲学/思想

カントのアンチノミー

(1)のつづき アンチノミー アンチノミー(二律背反)とは、相反する二つの命題が矛盾しあいながらも互いに成立している状態です。 一見どちらも正しいが、片方の命題を取るともう片方の命題が成立しないということです。 例え...
芸術/メディア

抽象絵画とは何か

抽象の絵画 一般的な定義としては、具体的で何が描いてあるかよく分かる具象絵画に対する、抽象的で何が描いてあるかよく分からないものが抽象絵画です。 けれどそんな外側だけの表面的な定義では、抽象絵画の何であるかという中身(本質)...
科学/自然

グルーのパラドックスとは何か

グルー色のエメラルド グルーのパラドクスとは、ある法則や命題の正しさを確証するために、データや事例を枚挙してその証拠とするという実証科学的手続き(帰納法)を破綻させるパラドクスです。 私は「すべてのエメラルドはグリーンである」という...
科学/自然

ヒュームの因果論

因果 例えば私が買ったばかりのお気に入りの服を着たくて、寒い日にもかかわらず薄着で出かけて風邪をひいたとします。 私は案の定「寒い日に薄着で出たから(原因)、風邪を引いた(結果)」という因果関係としてそれをとらえます。 しかし、健...
哲学/思想

レヴィ=ストロースの構造主義(3)野生の思考

(2)のつづき 抽象の科学と具体の科学(野生の思考) 子供の頃、私はロボットのプラモデルを作るのが好きでした。 それには組み立て説明書という、超越的な視点からパーツの意味や用途を規定するアイデアマップ(本質の設計図)のようなも...
社会/政治

ホッブズの『リヴァイアサン』

万人の万人に対する闘争 もし、国家や法というものの存在しない世界であったとしたら、人間は一体どういう状態にあるかという問いからはじまります。 そういう「自然状態」においては、個々バラバラの人間の諸能力に大差はなく、各個人の自己保存と快楽...
芸術/メディア

表現主義とは何か

芸術分野においてよく「表現主義」という言葉が使われますが、いまいちそれがどういうものをさすのかよく分かりません。 それに対して「印象主義」といわれると、フランス印象派絵画のキラキラした風景など、多くの人が容易にイメージできます。 ...
芸術/メディア

シュールレアリズムとは何か

シュールレアリズムの定義 シュールレアリズムのそのノンセンス(意味不明)さを抽象絵画の意味不明さと混同して、それらを同じ部類のものとしてとらえる人が時々いますが、基本的にまったく別物です。 シュールレアリズムはモチーフ(...
哲学/思想

レヴィ=ストロースの構造主義(2)親族の構造

(1)のつづき 野生の合理性-インセストタブー 芸術的直感のような不合理なものも、隠れた構造によって規定されているように、私たちが理性的に劣った者として見るいわゆる「未開人」の文化にも、合理的な構造が隠れています。 例えばインセス...
哲学/思想

レヴィ=ストロースの構造主義(1)物語の構造

不合理の合理性 私たち現代人は発達した技術社会と文化の中におり、理性的で合理的なものを基礎とする創造的な営みをとおして社会を維持していると考えています。 だから未開社会の非合理で非理性的な文化を発達遅滞の劣ったものと見下し、呪術や魔術な...
人生/一般

自己満足とは何か

はじめに 最近、「自己満足」という言葉がやたらと使われます。 しかし、多くの場合、適切でない文脈で使われているため、何を言っているのかよく分からないことがあります。 そこで、少し「自己満足」ということばの意味を考えたいと思います。 ...
哲学/思想

フッサールの現象学(2)

(1)のつづき 基本の構造 前項でみた志向性や現出-現出者の関係は、私たちの世界のとらえ方のすべてを基礎付けています(注:「現出」は「射影」ともいいます)。 現出A「ドイツ皇帝」も現出B「フリードリヒ三世の息子」も現出C「ヴィクト...
哲学/思想

フッサールの現象学(1)

現象学の目的 現象学の目的は、私たちの目の前にあらわれる現象が一体どういう構造のもとで成立しているのかを解明することです。 それに先立って、捨てていただきたいひとつの先入観があります。 それは、まずはじめに世界(事物)...
哲学/思想

フッサールの『危機』

ヨーロッパの諸学の危機 19世紀後半にもなると、実証科学的世界観が西洋を覆い、独占的ともいえる繁栄をもたらします。 客観性や事実に依拠する実証的な学問には、確かな実りを与えてくれる大きな魅力があります。 しかしその反面、そ...
哲学/思想

相対主義とは何か(2)

(1)のつづき 相対主義と絶対主義 私たちが好きな色を訊かれて答えるとき、基本的にすべての色(赤、青、黄、緑…)を知った上で答えます。 だから仮に私は「赤」が好きだとしても、「青」の好きな人や「黄色」を好きな人...
社会/政治

マルクスの『資本論』

第一章、商品の成立 使用価値と交換価値 使用価値とはその名の通り、何らかの物を使用する際の具体的な有用性の価値です。 パンは食べて栄養にするものであり、レコードは音楽を聴いて慰安をえるための物です。 交換価値とは、それが社会的な...
芸術/メディア

ブリコラージュとは何か

ブリコラージュとは ブリコラージュとは器用仕事、寄集め細工などという意味の言葉です。 文化人類学者のレヴィ=ストロースが、近代の合理主義的思考に対抗するものとして提示した「野生の思考」です。 一見、不合理に見えるが合理主義よりも合理的...
社会/政治

ミルの『自由論』

自由と個性と多様性 イギリス経験論の系譜にあるミルは、ベーコン同様帰納法への信頼と自然の摂理への畏敬の念が色濃く見えます。 人間観においてもそれが強く反映されており、自然の生物が自らの自性を発揮する面目躍如とする様が、自由と...
社会/政治

ベンサムの最大多数の最大幸福

道徳科学とその基準 ニュートン物理学の歴史的な成功の時代にあり、その普遍的で客観的な科学観の影響を受けて、主観的で感覚的なものに拠ることの多かった道徳や法などの倫理的基準にも客観性をもたせることを目指します(ニュートンもベンサムも同じイギ...
人生/一般

オバケとは何か

オバケの棲み処 オバケの小説で有名な泉鏡花の作品に出てくる悪左衛門という魔物が、人間に対して面白いことを言います。 オバケは人間の瞬く間を棲処とするので、人間には気付かれないという主旨です。 人間が目を閉じている間だけ存在するとも...
社会/政治

フロムの『自由からの逃走』(2)権威の社会学

(1)のつづき 個性化の過程 人間は生れ落ちてしばらくの間は、自分の身体と環境の間に境界を設けない、未分化の状態にあります。 そこから徐々に私と母の区別や父や他者の登場、私の鏡像などとの出会いを通じて、「自我」...
心理/精神

フロムの『自由からの逃走』(1)権威の心理学

内在化される権威システム 強力な権威というものは、被支配者を外的な力によって隷属させるだけでなく、権威を無意識にまで内在化させることによって、内と外から強力な二重の鎖で支配します。 外的な力のみで他者を支配しようとすれば...