スティーブン・コヴィーの『七つの習慣』(4)

(3)のつづき

第三の習慣、最優先事項を優先する

第一の習慣で主体性を持ち、その主体によって第二の習慣である一度目の創造(知的創造)である人生の設計図を描きます。
そして第三の習慣は、その理念を具体化するための二度目の創造(物的創造)である実践に入ります。
要するに第二の習慣で描いたプログラムを実行するのが第三の習慣です。
自分自身を効果的にマネジメントし、現実を目標へ導くことです。

端的に言えば効果的なマネジメントとは「最優先事項を優先する」ということであり、それは大切にすべきことを日々の行為の中で優先していけるように自分を律することです。
感情や気分、世間や常識に流されるのではなく、自分の内面にある価値や目的に従い、本質的なものにエネルギーを集中することです。

目標達成のための手段である日々の行為に「優先順位をつけ、それを実行する」のがタイムマネジメントの基本です。
既存の時間管理の方法では、元々あるスケジュールの項目に優先順位をつけていきます。
しかし、大切なのはスケジュールそのものではなく優先事項のはずであり、優先事項が主役でなければなりません。
そこで第三の習慣は、まず優先すべきことを基準にスケジュールを作り、優先すべきでないことは思い切って捨てるのです。
そもそも時間管理(タイムマネジメント)という言葉が意味としてずれています。
なぜなら問題は時間を管理することではなく、自分を管理すること(セルフマネジメント)だからです。
これを誤ると、自分が時間やスケジュールに追われ呑まれてしまい、自分を見失ってしまうことになります。

時間管理の本質を知るために、まず下の図を見てください。

ある活動の価値をはかるための本質的な要素として「緊急度」と「重要度」があります。
図は縦軸に重要度、横軸に緊急度をあてたものです。
重要度は結果に直接かかわるものでありその価値は自分の立てた目的に依存します。
緊急度の価値は状況に依存し、緊急であればあるほど人は受動的に反応し、緊急でないことを行うには能動的な主体性が必要です。
図の四領域のうちのどれを重視しているかによって、その人の能率というものが決定します。
いくつかの類型を挙げてみます。

1、多くの人は第一領域の問題に追われ、それに一日の大半を支配されています。次々打ちよせる問題の波に倒れては起き上がりを繰り返し、疲弊していきます。(下図1番目)

2、緊急だが重要でない第三領域の用事を第一領域と勘違いし、重要でないことに一日を費やす人がいます。緊急だから重要だという妙な錯覚に囚われ、緊急の用事すべてに反応します。しかし、緊急性は他者や環境などの都合であって、私はたんに他者の都合(優先順位)のために自分の優先順位を犠牲にしている奴隷なのです。(下図2番目)

3、第三、第四領域だけの用事ばかりする人がいます。自分の責任を放棄し、他者や社会に依存するだけの無能な人で、いずれ会社や社会に切り捨てられる人です。(下図3番目)

ちなみに私は第一領域のプレッシャーから逃げるために、第四領域の用事ばかりしている非常に能率の悪い人間です(笑)

では、「Effective(効果的な)」人々というのは、どういう風な類型に属するのでしょうか。
まず彼らは、第三と第四領域に関しては徹底的に避け、切り捨てます。
そしてそれによって捻出された時間は、普通の人なら第一領域に当ててしまうところですが、それを第二領域に当てます。
なぜかというと、第二領域を育てていくことによって、第一領域の占める範囲を小さくしていけるからです。

仮に私が原始人の狩人だとした場合、最も重要で緊急な用(第一領域))といえば、食べ物になる動物を狩ることです。
そして私は第三と第四領域を避け、出来た時間を第一領域である狩りそのものにあて、獲物を余分に獲ったとしても、自分の生活は大きくは変わりません。
しかし、捻出された時間を第二領域にあて、刃を砥いだり、罠を考えたり、作戦を練ったり、身体能力の向上をはかったり、緊急ではないが重要なことに時間をそそけば、第一領域である狩りそのものの問題は効率化し、徐々に小さくなっていきます。(下図4番目)

第三、第四領域に対し「ノー」を突きつけることや、緊急でない第二領域に対し能動的に関わっていくことはかなりむずかしいことに思えます。
「最良」の敵は「悪」ではなく「良」であり、「最良」を得るために「良」を捨てる勇気がいります。
しかし、これらの問題は第二の習慣である理念や目的やミッションステートメントが確立していれば、自ずと解決する問題です。
野球のイチロー選手のように試合後チームメイトとの飲み会に誘われて、家で素振りしなければならないから帰る、ということを言えるのは、強い目的意識から生ずる必然です。
第三、第四領域である飲み会に「ノー」といい、試合後の地道な反省と修正という第二領域の用事に「イエス」と言います。
チームプレーである野球において仲間との交流は「良い」選択ですが、それを捨ててまで自分の信念にとってより「最良」である素振りを採るのです。

緊急の用事である第三領域、楽な用事である第四領域に比べて、第二領域を行うには強い主体性が要ります。
しかし、建築家ルイス・サリヴァンの「形式は機能に従う」という言葉通り、マネジメントはリーダーシップに従います。
第二の習慣、リーダーシップという全体の計画の理念をきちんと持っていれば、必然的に自分の時間において優先すべきことが何かが決まり、自然とそこへ時間をかけることに意志が向きます。
自分の中に大きな「イエス」がない限り、様々な誘惑に対しきっぱり「ノー」と言うことは出来ません。
第一の習慣である主体性と第二の習慣であるリーダーシップから生ずる私の信念が基礎にあるからこそ、第三の習慣としてのセルフマネジメントを従わせることが出来るのです。

※以上、本書第一部、第二部の内容です。後半の第三部、第四部は後日アップします。