本田健の『ユダヤ人大富豪の教え』(3)

(2)のつづき

第四の秘訣、思考と感情の力を知る

日々、考えていることが、その人の人生を作ります。
お金持ちは常に、豊かにすること、あたらしいチャンス、興味が湧くイベントのことを考え、貧しい人は常に、月末の支払いや、嫌な上司、将来への不安や過去の失敗など、必然的に貧困につながるようなことばかり考えています。
人生は「考えること」と「行動すること」の連続で成り立っており、現在の自分やおかれた環境というものは、今まで考え、その結果行動を起こしてきたことの集大成といえます。
「健康」を考えとして持つ人は、結果としてその行動において、口に入れるものに気を配ります。
当たり前のはなし、健康という思考が、結果として健康的な行動を生み、健康な身体という環境を作り上げていきます。

だから幸せな人生という果実をえたいなら、頭の中に幸せの種となるような思考を入れなければならないのです。
「思考が行動を生み、行動が習慣となり、習慣が人格をつくり、人格が人生をつむぐ」と言われるように、大元の思考を大切にしなければ、よい人生など作れるはずがありません。

昼休み、職場内で上司や同僚の陰口で盛り上がるサークルがある。
一人で昼食を取るのが恥ずかしかったり寂しかったりして、本当は普段感謝の念を持っている上司や同僚の悪口を許容してでも、仲間に入るべきでしょうか。
表面的には相槌打っても、心では真に受けないから大丈夫だと思っても、人間の深層心理というものはそんな簡単なものではありません。
頭に入ったそのネガティブな思考は、いずれ行動に影響を与えはじめます。

だから普段から頭に入れるもの、本や映画のメッセージ、付き合う人が話す内容などに注意して、思考の素材を選別しながら集めなければなりません。
そしてその集められた思考の素材の中から、いまどれを選びとり組み立てるべきかを判断して、考えというものを作っていかねばなりません。
例えば、既成概念を崩すための反証的な作業には、懐疑のようなネガティブな思考が必要ですが、一度立てた仮説を実証する際には、信念というポジティブな思考が必要です。
信念に則って行動しているときは、懐疑という思考は頭の中から駆逐せねばなりません。

自分の成りたい姿や理想の環境をビジョンとして頭の中に持つことが、現実にするための必要条件です。
人生の結果というものは、その人の真の意図をあらわすものです。
例えば、「恋人を欲しい」と意識では思っていても、現実には恋人ができない人生だったとします。
しかし、その人の深層にある隠れた真の意図は、「恋人は欲しくない」ということです。
努力するのが面倒くさい、お金がかかる、傷付きたくない、責任持ちたくない、などの引き算によって、恋人が「欲しい」という意図よりも「欲しくない」という意図が上回っているのであり、心の奥では恋人を望んでいないのです。
「心から反省している」と言いながら同じことを繰り返す人間は、心の中に本当の反省の考えなどなく、ただ表面的な部分で反省しているつもりになっているだけです。
だからもし、本当に願望を達成したいのなら、自分の本音と向き合い、本当の自分の姿を知ることが、これから建てる理想という聖堂の重要な基礎となります。

また、思考やイメージというものには、ある種の暗示機能があります。
自分がフォーカスしたものや描いたビジョンに同化しようとする傾向があるのです。
例えば占いのような非科学的なものがよく当たるのは、暗示機能がはたらいているからです。
「あなたはこうなる」と深刻な顔で何度も念じられれば、いつのまにか自分もそうなのだと思いこみ、それを忠実に再現してしまいます。
スポーツのイメージトレーニングなどの場合は、この暗示機能をポジティブな形で利用しています。

こうして見ていくと、思考というものがいかにも万能なものに見えてきますが、これに対する強力な敵が自分の中に同居しています。
それは「感情」です。
感情というものは思考よりもはるかに強力に人間をコントロールするものです。
冷静に考えればとんでもなく不利益なことでも、感情に支配された人間はそれをやってしまいます。
多くの場合一般人の悪行や犯罪は、感情に呑まれ思考停止した人間がひきおこすものです。
例えば、誰がどう見ても転職した方が良いと思う状況であっても、当の本人は新しいことをはじめることの恐怖や不安に呑まれ、それが見えなくなってしまいます。
恐れや怒りや悲しみや不安が、思考をのっとり、人生を台無しにしてしまうのです。
もし、感情に呑まれそうになったら、それを思い出し、感情の芽が大きくなる前に摘み取ることが重要です。

