フロイトの『精神分析入門』(2)力動論

1のつづき

リビドーと快楽原則

人間の行為の源泉となる本能的な力をフロイトは「リビドー」と名付けます。
それは飢餓と類似したもので、快感を追い求める力です。
例えば性的快感に対しての欲求不満が溜まると、人を強くその充足へ向けて駆り立てます。
そして快感がえられ満足すると行動は止み、また新たな快感充足への欲求が高まり人を行為へと動かします。
この人間の行為のサイクル、生の構造を「快楽原則」と呼びます。

現実原則

しかし、社会の中で生きる私たちは、自由に快感原則に従い生きることは許されません。
今すぐ快感を満たしたいからといって、動物のように手当たり次第に相手を蹂躙すれば、自己の破滅をまねきます。
快感原則は現実社会の要請に従い、それと折り合うように、欲望を延期したり変更すること、いわば経済的な損得計算によって、より快感を安定的に満たせるようにするのです。
こどもが目先のオヤツの快楽を我慢して、より大きな未来の快楽であるオモチャを買うために貯金するように。
この現実との折り合いによって変更された快感原則を「現実原則」と呼びます。

快感原則が無意識のリビドーに従う性本能だとすれば、現実原則は意識である自我に従う自己保存本能です。

リビドーの発達段階

1、口愛期・・・快感の受容の中心は口であり、母の乳房を吸うことから欲求充足を得る赤子の時期です。
2、肛門愛期・・・栄養摂取の口愛期に次いで、排泄作用における快感と欲求充足が中心となる幼児の時期です。
ここでは適切な時と場所で排泄することにより社会的に「いい子」と評価され、逆の場合は叱責されることや、所有蓄積の快楽とその放出の快楽、などを学びます。
3、エディプスコンプレックス期・・・ここまで母との関係性が中心であった世界に父が登場します。
愛の対象である母を独占したい子供にとって父はライバルであり、かつ母との共生を禁止する強力な力をもつ尊敬すべき対象でもあります。
母を性愛的に愛しつつ父を憎み、かつ父を畏敬の形で愛しつつ無力な母を憎むという両価感情の中にあります。
4、潜伏期・・・エディプスコンプレックスの解決と共に、関心は母と父から離れ、家族から社会へと向き、同世代グループとの関係性が中心になります。
5、思春期・・・身体的成長により、リビドーが性器を中心として回転し始めます。
いわゆる自立の時期とも重なり、ここにきてようやく一応の完成をみます。

神経症の主な原因と治療

1、未成熟な発達段階とそこへの退行。
人間は各発達段階において成熟してから次の段階へ移るわけではなく、未発達であっても時間的な制約によって無理やり次の段階へ進むことになります。
その時、ある段階において固着が起こり、後々の段階において欲求を満たすことを阻止されたとき、その段階での解決を目指さずにそこから逃げて、固着地点に戻ります。
いわば自立して故郷を離れた人と違い、未練ある故郷から無理に引き離された人のように、新しい環境で嫌なことがあったらすぐに故郷に帰ってしまう人です。
当然、今現在の地位において正常に満たす方法とはかけ離れた欲求の充足方法になるため、それは神経症的な症状となります。
治療としては、早期回想や転移による再演などによってその固着地点に戻って問題と対決し、未発達に終わった段階を完成させることです。

2、現実原則の失敗。
現実社会の要請と無意識の欲望であるリビドーにはさまれた自我が、それらを折り合わせることに失敗した時、リビドーはうっ血し歪んだ形で解消されることになります。
代表的には自我がリビドーを騙す欺瞞的な解決方法「自我の防衛機制」などがあります。
そのいびつなリビドーの解消方法が神経症の症状であり、それを正常な軌道に乗せることが治療の目的となります。

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