芸術/メディア

社会/政治

メイロウィッツの『場所感の喪失』第二部、印刷から電子へ

第一部のつづき 序章、新しいメディアの登場 新しいメディアは、古いメディアが構築したコミュニケーションの在り方を"変化させる"ことによって、その新しさの効果を発揮します。 印刷機の速さは、写本の遅さによって生じていた情報の独占を解放し...
社会/政治

クラッパーの『マス・コミュニケーションの効果』第二部

第一部のつづき 第六章、暴力的メディア内容がもたらす効果 マスコミの効果に関する人々の大きな関心として、メディアにおける犯罪と暴力の描写が視聴者(特に若年層)に影響を与える、という問題があります。 客観的な統計により、すべてのメディア...
社会/政治

クラッパーの『マス・コミュニケーションの効果』第一部

第一章、イントロダクション 本書で扱われる内容は以下のようなものであり、各章で詳細な考察が展開されます。 1.マス・コミュニケーションは通常、受け手の効果の必要かつ十分な原因として作用するものではない。そうではなくて、マス・コミュニケー...
その他

おススメの映画100選

※個人的に良いと思う名作外国映画を紹介します(順番はテキトーです)。五年前の記事の画像付き版です。暇な時にアップします。ある程度誰でも観ることのできる(いわゆる普通の)映画に絞っています。 <人間っぽいやつ> 『エンジェ...
芸術/メディア

バラージュの『視覚的人間』(2)

(1)のつづき 第五章、クローズアップ 映画のルーペは生組織の個々の細胞を我々の眼の前にもたらし、具体的な生の素材と実体をふたたび我々に感じとらせる。それはきみの手がなでたり打ったりしているのに、少しもきみが注意を払わず気づきもしないそ...
芸術/メディア

バラージュの『視覚的人間』(1)

※ここで述べられる「映画」とは、白黒のサイレント映画のことです。 第一章、視覚的人間 印刷術の発明によって、伝達手段は言語を通したものが中心となり、視覚の文化は概念の文化に変わり、精神は見られるものから読まれるものとなりました。 それ...
芸術/メディア

アルンハイムの『芸術としての映画』(3)映画の進化

(2)のつづき 第三章、映画の内容 身体を通しての心(精神) 映画がその表現のために使用する材料は、物質的対象と自然の出来事のみです。 その中でも人間の顔と身体の動きを手段にした、精神(思考や感情)の表現は、最も直接的で分かりやすい...
芸術/メディア

アルンハイムの『芸術としての映画』(2)限界の芸術的利用

(1)のつづき 第二章、映画の制作 1.本章の目的 映画は現実の出来事の機械的な記録への欲求から生じたもので、その関心は主題の「内容(何が描かれているか)」でしたが、映画が芸術になり始めると、映画だけの特別な手法によって対象を表現した...
芸術/メディア

アルンハイムの『芸術としての映画』(1)映画の限界

第一章、映画とリアリティ 1.本章の目的 写真や映画は機械的なリアリティの再現にすぎず、芸術になることはできないと、人々は言います(1933年当時)。 この見解に対し反論することによって、映画芸術の本質を明らかにすることが目的です。 ...
芸術/メディア

バザンの『存在論と言語(映画とは何か)』

はじめに 本頁は、アンドレ・バザンの主著である『映画とは何か-全四巻-』のうち、映画理論を集めた第一巻『存在論と言語』を簡潔にまとめたものです。 最も重要な三つの論文「写真映像の存在論」「映画言語の進化」「禁じられたモンタージュ」を扱い...
芸術/メディア

CGの本質と限界

画材の本質 「あるメディア(メディウム)の本質は、そのメディア(メディウム)の限界に一致する」というのが、絵画の特質を深く考察したグリーンバーグの説です。 よく仏教の坊さんが言うように、「短所と長所は同じものを別の面から見たもの」という...
芸術/メディア