第五の秘訣、セールスの達人になる

人が物を買うとき、買っているのはその物の魅力から生じる価値からだけではありません。
その商品にある程度使用価値があるのに売れない場合は、付加的な価値というものを考える必要があります。
例えば、電球のセールスで家庭をまわる場合、そのままではかなり売りにくいでしょう。
しかし、そこに付け替えのサービスというものを付加すれば、天井作業といういうものが身体的に負担の大きい高齢者にとっては非常に価値あるものとなります。
「いかに売るか」を徹底的に学べば、もともとある使用価値の何倍も売ることが可能です。

もちろんそれには商品や社会についての知識だけでなく、売る相手である人間の心というものを理解していなければなりません。
相手の立場に立って一人称的にニーズを理解し、それと同時に行動心理学のように三人称的な客観性を持って行動の因果関係を把握せねばなりません。
「売れる理由」さえ分かれば「いかに売るか」は、ある程度必然性を持って導きだされます。

最高のセールスとは、ついてくれたお客さんが、買い続けてくれることです。
一人の新規顧客を開拓するより、一人の顧客を維持することの方が、はるかに労力が少なく済むからです。
セールスというものが大変に見えるのはスタートダッシュの段階であって、安定的なサイクルにのれば、サイクリングをするようなスムーズな進行となります。

お金もちというものは、自分の資産を売り儲けを全て自分のものにする、自立したセールスマンのようなものですので、これらの知識は必須です。

第六の秘訣、スピーチの天才になる

実践的なビジネススキルとして、スピーチの力は重要です。
ここでいうのは文学的な虚飾や詐術的なレトリックの技術ではなく、純粋に自分の思いを相手の心に訴える言葉の力です。

その力を磨くには、日常的に自分の考えをアウトプットすることが必要になります。
考えやアイデアが浮かんだら、それを日記なりアイデア帳なりに書き出したり、誰かに向けて話したりすることです。
それによって、考えが整理され、アイデアが膨らみ、むしろアウトプットすることによってのみ思考というものは活性化します。
ここで重要なことは、いい加減なことを口走らず、真実のみを語ることです。
その気のないことを語れば、それは無駄な虚飾となり、水を混ぜた酒のように、言葉の効力を失わせていきます。

また、第四の秘訣でも述べたように、日常的にインプットする言葉や、自分の普段使いの言葉に注意する必要があります。
成功者が話す前向きな言葉と軽快なリズムの中で過ごすか、失敗者の愚痴や陰口のねばっこいゴシップ話しの中で過ごすか、そして自分が普段どちらの言葉とリズムで話すか、これらの選択がいかに自分のスピーチ(言葉)力に影響を与えるかは火を見るよりも明らかです。
日常的に聴き、話す言葉が、自分の運命を作っていると自覚せねばなりません。

第七の秘訣、人脈を使いこなす

人間は同じような仲間と付き合いたがります。
社交の場において、似たような社会的地位や職業や収入レベルの者が群れます。
特にビジネスに準拠した集まりの場合、グループに階層(レベル)が生じます。
野球で言えば実力と実績でより分けられる、メジャー・マイナー・アマリーグのようなものです。
同じような人達と群れるのは気楽でよいのですが、成功を望むなら、自分より少し格上の人間と付き合う必要があります。
そうして彼らから多くのことを学んでいけば、いずれそれにふさわしいような人格ができあがります。

人間というものは繋がりを持っています。
心理学者ミルグラムのスモールワールド実験にあるように、「友達の友達の友達の友達の友達の友達」で、世界のすべての人間につながると言います。
私は目の前の人間のみに対応していると思いがちですが、実際はその人の裏にいる無数の友達も相手にしています。
仮に私が医者だとして、眼前の一人の患者を大切に扱えばそれが口コミとなり、その裏にいる友達にもそれが伝わります。
逆にひどい扱いをしても同じことで、その悪評は無数の人に伝わります。
善いことにしろ、悪いことにしろ、人は心を動かされたことを記憶し、それを他者に伝えようとします。
これが非常に強い人脈をつくり、目の前の人を大切にすれば、それだけ自分の応援団が指数関数的に増え、ひどく扱えば敵が無数に増殖されます。
このつながり(人脈)の力を知ることが、成功(あるいは失敗)を導くための鍵となります。

(4)へつづく