「太陽めざし飛んで行け」

日記

梅雨の晴れ間をぬって、赤く燃え立つ太陽を頭上に(最高気温36度)、アンゼルム・キーファー展に行ってきました。
キーファーは私が20代の頃に最も尊敬していた美術家です。
鉛の翼の生えたパレットの作品(80年代制作)は、当時の自分の生き方(今もほとんど変わりませんが)を象徴しているような気がして、好きな作品のひとつでした。
今回はそれがプテラノドン並みの翼に巨大化していました(写真、ラー Ra 2019年 鉛・スチール 940×950cm)。

ちなみにその生き方は、ほぼショーペンハウアーの『意志と表象の世界』です。
現世はエゴイズムの闘争世界なので、美(芸術)や愛(宗教)や真理(学問)のエクスタシー(語源的に我-エゴ-を脱する、我を忘れ魂が肉から脱けだす境地)によって、現世からイデア(理想)の世界に逃避するしかねぇ!ってお話しです(ツッコミどころ満載ですが、ニーチェが全ツッコミしています)。
美しいものを観たり作ったりしている瞬間(美)や、好きな人と一緒に手をつないで歩いている瞬間(愛)など以外、何をやっても何を手に入れても心をすり抜けていくだけです。
「何のために生きているか」というよくある哲学的な問いには、「”この世は時々美しい”から」と端的にプレヴェールの詩を引用すれば事足りる単純な人生です。