資本主義末期の現代においては、あらゆるものが資産に還元されます。
お金や株や土地だけでなく、健康、若さ、知識、スキル、友人、コミュニティー、キャラ(社会的に演じられる人格特性)、容姿、趣味、娯楽など、様々なものが重要な投資先であり、人々は常にどの資産に投資すれば最もコスパよく人生を資産運用できるかを考えています。
現在、世界が不安定化しているため、いまは安定的で失われにくい資産を選ぶべきだと考えられ、貯金や株式投資より、自己のスキルへの投資を薦める専門家も多くいます。
しかし、結局のところ、すべては失われる可能性のある不安定なものであり、それは程度の違いにすぎません。
そんな中で、絶対に失われない資産がひとつだけあります。
それは、自分の「心」です。
死ぬ瞬間まで、必ず一緒に居てくれる確実な資産は、己の心のみです。
ですから、「心」に投資し、心を豊かに強くすることが、最も安全な資産を形成するということになるのです。
それは単に最強の安全資産だというだけではなく、最もリターンの大きい資産でもあるといえます。
資産というものは、基本的に幸福のために必要とされるものです。
「お金が最も大切ならお金が使えなくなるじゃないか」と揶揄されるように、資産は幸福のための手段にすぎません。
そして、幸福は、「(一つの)心」と「(心以外の無数の)もの」の二つの因子の掛け算でその大きさが決定されるため(例えば、心×食物=食の幸福)、心を豊かにすることは、全ての幸福の諸可能性を底上げする最大の投資になるのです。
心が豊かであれば、数億円の名画以上の美を道端のコスモスに見出すことができるように、バターと蜂蜜を塗っただけの食パンが高級ケーキ以上のものとなり、スペックの低いはずの異性も白馬の王子様以上のものになるのです。
心に投資し強くしておけば、大恐慌が起ころうが、戦争が始まろうが、不治の病に罹ろうが、その貧しい「もの」の中においても豊かな「心」によって幸福を積として生み出すことができるのです。[註1]

はちみつパンが幸福の『くまの子ウーフ』
おわり
※註1
では、どのように心に投資し、どのように心は強くなり、どのように心は貧しい「もの」を幸福に変えるのか、という実践的な問題については、いつか暇な時にまとめます。また、ここで述べているのは、ヘーゲル的な疎外の問題でも、ニーチェ的な価値転倒の問題でもありません。内を豊かにすることで外の貧しさを誤魔化す方法ではなく、内(心)と外(もの)は掛け算なので、外ばかり(片方の因子ばかり)追いかけてても幸福は来ないよ、という話です。掛け算なので、外が大きければ幸福もより大きく、外がゼロなら幸福もゼロであり、掛け算は二つの因子なしには何も生み出しません。例えば、「不健康でも心の持ちようで幸せになれる」とは言っても、脳が働かないレベルの不健康であれば、心すら停止してしまいます。
