プラトンの弁証法

弁証法の成立

ソクラテスにおいては相手に無知を自覚させるための方法であった問答法が、プラトンになると、真理を導き出すための方法論としてとらえ返され、以後、ヨーロッパ思想の根幹となる「弁証法」として確立されます。
ソクラテスのようにある意見(概念)に対して否定の意見をぶつけることによって、相手の意見を瓦解させることではなく、否定の意見をテコにして、それら肯定否定の両意見より上位の意見に飛躍することが目的になります。
上位へ行けば行くほど、下位の意見や概念を包摂したものとなり、真理として精度が上がっていくということです。

弁証法の構造

まず、ある意見を出す。
次に、それに反対する意見を出す。
次に、そのふたつを総合するような新しい意見を考える。
そして、その新しい意見にまた反対する意見をぶつけ・・・(以下繰り返し)。

これを延々と繰り返すことによって、意見を深めていく。
それが弁証法です。

図式化すると、

「意見(A)」

「反対意見(否A)」
総合↓
「統一意見(B)」

「反対意見(否B)」
総合↓
「統一意見(C)」

「反対意見(否C)」
総合↓
「D」

「否D」

「E」

具体的には

ある学者と船長さんの対話

学者「地球は平らだ」

船長「いや、船が彼方に行くとき、船体の下の方から水平線に消えていくから平らじゃない」

学者「じゃあ、きっと円筒のような形をしてるんだ」

船長「いや、水平線はどの方角でも曲腺を描いているから円筒形じゃない」

学者「じゃあ、きっとレンズ型の円盤なんだ」

船長「いや、水平線に見える星座に向かって航行すると、それは一定に天球高く昇るので円盤ではない」

学者「じゃあきっと地球は丸いんだ!」

船長「・・・」

こうして真理に近づいていきます。

対話(自分との対話である反省も含め)においては、自分の考えと反対の意見を検討することによってのみ、前へ進み成長します。
自分の意見と同じものを検討するだけでは、同じ場所を往復するだけで、前進はありません。

弁証法からイデア論へ

弁証法のこの原理がイデア論においても非常に重要なものとなってきます。
弁証法というものは、ひとつの主題に対して様々な異なる意見を出し合い、それらの意見を統一するものを導出することです。
この、対立意見を第三者的視点から見下ろし、統合案を出すという階層構造がイデア論の本質としてあります。

それは、複数の現象から、それらに共通する理念を抽出する抽象作用です。
それは、複数の事例から、それらを取りまとめる一般法則を導出する科学的な帰納の手続きです。
それは、個別的な対立物である「種」差を統合する一般「類」に昇っていく階層的な秩序付けです。
(例えば、スズメやタカやペンギンなど種的に対立するものは、それらを統一する上位概念である類「鳥類」に包摂されます)

対決を通して、個別的な対立物である「種」差を統合する一般「類」を生み、この類-種関係の階段を弁証法的に昇っていくことによって、真理を導き出すのです。
この上位の階層にあるものこそが「イデア」です。

プラトンのイデア論へつづく