基礎練習・着衣その4~シワの構成要因二

日記

(1)のつづき

D、服の形状(デザイン)と素材によるもの

服の形状や素材によって、シワの形態がかなり変わってきます。
見落とされがちですが、「B.動き」より重要な働きをしています。

D-1.形(シミュレーションの際のデフォルト形)

服のデザインのデフォルトの形が、シワにも大きく影響を与えます。
例えば、同じTシャツでも、半纏のように袖が完全に「T」字型のものと、既に袖が下方向への角度の付いた「介」字型のものでは、腕を上げ下げした時のシワのでき方がかなり違います。
シワを描く際は、先ずこのデフォルトの形をイメージし、そこからの変形としてシワをシミュレートします。

D-2.布の素材(主に、a硬さ、b厚さ、c重さ、d摩擦)

布の素材はシワのでき方にかなり強い影響を与えます。

・D-2-a、硬さ
布が硬い場合は、「紙」のような個体の板に近いシワが生じます。
筒状の紙が潰れた時のシワの法則である「吉村パターン」のような交互の折り重なり(デニムの色落ちのハチノスをイメージしてください)が生じやすくなります。
硬さのために、元の形態を維持する傾向にあります(膨らませた紙封筒を変形するイメージ)。
逆に、布が柔らかい場合は、「水(というかスライム)」の波のようなシワになります。
布の柔軟性や伸縮性が大きいと、個体の物理的なテンションを吸収して、なだらかな波に均質化します。
柔らかさのために、変形しやすい傾向にあります(水の衣をまとっているイメージ)。
硬く伸縮しない直線(面)の強い「織物」と、柔らかく伸縮する曲線的な「ニット」か、およびその程度によって、紙の衣(バキバキ)から水の衣(ふにゃふにゃ)の両極端のグラデーションの間のどこかに位置づけられます。
例えば、張りのあるスラックスの裾であれば、吉村パターンのダイヤ(ハチノス)型のバキバキしたシワになり、ニットのやわらかレッグウォーマーの裾であれば、マシュマロマンの脚の様な鏡餅状の丸こいシワになります。

・D-2-b、厚み
厚みは硬さほど難しくなく、単純に厚くなるほどシワはおおまかなものになり、細かいものは消え、数が減ります。
生地の面積に対して厚みの比が大きくなると、A-2の参考画像の人形服のような大雑把なシワになります。
人形服でも超極細の糸で織った超薄の特殊生地を使えば(要は人間服と同じ面積:厚みの比にする)、運動や凹凸要因のシワはかなり正確に再現できます。

・D-2-c、重さ
運動要因のシワ(B)と重力要因のシワ(C)がシワの二大要因で、どちらの要因に寄るかが重要な問題です。
それを決定するのが、生地の重さです。
軽い生地なら、運動シワ(B)の影響が大、重力シワ(C)の影響が小になります。
重い生地なら、重力シワ(C)の影響が大、運動シワ(B)の影響が小になります。

・D-2-d、摩擦
身体と生地の間の摩擦が大きいと、身体の動きに合わせたシワも大きくなり、また、身体要因のシワが重力要因のシワに勝りやすくなります。
例えば、長袖Tシャツの中で腕をねじれば、摩擦で少し生地もねじれますが、大半は滑って影響は抑えられます。
リブの付いた長袖Tシャツの中で腕をねじれば、リブの摩擦のせいで、生地もけっこうねじれます。
濡れて完全に身体に張り付き生地が全く滑らなくなれば、腕の動きと同じだけ生地は強烈にねじれます。
例えば、摩擦のある生地ではズボンの裾をまくっても、シワ(身体要因のシワ)は安定しますが、ツルツルの生地だとまくってもすぐに落ちてしまう(重力要因のシワ)ので、クリップで留める必要が出てくるのと同じ原理です。

