本田健の『ユダヤ人大富豪の教え』(2)

(1)のつづき

第五の秘訣、セールスの達人になる

人が物を買う理由は、その商品そのものの価値からだけではありません。
その商品の価値だけでは売れない場合は、付加的な価値というものを考える必要があります。
例えば、電球のセールスで家庭をまわる場合、そのままではかなり売りにくいでしょう。
しかし、そこに付け替えのサービスというものを付加すれば、天井作業といういうものが身体的に負担の大きい高齢者にとっては非常に価値あるものとなります。
「いかに売るか」を徹底的に学べば、もともとある価値の何倍も売ることが可能です。

もちろんそれには商品や社会についての知識だけでなく、売る相手である人間の心というものを理解していなければなりません。
相手の立場に立って一人称的にニーズを理解し、それと同時に行動心理学のように三人称的な客観性を持って行動の因果関係を把握せねばなりません。
「売れる理由」さえ分かれば「いかに売るか」は、ある程度必然性を持って導きだされます。

また、最高のセールスとは、ついてくれたお客さんが買い続けてくれることです。
一人の新規顧客を開拓するより、一人の顧客を維持することの方が、はるかに労力が少なく済むからです。
セールスというものが大変に見えるのはスタートダッシュの段階であって、安定的なサイクルにのれば、サイクリングをするようなスムーズな進行となります。

第七の秘訣、人脈を使いこなす

人間は同じような仲間と付き合いたがります。
社交の場において、似たような社会的地位や職業や収入レベルの者が群れます。
特にビジネスに準拠した集まりの場合、グループに階層(レベル)が生じます。
野球で言えば実力と実績でより分けられる、メジャー・マイナー・アマリーグのようなものです。
同じような人達と群れるのは気楽でよいのですが、成功を望むなら、自分より少し格上の人間と付き合う必要があります。
そうして彼らから多くのことを学んでいけば、いずれそれにふさわしいような人格ができあがります。

人間というものは繋がりを持っています。
心理学者ミルグラムのスモールワールド実験にあるように、「友達の友達の友達の友達の友達の友達」の六つの因果で、世界のすべての人間につながると言います。
私は目の前の顧客のみに対応していると思いがちですが、実際はその人の裏にいる無数の友達も相手にしています。
仮に私が医者だとして、眼前の一人の患者を大切に扱えばそれが口コミとなり、その裏にいる友達にもそれが伝わります。
逆にひどい扱いをしても同じことで、その悪評は無数の人に伝わります。
善いことにしろ、悪いことにしろ、人は心を動かされたことを記憶し、それを他者に伝えようとします。
これが非常に強い人脈をつくり、目の前の人を大切にすれば、それだけ自分の応援団が指数関数的に増え、ひどく扱えば敵が無数に増殖されます。
このつながり(人脈)の力を知ることが、成功を導くための鍵となります。

第八の秘訣、お金の法則を学ぶ

人間は理性的に「必要なもの」ではなく、感情的に「欲しいもの」を買ってしまいます。
「欲しいもの」は別になくても生きていけるものですが、欲しいものを必要なものと勘違いしてしまうのです。

また、感情で物を買う人は、自分が何を買っているのかを理解していません。
例えば、本人は必要な車を買っているつもりが、実際は見栄のために貧乏人には全く似つかわしくない高級車を買い、必要な費用の何倍ものお金を支払っていたりします。

金持ちは何か買うとき、それが何を自分にもたらしてくれるかよく理解しているため、決して損になるようなものは買いません。
しかし、貧乏になる人は、広告に煽られた感情や世間の意見や個人的なコンプレックスなど、非常に感情的な衝動で物を買うため、多くの場合、買ったものは負債になり、稼いだ分だけ金を垂れ流すことになります。

お金を使うときは、それで本当は何を得ようとしているか理解し、支払うお金以上の対価を得られるものかどうか見極めることです。
それを見る力のない人は、つねにお金を価値以下のものと交換し続け、手元には結局何も残りません。
非常にシンプルですが、これがお金持ちになるための黄金律であり、本質です。

第九の秘訣、自分のビジネスをもつ

基本的に報酬というものは、相手の欲するものと自分のもつものを交換することで成立します。
私が雇われの従業員であった場合、交換相手は雇い主であるオーナー唯ひとりです。
勘違いしてはならないのは、従業員である私はお客さん達にサービスや労働を提供しているのではないということです。
私がお客さんに提供したサービスの対価が、私ではなくオーナーに支払われることから分かるように、私はオーナーの商品でしかなく、私という労働力商品をオーナーに提供して対価を得ているだけです。

