理論
ものの意味はそれ自体で決まるのではなく、「背景(コンテクスト)」との関係によって決定する。
具体的には
例1
画用紙に丸い円を描きます。
その横にバットの絵を描けば、その円はふくらんだ(凸)ボールに見え、
その横にシャベルの絵を描けば、その円はへこんだ(凹)穴に見えてきます。
あるもの(円)は、背景に何を置くかによって意味が間逆になったのです。
例2
青空を飛ぶ美しい白鳥が、輝く雪の原に降り立つと、雑巾の様に薄汚れた灰色の鳥に見えます。
背景の空の深い青色が白鳥を白く輝かせ、白鳥よりも明るく光る雪の白が鳥を黒ずませて見せるのです。
白鳥の美しさは白鳥自体が持っているものではなく、背景との関係が生み出しているのです。
例3
AさんがB君を突き飛ばした。→ Aさんは悪いやつだ。
AさんはB君に突き飛ばされたから、お返ししただけだ。→ じゃあ、最初に突いたB君が悪い。
B君は車にひかれそうになったAさんを突き飛ばして守っただけだ。→ 勘違いしたAさんが悪い。
実はB君は知人に依頼して、Aさんを車でひかせようと計画していた。→ B君は犯罪者並に悪い。
実はB君はAさんのことが好きで、Aさんを危険から守ることにより気をひきたかっただけで、怪我をさせる程の危険運転はさせなかった。→ B君はそこまで悪くない。
・・・
こうして背景(コンテクスト)が固定せずに変わり続けると、意味も延々と変わってゆきます。
厳密には、固定したものの意味を決定することができないのです。
ものの意味は、その外縁である背景の限界を画定することで生じる依存的なものなのです。