理論
環境に適応するように生物は進化し(進化説)、分岐して多様な生物種が生まれる(分岐の原理)。
具体的には
まず、同じ生物種においても、ちいさな個体差があります。
同じ人間でも、身長が違ったり、肌の色が違ったりします。
必然的に、環境の中で有利な特徴を持った生物は生存しやすく、不利な生物は生存が困難になります。
環境に対する有利な特徴を持つ生物が多く生き残り、子孫にも同じ特徴が遺伝され、繁栄していきます。
それに対し、不利な特徴を持った生物は衰退していきます。
キリンの先祖種が生息する場所に干ばつが起こり、食物である植物が不足すると、少しでも高くにある木の枝先の葉を食べられる背の高い(首の長い)キリンが生き残ります。
多く生き残った首の長いキリン同士から、同じ特徴を持った子孫が生まれ、繁栄していきます。
何世代か続く間にこれが繰り返され、キリンの首は徐々に伸びていくことになります。
自然環境が生き残る生物種を決定するため、これを「自然選択(自然淘汰)説」と呼びます。
ここで重要なことは、干ばつなどの環境の変化が偶然に起こるということです。
だから生物の進化も偶然であり、何か最終目標(~へ)に向かって「進歩」するのではなく、今のこの状況(~から)一歩だけ進む「進化」なのです。
それゆえ、ダーウィンの進化論は、下等な生物種から高等な人間へと進歩していくという進歩説を唱える西洋思想の基本理念を崩壊させ、スキャンダルを巻き起こします。
人為的にこの進化を、理想とする生物種へと向かって進歩させるように交配を操作するのが、家畜などに見られる品種改良です。
では、ひとつの生物種から、木の枝を広げるように多様な生物種を生じさせる「分岐の原理」とは、どういうものでしょうか。
あるひとつの生物種がある島に上陸し、繁栄したとします。
環境の制限があるため、生息可能な個体数の上限は決まっています。
だから、これより多く繁栄する可能性があるとすれば、現在他の生物によって占拠されていない島の別の場所でも生きられるように、進化するしかありません。
中程度の大きさのクチバシを持ったある鳥が飽和した時、より小さなクチバシを持った鳥に進化し、より小さな木の実を割り食べられるようになるか、より大きく進化し、より大きな木の実を食べられるようになるかすれば、より広い場所を占拠し繁栄することができます。
子孫の特性が多様に分岐するほど、より多くの場所を占めることができるのです。
ここで言う「場所」とは、物理的な空間ではなく、生態的な圏域を指します。
肉食動物と草食動物は同じ物理的空間に棲みながら、食物や生活形態が違うため、別々の生態的空間で生きています(棲み分け)。
これらの変種は長い時間をかけて、少しずつ変化を大きくし差異を広げ、やがて先祖種とは異なった特性を持つ、別の種に分岐していくのです。