D-3.縫製位置

縫い合わせの無いシームレスの服であれば、比較的単純でシワの予測もしやすいのですが、縫い目があることによって複雑化します。
始点から終点まで一本のパスで行けるはずが、間に縫い目の切り替え(乗り換え)が介入することによって、シワの軌道が変わります。
例えば、袖の付け方(縫製位置の相違)が、キモノスリーブ(縫い目無し)、シャツスリーブ(学生服のような普通の)ラグランスリーブ(首から袖まで一体)かによって、腕を動かした時のシワの生じ方が大きく異なります。

D-4.サイズ

ここで述べる「サイズ」とは、身体と服の間の空間の大小(ぴちぴちか~ぶかぶかか)のことです。
これによって、シワの各要素(A~F)の影響力の大きさが変わってきます。
図式化すると、概ね以下のようになります。

〇影響力大、△影響力中、×影響力小

ぴちぴち
A△B△C×D×E×F×

普通
A○B○C△D△E△F△

ぶかぶか
A△B△C〇D〇E〇F〇

また、服のサイズ自体が大きいと、部分内のシワは部分間に拡張し、マントを纏った様な全体的なシワとして見る必要が出てきます。

E、時間的痕跡のよるもの

時間的痕跡とは、現在において痕跡としてあらわれている過去のことです。
例えば、鼻の上に眼鏡の跡が残っていれば、さっきまで眼鏡をかけていたこと(直近の動作)、あるいはずっと眼鏡をかけている人(継続的)、が分かります。
現在においてあらわれているシワの中に、過去の状態があらわれているタイプのシワです。

E-1、動作

例えば、右回転している最中の写真と左回転のそれでは、全く逆のシワができる様に、腕を上げてる途中のシワと腕を下げてる途中のシワでは、異なります。
座っている時のスカートのシワを見れば、どういう動作で座ったかが分かるように(簡単な折り紙ならどういう順で折ったかが分かるように)、同じ腕を上げるといっても、前からか横からか後ろからかによって、シワの出来方が違ってくるということです。
シワの中に過去の動作の記憶が痕跡として残っているので、それを描かないと生きた服にならず、マネキン服のような固いものになってしまいます。
例えば、漫画の一コマの絵で、ふり返っている場面だと分かるのは、髪の毛や服のふわっと流れる線(シワ)の痕跡から、回転した直後だと分かるからです。

E-2、継続的痕跡

これはいわゆる服にクセがついたと言う時のシワです。
真っ直ぐ立っても、ズボンが真っ直ぐにならずに、膝の裏に皺ができ、全体的に緩やかな「く」の字になります。
膝を曲げるという継続的動作が痕跡として残ったシワです。

F、環境的影響

これは外的環境によって生じるシワです。
物体の形態からの影響と、非物体のものからの影響があります。

F-1、外的物体からの影響

例えば、壁にもたれかかって話す学生を描く時、もたれた壁の摩擦によって、背面全体が上の方に引っ張られるシワを描かないと、外的環境との整合関係が生じず、浮いたバラバラな印象を与える絵になります。
地面の上に座っている場合は、スカートの潰れたシワを描いて、床との物理的関係を説明しなければ、座った姿勢で宙に浮いている謎の教祖みたいになります。
描く人物と外的環境を調和させる作業です。

F-2、外的非物体の影響

風や湿度などの非物的なものとの関係を描く作業です。
例えば、風が吹いていると、木の葉は揺れ、校庭の旗は常に動き、風の方向や強さを示してくれます。
服にも常に空気の抵抗が生じており、特にそれが大きい時(走っている時や海辺の潮風等)、シワによってその影響を描くことで、同時に気候的環境を描くことができます。
シワを軽く描いたり重く描いたりすることで、湿度の変化を誇張的に描くこともできますし、朝は硬めのパリッとしたシワ、夕方は緩めのくたっとシワで、サラリーマンの時間変化を誇張的に表現することもできます。

 

 

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