絵の上手さの種類

絵の上手さの分類 絵が上手いと言っても、色々な上手さがあります(注1)。 同じ運動能力と言っても、筋力と瞬発力の最大化を目指すウエイトリフティングと、心肺機能と持久力の最大化を目指すマラソンでは、まったく異なるのと同様です。 目的とな...
芸術/メディア

フォーマリズムとは何か(映画)

はじめに フォーマリズムとは日本語で「形式主義」です。 これは、形式(容れ物)と内容(中身)の対概念のうち、形式の方を重視する考え方です。 例えば、以前取り上げたグリーンバーグは絵画におけるフォーマリズムであり、マクルーハンの「メディ...
芸術/メディア

美とは何か

はじめに ここで述べるのは、一番ふつうの「美」についてです。 基本の基としての美で、難しい芸術論ではなく、普通の人向けのものです。 たとえ話 昔、あるお茶の先生が弟子に対し、路地を掃除するよう言い付けました。 そして、綺麗に掃除を...
人生/一般

名前とは何か

名前=存在 事物の存在というものは、基本的にそれに名前を付けることによってはじめて成立します。 なにかある事物が発見された瞬間、個人の頭の中や公けの文書の中などに、必ずそれは言葉として、何らかの形で記されます。 私が認識する「世界」と...
社会/政治

ゴッフマンの『行為と演技』(かんたん版)

自己とは社会役割という仮面(ペルソナ=パーソン) 私たちは、他者の情報を基にして、自分の行動を決定しています。 例えば、相手が王様か乞食かによって、対応は相当変化します。 その反対に、私は自分の意図した通りに、他人に動いて欲しいので、...
社会/政治

ゴッフマンの『行為と演技』(3)

(2)のつづき <第五章、役割外のコミュニケーション> 非公式のコミュニケーション 役割を演ずるという公然と伝達されるコミュニケーションの背後には、それと異なり矛盾する、暗黙のコミュニケーションの流れがあります。 公然(公式、表、役...
社会/政治

ゴッフマンの『行為と演技』(2)

(1)のつづき <第二章、チーム> パフォーマンスチーム パフォーマンスは、個人の性格の表出という部分的な機能に注目されやすく、全体が見過ごされています。 例えば、パフォーマンスが職業的役割のみを表出し、個人的性質を覆い隠すことはよ...
社会/政治

ゴッフマンの『行為と演技』(1)

※本書では「役割 role」「役目 part」「役柄 character」と使い分けられていますが、読みやすくするためにすべて「役割(role,part,character)」として記述しています。 <序章、相互行為> 意図的、...
哲学/思想

パノフスキーの『<象徴形式>としての遠近法』

はじめに 小学一年生のメイちゃんが、はじめて学校で写生をすることになりました。 その際、先生に、学校の校舎を「見えたまま」描くよう、指示されました。 その指示に従い描いたメイちゃんの建物の絵を見て、美大出身の先生が注意しました。 「...
芸術/メディア

九鬼周造の『「いき」の構造』(通常版)

<第一章、序説> 言語とはその民族の存在の軌跡 言語と民族というものは、密接に関連しています。 ある言語およびその意味内容には、その民族の過去の在り様から現在の在り様までの変遷が記録されています。 使用される言語の中に、その民族の歴...
社会/政治

アンダーソンの『想像の共同体』(2)歴史

(1)のつづき <第四章、クレオールの先駆者たち> アメリカ大陸という特殊な場所 本章では、言語を要因としないナショナリズムとして、アメリカ諸国家について語られます。 言語においては結びついているはずの人々が、何を因子としてその国の...
社会/政治

アンダーソンの『想像の共同体』(1)理論

<はじめに> 本書のもつ意味 メディアによる人間への影響というものを考え抜いた人にマクルーハンという思想家がいます。 メディアと言っても広義のもので、車や住居なども含め、人と人をつなぐもの(中間物、メディウム、メディア)全般についての...
心理/精神

