基礎練習・着衣その5~リアルの類型

日記

現実の理念

リアルというものは頭の中で構成されて生じるものです。
ですので、人体を描く場合も、単に「見えたまま(現実の現実)」ではなく、理念によって整理・再構成された「本物らしさ(理想の現実)」を描く必要があります。
逆説的ですが、ある一定のレベルを超えると、見えたまま描かれた着衣の絵より、記憶のみで理念的に整理され描かれた絵の方がリアルに見えるという逆転現象が生じます。
立体にはより立体らしく、着衣にはより着衣らしく見える理念的な型があります。

以下に、着衣描画において必要だと思われる理念形の特徴を、網羅的に挙げていきます。
個人的に自分の絵を更正、採点する際の項目として使用しているので、チェックリスト風になっています。
本当はもっとたくさんありますが、ありすぎると訳が分からなくなるので、基本的なものにまとめました。
要は、これを外すと着衣のリアルさが減じますよ、という減点項目です。
重要なものから順に挙げていきます。

一、空間構造の理念

これは人体と共通のものなので、再録します。
二次元の中で立体感を生じさせる要素を、意識的に整理統合、あるいは誇張気味に描くことで、現実の空間の立体より、より空間らしい、より立体らしい「空間・立体の理念」を表現することです。

大きさ

空間内の距離によって、物の大きさは変化するため(物の大きさが距離の二乗に反比例する)、大きさの違いによって空間を表現することができます。
この大きさの相違を誤ると、空間も壊れます。

 

重なり

物の重なりによって、物同士の空間の前後関係を表現することができます。
この重なりの描出を誤ると、空間も壊れます。
奥行き方向の階層(レイヤー)に、着衣の部分(大まかな区分)が前後関係として正しく配置されているかの問題です。

 

入り込み

アウトラインの入り込みによって、その物体の空間内の方向が決定されます。
重なりの空間表現と同種のものですが、程度が弱く、気付き難いのですが、影響力は大きいので、注意が必要です。
着衣のアウトラインの前後関係が正確かどうかの問題です。

形態

描写される形によって、その物体の空間内の方向が決定されます。
大きさの空間表現と同種のものですが、隣接した連続的な変化であるため、誤った時のその空間的歪みは極めて目立ちます。
シワの形や方向が身体の方向と合致し、服の中の立体が暗示できているかの問題です。

形態の変化が不規則なものはある程度適当で構いませんが、平行の関係にあるものは正確に軸が統一されていないと、空間の歪みを生じさせます。

 

強さ

線の強さによって表現される空間的前後関係です。
濃さや太さなどの線の強いものほど手前に感じられ、弱く細いものほど奥に感じられるという、マチエールに準ずる遠近感です。
積極的に使うものというより、誤ると違和感が生じるという消極的な要素です。

 

二、動きと重力による変化の理念

これは着衣を描く際に最も重要なものです。服全体の内、どの部分が動きの影響で、どの部分が重力の影響でシワができているかを、区分分けし、描いていく必要があります。動作によるシワ、重力によるシワは、基本的なパターンがありますので、イメージとして憶え、モデルの動きに合わせて配置すると、基本的なシワは表現できます。いかに代表的なものを図で紹介します。

動作による変形

重力による変形

これらを、どういう配分で配置するかを先に考えて計画的に描く必要があります。

 

三、着衣の特性の理念

これは着衣特有の守らなければならない法則です。これを外れると着衣らしく見えなくなるという準拠枠です。

面としての辻褄 折り紙の鶴を広げて一枚の紙に戻した時、余分も不足もなく、綺麗な正方形の面ができます。それと同様、シワの面を描く際に、余分な布や足りない布がないように、描かねばなりません。

部分のサイズ(連繋) ポーズや服のサイズなどによって、シワの部分のサイズが変わります。身体の部分一つでシワの部分一つを構成するか、身体の部分四つが連携してでシワの大きな部分一つを構成するか、そういうことを捉えた上で、描く必要があります。

相補的な関係 変化というものは常に他の部分と相補う関係にあります。ある部分が緊張するとある部分は弛緩し、ある部分が潰れるとある部分は伸びます。ですので、ある変化を描いた時は、つねにそれと相補的な関係にある変化も同時に意識して描く必要があります。

調和的な配分 別の頁でも述べましたが、自然の変化は常に調和的な関係にあり、特殊な素材やデザインのものを除き、大中小適切な塩梅でシワが配分されています。それを意識的に構成してシワを配分しないと、不自然なものとなります。

アウトラインの変化 アウトラインに生ずる調和的な配分です。アウトラインは単調になる傾向にあるので、変化を誇張気味に付けてちょうどよい案配になります。

布の材質の表現 シワの描写を通して、その布の特性(厚み、硬さ、重さ材質等)を表現できているかの問題です。

服の特徴の表現 表裏、切り口、縫製部などの服のデザイン的特徴がきちんと描かれているかの問題です。

四、環境の影響の理念

 

時間的痕跡(動作) 動作によって生じたシワから、短期的な前の時間の状態が表現できているかの問題です。

時間的痕跡(記憶) クセによって生じたシワから、長期的な前の時間の状態が表現できているかの問題です。

空間的影響 接地面や風などの外的物理的影響によって生じるシワを描けているかどうかの問題です。

五、その他

世界観、画サイズへの適合

年齢、性別、体型差

 

 

お絵描き日記に戻る