当たり前の話、交換相手がたった一人(オーナーだけ)の私と、交換相手が無数にいる(お客さんのこと)オーナーとでは、報酬が桁違いになるのは当然です。
雇い主というたった一人の相手と自分の商品(労働力)を交換している限り、永久に貧しいままです。
それを打開するには、自分自身が沢山の人と交換関係を持てるための、自分のビジネスをもつしか方法がありません。

第十の秘訣、目標の立て方を知る

目標の達成に失敗する場合の大きな要因のひとつに、手段を目的にしてしまっているということが挙げられます。
本来は「○○という目標のために、その手段として××しなければならない」はずなのに、○○という目標を忘れ、近視眼的に××という手段のみにフォーカスされている状態です。
そうなると、「しなければならないこと」ばかりの重圧でモチベーションというものは、どんどん低下していきます。

また、手段が自己目的になると、目標へ到るための全体地図を見失い、旅程表から大幅にずれた無意味な道草に時間とエネルギーを費やすことになります。
健康という目的のために、手段として食事制限をしていた人が、いつの間にかその手段に呑まれて目標を忘却し、栄養失調で逆に健康を害するようなものです。

目標を常に具体的にイメージすることによってモチベーションが生まれ、目標というゴールから逆算して、いま手段として何をすべきかを明確にし、それを具体的な形で一歩一歩現実化していけば、必ずゴールにたどり着きます。

そこで重要になってくるものが、時間です。
ただ、目標を立てるだけでなく、それに期限を設けなければ、永遠に達成することはできません。
目標を具体的にするというのは、たんに願望を書き出すということではなく、いわゆる5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうやって)において、明確にするということです。

第十一の秘訣、多くの人に助けてもらう

人というものは一人で生きていると思いがちですが、実際は周囲の他者の支えによって成り立っています。
成功というものは自分の頑張りであると同時に他人のおかげでもあるのです。
それが客観的な現実の姿です。
しかし、人間は成功して調子が乗ってくるとそれを忘れ、自分の力を過信し他人をなおざりにしはじめ、知らず知らずのうちに見えない支えを失い、やがて崩壊します。

逆にいえば、常日頃からの他者への感謝の念と行動は、潜在的にじぶんの支えを強化していることでもあります。
成功者には他者への感謝を惜しまない人が多いですが、それは必然ともいえます。
他者の力を必要としないことが自立なのではなく、他者からの助力を気持ちよく受け容れられるようになった時、はじめて真の自立が成就します。

第十四の秘訣、勇気を持って決断する

人生においてもビジネスにおいても必要とされるものが決断力です。
それには日常的な些細な決定でも、意識的に決断していく習慣付けが有効です。
特に日本人は失敗を取るリスクや、責任を取る不安を回避したいがために、決断を先延ばしにする傾向があります。
しかし、「決断しないでいる」ということも、ひとつの決断であり、それは「問題を先送りにしてうやむやにしてやろう(たとえ問題が悪化するリスクがあったとしても見てみぬ振りしよう)」という選択です。
決断力のある人は、そういう「決断しないでいる」という決断が、いかにリスクの大きいものであるかを知っているからこそ、主体的に決断していくのです。
人間は決して決断から逃げることはできないと腹をくくって、主体的かつ意識的に決断していく人生を選び取ることが、成功への道です。

しかし、決断するためには、その決定のための基準となるものが必要となります。
それには絶えず、自分の人生の目的を意識し、それを達成するための手段および物事の優先順位を明確にしておかなければなりません。
基準も曖昧なままに決断することは、たんなる博打であり、それは何ら成功を約束するものではありません。
信念を持って決断する人とは、人生の目的や自己の価値観を明確に持っている人です。

第十五の秘訣、失敗とうまくつき合う

失敗というものは、完全に未来を固定してしまった時に、はじめて生じる出来事です。
それまではただの「過程」でしかありません。
例えば、エジソンが電球を作る際に一万回の失敗をしましたが、一万一回目で成功すれば、その前の一万回は成功のための過程です。
仮に一万一回目も失敗だったとしても、未来の目的へ向けて実験を繰り返す限り、やはりそれは過程です。
しかし、電球を作ることそのものを諦めて、未来の可能性を確定させた時、その一万回の行為は失敗となります。

成功者は必ずたくさんの失敗をします。
重要なことはそれを未来につないで、失敗をひとつの過程とすることです。
人生というゲームにおいては、自分でギブアップしない限り、負けというものはありません。
物事の本質を見抜く知性と、行動する勇気さえあれば、成功はそれほど難しいものではありません。

おわり