バンデューラの『モデリングの心理学』(2)

(1)のつづき 観察学習における強化 オペラント条件付けにおける学習は、模倣された行動の結果に対し生じる好子(褒美)によって強化されると言います。 図式化すると以下のようになります。 モデル刺激→反応→強化刺激→ それに対し、学習...
芸術/メディア

エイゼンシュテインの映画の弁証法

映画の弁証法 映画理論において最も重要なものとして、エイゼンシュテインのモンタージュ論というものがあります。 それは弁証法という哲学独自の概念を基礎にして、映画(あるいは広義に芸術)を作ることです。 弁証法とは何か (分かる人は読み...
芸術/メディア

演技とは何か

演技 「演技」とは、人間の行為による再現、模倣です。 アリストテレスが演劇論において述べた「ドラーマ(drama)」の本質です。 いつの時代もどこの場所でも、人は演技を観ることを欲し、広場や劇場や映画館に足をはこびます。 人...
芸術/メディア

谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』

一、 二、 日本の厠は母屋から離れた廊下の先の庭の蔭にあり、それは薄暗く静寂な空間で、精神的に落ち着き、瞑想にふけるに最適の場所です。 小窓から見える庭の景色や、木の葉から落ちる水滴の音、鳥や虫の声などが聴こえ、四季の...
芸術/メディア

バラージュの『映画の理論』

第一章、理論のススメ 映画は他の芸術よりも大衆の心を動かす強い力を持ちます。 抗することのできない自然力に対するために自然科学が生じたように、映画のその強い力に対するためにそれを理論的に研究せねばなりません。 大学教育において文学や絵...
芸術/メディア

光と影(陰)の原理

その一、明暗 1、 初めに世界があった。しかし、何にも存在しない暗黒の宇宙です。 2、 神様は何かモノを創ろうとして、とりあえず白いボールを創りました。 しかし、真っ暗で何も見えません。 3、 ...
芸術/メディア

ディフォルメの原理

ディフォルメとは何か 「ディフォルメ(仏:deformer)」とは、「~を変形させる、~の形をゆがめる」などという意味の言葉です。 主に美術の領域では、意図的な変形によって何らかのものを表現する際に使われる言葉です。 ここでは狭義の専...
芸術/メディア

アリストテレスの『詩学』(かんたん版)

創作の起源 本書の主題は「詩作」ですが、語義的にそれは芸術的な「創作」に近いものです。 アリストテレスはその創作の基本を物事の「再現(模倣、描写)」と考えます。 人間には生来的に再現を好む傾向があり、それは人々が実際の風景より精巧...
社会/政治

メイロウィッツの『場所感の喪失』第一部、メディアによる変化

第一章、メディアと行動 既存のメディア論の大半は、メッセージ内容を主題としたものであり、各メディア相互の差異やメディア自体が持つ可能性は見落とされています。 メッセージ内容ではなく、それを取り巻く状況や受け手の主体性からアプローチする新...
芸術/メディア

柄谷行人の『日本近代文学の起源』構成力について

(2)のつづき 構成力について(没理想論争) 一、 日本の近代以前の文学には、何か深みというものが無いように思えます。 しかし、別に江戸時代の人々が深いことを考えていなかったという訳ではあ...
芸術/メディア

柄谷行人の『日本近代文学の起源』告白という制度

(1)のつづき 告白という制度 一、 告白という形式と日本の近代文学の成立は並行します。 告白は告白されるべき「内面」を生じさせます。 告白という形式の文学作品(表現されたもの)と、告白...
芸術/メディア

柄谷行人の『日本近代文学の起源』風景の発見

風景の発見 一、 「文学」という観念は相対的なものであるのですが、その中にいる限りなかなかそれに気付くことができません。 漱石の学んだ英文学の普遍性への疑いは、それが決して経験に先立つアプリオリなもので...