基礎練習・着衣その1~練習方法

日記

はじめに

何も見ずにリアルな服のシワを描くための特殊な練習(自分用)です。
何か見てもいい、あるいはそれほどリアルである必要がない場合は、まったく無意味なページです。
特殊な事情がない限り、服のシワのポーズカタログのようなものを買って、写した方が効率的です。
よほど不自然な場合を除いて、服のシワの正確さなんて鑑賞者はまず見ていません。
基本的には人体の練習方法と同じで、内容が重複しています。

方法

これは自然を模範として、着衣の法則と視覚イメージを学んでいく作業です。

私の場合、以下のような練習プロセスを採用しています。

1.模範となる着衣の写真や画像を用意する(できるだけシワの沢山出来たポーズのもの)
2.その模範の人体ポーズを大まかな軸線(骨格)で描き、余白に来ている服の種類をメモしておく(アクションが大きい場合は動線を矢印で描く)
3.画像を閉じて、しばらく放置
4.画像のイメージが頭から消えた頃に、2.の絵の上から自分のイメージのみで詳細に描きこんでいく
5.自分のイメージの限界まで来たら、第一段階の完成(これが今現在の自分の実力)
6.模範の画像を開いて、自分の描いた絵と比較する
7.誤っている点を添削していきながら、自分の理解していない法則と、記憶の中にストックされていない服のシワの図像イメージを叩きこむ(この修正分が今現在の自分の実力に付け加わり、パワーアップする)
8.異なるポーズ、異なる角度の着衣画像を用意し、同じ工程を繰り返す…

1.~6.はすべて7.のためにあります。
7.が作業の本番です。
7.の作業の段階で、自己採点(100点満点)します。
現状、以下のような採点基準ですが、適宜変化します。
動きを説明するシワ20
重力を説明するシワ20
構造感20
材質サイズ感10
細部10
時間空間的痕跡10
調和的比率10
採点基準は別の頁で詳細に述べます。

この添削で重要なことは、写真(模範)と正確に一致しているかどうかではなく、シワの作りが予測できていたかどうかです。
そして、予測が外れている、あるいはできなかった場合、その原因(法則)はどこにあるかを反省的に探し特定することです。
別の頁で詳しく述べますが、何も見ずに本物のような着衣を描くとは、単なる「写実」ではなく、着衣のシワの記号によって現実の状況(身体の凹凸、姿勢、動き、服の素材、デザイン、環境など)を「説明」するという反対の作業です。
ゴムのように外形が半ば固定した人体の変化と異なり、服のシワはほとんど流体ようなもなので、同じような状況でも変化の幅がかなりあり、正確に把握することには意味が無く、その幅の把握が重要なのです。
例えば、同じハンガーに同じコートを掛けても、毎回異なるドレープが生じますが、その異なるドレープも一定範囲の規則内に収まっています。
この規則の幅を把握すること及び予測することが目的です。

服のシワとは、動きの軌跡、内部の凹凸の暗示、重力の存在の間接表現、その他物理的環境(応用で心理的環境)の表示であり、それらの複数の表現力によって現実の状態を説明すること、つまり、合理的な存在価値や現実性を与えるという作業です。
表現された結果(シワの描写)から、遡行的に対象の状態を明快に示す作業であり、決して対象の模倣的描写ではないということです。
受動的であってはならず、積極的に再構成していく感覚が重要です。

添削例

このような感じで最初にモデルを見ながら、人体のポーズが分かるように、おおまかな軸線を描きます。
その横に小さく着ている服の詳細をメモします。
例えば、「七分袖スエットパーカー、太目デニム、バッシュ」みたいな感じです。

【例1】
下画像は小中学生くらいの人が肩回り大き目の半袖Tシャツを七部パンツに合わせて行進のようなポーズをしたものを、何も見ずにざっと描いたものです。
その周囲にある落書きみたいなのは、モデルの写真と見比べて添削し、大きく誤っていた点です。
引っ張られた両袖口およびその裏側をまったく考慮していなかったので、動いてる感じと立体感が全然出ていません。
尻の頂から腿上面に伸びる大きなシワも描き忘れており、左肩の巻き込みも不自然です。
先ほどの採点項目に照らすと、35点くらいです(及第点80点)。
レベルが落ちすぎなので、真剣に頑張らねばなりません。

【例2】
下画像はお兄さんが長袖スウェットとロングパンツでジャンプしながらファイティングポーズをしたものを、何も見ずにざっと描いたものです。
その周囲にある落書きみたいなのは、モデルの写真と見比べて添削し、大きく誤っていた点です。
数ある問題の中で大きなものを三点あげれば、1.左裾の潰れがレイヤー的な層として描けていないので現物より平板な印象、2.右腿のシワの弧が逆になっているので腿の張りと正しい方向が出ていない、3.シワが単調(中シワばかり)でメリハリがない。
先ほどの採点項目に照らすと、40点くらいです(及第点80点)。
及第点に戻るまで頑張ります。

 

補足

非常に地味な作業で退屈ですが、確実に前進する方法です。
下手でも、何の問題もありません。
下手なのは、単に語彙と法則を記憶していないだけの話だからです。
最初は誰しも、「パパ」「ママ」しか話せません。
モデルの模倣をしているうちに、流暢に話せるようになります。

慣れると15分ほどで済む作業ですので、準備運動代わりに良いです。
外国語と同じで、使わないとどんどん語彙(視覚イメージ)も法則も忘れていきます。
過去にどれだけ描いたかよりも、現在進行形で努力あるいは使用していることが大切だと思います(ほぼ筋トレです)。
体感的に、向上するためには週二回以上、維持だけで良いなら月一回くらいの練習で十分な気がします。

着衣描画は、作品を制作しながら実践を通して学ぶか、今回のような地味な基礎練習として分けて学ぶかは、一長一短あるので、個人の特性と必要に合わせて選べばよいと思います。
柔軟な若いうちは前者、年を取ったら後者の方が習得しやすいように思います。

 

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おまけ

サボらないよう、毎月の練習をアップするおまけのコーナーです。

 

・10.03、合計40点。
兄さんが長袖スウェットとロングパンツで謎の姿勢でジャンプ。
主要な問題点:前後三層になって曲がった胸部の立体が描けておらず無茶苦茶。左袖の長さおかしいのとシワ構成のバランス単調すぎ。いきって左もも湾曲させすぎ。

・10.08、合計50点。
半袖Tとデニムでジャンプ。
主要な問題点:全体的にあってるかと思ったのですが右袖から胸にかけてのシワが全然違います。普通に腕を斜め後ろに上げるのと、いったん真上に上げた後に腕を斜め後ろに下げるのでは、同じ位置であっても全く違うシワができますが、それが表現できていません。

・10.17、合計50点。
袖まくりリブTと裾折綿パンで大の字ポーズ(何も見ずに描いたものと写真モデルを見て修正したものをGIFでまとめました)。
主要な問題点:変化が単調、部分の意識が弱く平板、左脚裾引っ張られてる感忘れてる。