ロジャーズの自己実現 2

1のつづき

自己実現への道

カウンセリングを通して、あるがままの自己、いわば主体を取り戻し真の自己を実現していく過程を記述していきます。

1、潜在的な自己を体験する

自己の解釈構造に合致しない経験を否認したり、歪曲したりすることなく、体験を自覚することが出来るようになります。
例、「私は妹を裏切ったアイツのことを大嫌いだと思っていたが、時々苦しいくらい好意的な感情を抱くことがあることに気付いた」。
自分の経験に対し反省を加える前の純粋な体験感情を素直に受けいれられる姿勢です。
自己の解釈構造を強引に経験に刻印したり不都合な経験を無視したりするのではなく、『自分の純粋な体験から自分自身を概念化(自分がどういう人間であるかを理解)していくことができる』ということを発見します。
あらかじめ定められた自己の解釈構造から演繹的に経験を意味づけるのではなく、純粋な体験から帰納的に自己を再発見することが出来るようになります。

2、他者との情緒的な関係を体験する

他者の感情を受け入れ、自己の感情を認め、他者との情緒的な関係を共有できるようになる段階です。
いわば個人の情緒的な殻から飛び出す、社会化の過程です。

1において自己の解釈構造が強引に経験を意味づけていたように、感情もそれに統制されてしまっています。
本当は皆と一緒に笑いたい(楽しい感情を共有したい)人が、「私は冷静で超然とした才人であらねばならない」という解釈構造を持つがために、他者が差し伸べる楽しみの情緒的共有を拒み、それに応えたいという自己の純粋な感情をも無視し押さえつけてしまいます。

他者の感情を受け容れることは、決して自分を混乱させたり傷つけたりする危険なものではなく、むしろ他者と感情的に共にあることが「よい心地(feels good)」であることに気付く必要があります。
「私は、誰かが私のことを大切に思っているということを十分に受け容れることが出来ます。それによって私自身もまた、他人のことを大切に思うことができるようになるということに気付きました」

3、自分自身を好きになる

潜在的に自己に対して持っていた不信と否定的な感情が徐々に薄れ、信頼と肯定の好意的な感情へ移っていきます。
好きになるといっても、自分好きを他者にアピールするような反動的なものや舞い上がるような高揚感ではなく、ある種の落ち着いた自発的なくつろぎの感情です。

「鳶飛魚躍(鳶が飛び、魚が躍る)」という言葉のように、自然(ネイチャー)が自然(ナチュラル)に原初的な生きる喜びを楽しんでいるような状態です。
うわべの自己(自己の解釈構造に支配された自己)によって抑圧されていた、この生物に先天的に備わっている肯定的な感情の発露が、自分を好きになるということです。
それが仮面を脱ぎ捨て、あるがままの自己になるということの意味です。

フロイトが人間の根源に欲望する意志の塊を見出した場所に、ロジャーズは肯定的で生の喜びに溢れる生命の泉のようなものを見出します。

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