本田健の『ユダヤ人大富豪の教え』(5)

(4)のつづき

第十一の秘訣、多くの人に助けてもらう

人というものは一人で生きていると思いがちですが、実際は周囲の他者の支えによって成り立っています。
深海魚を一気に釣り上げれば爆発してしまうことから分かるように、魚の身体は魚自身が支えているのではなく、周囲の海水が水圧によって桶のタガのように支えてくれているからこそ、成り立っているのです(人間も気圧のおかげで生きています)。
それと同様、成功というものは自分の頑張りであると同時に他人のおかげでもあるのです。
それが客観的な現実の姿です。
しかし、人間は成功して調子が乗ってくると、それを忘れ、自分の力を過信し、他人をなおざりにしはじめます。
そうなると今まで自分が意識してないところで支えてくれていた人達が離れていき、図に乗って海面へ跳ねだした深海魚のように、自分の成功は崩れ落ちてしまいます。

逆にいえば、常日頃からの他者への感謝の念と行動は、潜在的にじぶんの支えを強化していることでもあります。
成功者には他者への感謝を惜しまない人が多いですが、それは必然ともいえます。
他者の力を必要としないことが自立なのではなく、他者からの助力を気持ちよく受け容れられるようになった時、はじめて真の自立が成就します。

他者の助力を得るのは自己の無能を証明するものだと拒む人がいますが、それはたんに自分の自信のなさのあらわれであり、それは他者の助力ごときで崩壊する程度の不安定な自己でしかないのです。
自立のためには、反抗期の青年のように、自分の力だけで生きていると思い込む時期は必要です。
しかし、その後は、自己というものが他者のおかげで成り立っているということを知り、社会的に真に自立した自己を実現するために、他者との協力関係が絶対に必要になるのです。

第十四の秘訣、勇気を持って決断する

人生においてもビジネスにおいても必要とされるものが決断力です。
それには日常的な些細な決定でも、意識的に決断していく習慣付けが有効です。
特に日本人は失敗を取るリスクや、責任を取る不安を回避したいがために、決断を先延ばしにする傾向があります。
しかし、「決断しないでいる」ということも、ひとつの決断であり、それは「問題を先送りにしてうやむやにしてやろう(たとえ問題が悪化するリスクがあったとしても見てみぬ振りしよう)」という選択です。
決断力のある人は、「決断しないでいる」という決断が、いかにリスクの大きいものであるかを知っているからこそ、主体的に決断していくのです。
人間は決して決断から逃げることはできないと腹をくくって、主体的かつ意識的に決断していく人生を選び取ることが、成功への道です。

しかし、決断するためには、その決定のための基準となるものが必要となります。
それには絶えず、自分の人生の目的を意識し、それを達成するための手段および物事の優先順位を明確にしておかなければなりません。
基準も曖昧なままに決断することは、たんなる博打であり、それは何ら成功を約束するものではありません。
信念を持って決断する人とは、人生の目的や自己の価値観を明確に持っている人です。

誤った決断による失敗を恐れる人がいますが、そもそも決断に失敗というものはなく、失敗とは状況のとらえ方によって生ずる二次的なものです。
例えば、私が目玉焼きを作ろうとして、卵を割る際に黄味を潰してしまっても、それを美味しいスクランブルエッグにすれば失敗でなくなります。
失敗というものはその状況のとらえ方さえ変更すれば、どうとでもなるのです。
取り返せないほどの失敗というのは、異常に未来の目的を固定して見る頭のかたい人にのみ生ずるものです。
多くの成功者が、むしろ失敗をチャンスや学びととらえるのは、失敗というものの可塑性をよく理解しているからです。

第十五の秘訣、失敗とうまくつき合う

失敗というものは、完全に未来を固定してしまった時に、はじめて生じる出来事です。
それまではただの「過程」でしかありません。
例えば、エジソンが電球を作る際に一万回の失敗をしましたが、一万一回目で成功すれば、その前の一万回は成功のための過程です。
仮に一万一回目も失敗だったとしても、未来の目的へ向けて実験を繰り返す限り、やはりそれは過程です。
しかし、電球を作ることそのものを諦めて、未来の可能性を確定させた時、その一万回の行為は失敗となります。

もちろん、電球の発明としては失敗であったとしても、それを別の未来の可能性へ向け変え、その失敗した技術を別の発明に生かすことができれば、それは失敗ではなく過程となります。
先ほどの例でいえば、目玉焼きの卵の黄味が割れてしまって、それを別の料理の可能性へと向けようともせず、諦めてしまった段階で、その行為は失敗として確定するということです。
失敗というものの本質をきちんと見極めれば、失敗というものはなんらネガティブなものではないという事が分かります。

成功者は必ずたくさんの失敗をします。
重要なことはそれを未来につないで、失敗をひとつの過程とすることです。
人生というゲームにおいては、自分でギブアップしない限り、負けというものはありません。
物事の本質を見抜く知性と、行動する勇気さえあれば、成功はそれほど難しいものではありません。

おわり

※第十二、十三、十六、十七の秘訣については、本書の内容の本質的な理解に影響はないと判断し割愛いたしました。