基礎練習・人体その1~練習方法

日記

はじめに

何も見ずにリアルな人体を描くための特殊な練習(自分用)です。
何か見てもいい、あるいはそれほどリアルである必要がない場合は、まったく無意味なページです。
特殊な事情がない限り、3Dデッサン人形をトレースした方が効率的です。

 

方法

これは自然を模範として、自分の中の誤った人体のイメージを修正、または不足した人体のイメージを補充していく作業です。
基本的には言語の習得と似たようなプロセスです。
ネイティブ(自然)を真似ることの中で、その内にある文法(法則)と語彙(視覚イメージ)を学んでいくということです。

私の場合、以下のような練習プロセスを採用しています。

1.模範となる人体の写真や画像を用意する
2.その模範のポーズを大まかな軸線(骨格)で描く
3.画像を閉じて、しばらく放置
4.画像のイメージが頭から消えた頃に、2.の絵の上から自分のイメージのみで詳細に描きこんでいく
5.自分のイメージの限界まで来たら、第一段階の完成(これが今現在の自分の実力)
6.模範の画像を開いて、自分の描いた絵と比較する
7.誤っている点を添削していきながら、自分の理解していない法則と、記憶の中にストックされていない人体の図像イメージを叩きこむ(この修正分が今現在の自分の実力に付け加わり、パワーアップする)
8.異なるポーズ、異なる角度の人体画像を用意し、同じ工程を繰り返す…

1.~6.はすべて7.のためにあります。
7.が作業の最重要ポイントです。
7.の作業の段階で、自己採点します。
構造感50点、自然感30点、美20点の100点満点で、安定して80点位取れる様になったら、向上のための練習のペースを落として、維持に必要な練習量に切り替え(後述)、レベルが落ちてきたらまた上げます。
「構造感」はパースと形態の正確さのことで、「自然感」は別の頁であらためて解説します。
「美」とは、単純に線画としての美しさで、本質的な要素ではありませんが、重視しています。
その理由は、理解が深まり迷いや無駄な手数が無くなるほど、線が美しくなっていくので、上達度のある種のバロメーターになるからです(よどみなく流暢に話せる母国語のように)。

 

添削例

このような感じで最初にモデルを見ながら軸線を描きます。
大体のポーズを示す目印を付ける作業なので、描きこんではいけません。
私は軸線と間接球、強い軸線の角度を把握するためのリングを(Φ)入れます。
人それぞれ、どんな記号を使ってもいいと思います。

下が、モデルを見ずにイメージのみで描いた男性の人体です。
元になった写真と比較すると、間違いだらけですが、特に致命的な点を確認します。
一番大きな問題は、肩回りの筋肉の付きがまったく把握できていない点です。
久しぶりに描いたので、ほとんど肩回りの解剖学的イメージを忘却しており、誤魔化しながら何となく描いて逃げました。
これを反省点として、集中的に肩のよく見えるポーズを描いて、イメージを取り戻します。
また、本当は姿勢として左手首が下がるはずですが不自然にピンとして変で、右手もパースをつけすぎて子供のような小さな手になっています。
点数的には、構造感30点、自然感15点、美10点で、100点満点中、55点くらいです。
及第点の80点に戻るまで、練習を続けます。

下が、モデルを見ずにイメージのみで描いた女性の人体です。
男性と同じ問題が露呈しています。
肩周りの僧帽筋が完全に抜け落ちており、肩からいきなり首が生えているように見えてしまいます。
あと、おっぱいを普通に描いてしまったので、身体の反った感じが全く出ていません。
身体と一緒におっぱいも縦に伸ばして描かなければいけません。
あと、パースの付き方が甘く、手と足が重なり、変になっています。
点数的には、構造感25点、自然感15点、美10点で、50点くらいです。
及第点の80点に戻るまで、練習を続けます。

下が、モデルを見ずにイメージのみで描いた子供の人体です。
大きなフォルムはほとんど修正すべき点が無く、及第点(80)に近いですが、やはり僧帽筋を描き忘れています。
子供の体は構造や形態の変化が単純なので、描きやすいです。
点数的には、構造感35点、自然感20点、美15点で、70点くらいです。
及第点の80点に戻るまで、練習を続けます。

 

補足

非常に地味な作業で退屈ですが、確実に前進する方法です。
下手でも、何の問題もありません。
下手なのは、単に語彙と法則を記憶していないだけの話だからです。
最初は誰しも、「パパ」「ママ」しか話せません。
モデルの模倣をしているうちに、流暢に話せるようになります。

慣れると20分ほどで済む作業ですので、準備運動代わりに良いです。
外国語と同じで、使わないとどんどん語彙(視覚イメージ)も法則も忘れていきます。
過去にどれだけ描いたかよりも、現在進行形で努力あるいは使用していることが大切だと思います。
飽きるので、私は、男性、女性、子供、解剖学人体、のローテーションでやっています。
体感的に、向上するためには週二回以上、維持だけで良いなら月一回くらいの練習で十分な気がします。

人体描画は、作品を制作しながら実践を通して学ぶか、今回のような地味な基礎練習として分けて学ぶかは、一長一短あるので、個人の特性と必要に合わせて選べばよいと思います。
柔軟な若いうちは前者、年を取ったら後者の方が習得しやすいように思います。

模範となる人体写真は、平均的で端正なフォルムのものを選んだ方が良いと思います。
偏ったイメージで記憶してしまうと、応用が利かず、後の修正も大変です。
自分は格闘ゴリマッチョ男性しか描かない、自分は流行のエロ美少女しか描かない、という風に目的が明確な人は別です。

 

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おまけ

サボらないよう、毎月の練習をアップするおまけのコーナーです。
何も見ずに描いて、実物のモデル(写真)と比較して点数を付けたものです。

 

・09.30、構造感25点、自然感15点、美10点で、合計50点。
主要な問題点:女性特有のS字姿勢と、胸部を上から見た時のハート型(肩が前に出る)が描けておらず、全体に平板な印象になっています。右手をついた際の肩の上りが描けていないので、宙に浮いたようで不自然です。

・10.20、構造感25点、自然感15点、美10点で、合計50点。
主要な問題点:形はだいたい合っていますが、下半身を大きく描きすぎたので、やや前かがみの上半身の立体感が死んでいます。基本的なパースの誤りです。

・10.30、構造感30点、自然感15点、美10点で、合計55点。
何も見ずに描いたものと、モデル画像と比較して修正したものをGIFにまとめました。
主要な問題点:左肩、左ひざの形の誤り、左わき腹の強さ(隆起)。